FOR PATIENTS · バリウム検査(胃部X線検査)

バリウム検査ガイド|流れ・時間・費用から、検査後の注意点まで

健康診断や人間ドックで受けることの多いバリウム検査。「飲みにくそう」「ゲップを我慢するのがつらい」「あとで便秘になったら」という不安を、検査の仕組み・当日の流れ・検査後の過ごし方の順にほどいていきます。

SCAN TIME 3〜7分 撮影そのものの時間。着替えや待ち時間を含めると20〜30分ほど
RADIATION 約0.6mSv 胃の集団検診1回の目安(環境省資料)。日本で1年に自然に受ける量(約2.1mSv)の3分の1ほど
AFTER CARE 1.5〜2L 検査当日に飲みたい水分の合計。バリウムを固まらせないための大切なケア
SUMMARY · 先に結論

この記事でわかること

  • 胃をふくらませて、影絵のように写す検査:胃の内側にバリウムを薄く塗り、粘膜の凹凸を写します。
  • 撮影は3〜7分:ゲップを我慢するのは、胃がしぼむと病変が隠れてしまうからです。
  • いちばん大切なのは検査後:下剤をすぐに飲み、当日は水分を多めにとります。
  • 自治体の検診は原則50歳以上・2年に1回:バリウムに限り、当分の間40歳以上・年1回でも差し支えないとされています。

胃カメラやCTなど、ほかの検査とくらべたい方は患者さん向けの検査ガイドに一覧があります。

CONTENTS

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TALK

検査を担当する放射線技師LINAが、不安になりやすいポイントを対話形式でご案内します。

LINA
LINA

こんにちは、放射線技師のLINAです。バリウム検査と聞くと身構えてしまう方が多いのですが、ちょっとしたコツと検査後の過ごし方を知っておくだけで、ずっと楽に受けられます。順番にご案内しますね。

WORDS · 用語

ひとことで言うと:この記事に出てくる言葉

検査の説明で耳にする言葉を、身近なたとえに置きかえました。ここだけ読んでも大筋がつかめます。

01 バリウム(硫酸バリウム)
X線を通さない白い絵の具のようなもの。胃の内側に薄く塗ると、胃の形が浮かび上がります。体には吸収されず、便として出ていきます。
02 発泡剤
胃の中で炭酸ガスを出す粉。胃を風船のようにふくらませて、シワを伸ばします。
03 二重造影法
白いバリウムと黒い空気の2色の影絵で、胃の内側を描く方法です。
04 スクリーニング(検診)
症状のない人の中から、くわしく調べるべき人をふるい分けること。病気を確定する検査ではなく、入り口の検査です。
05 ミリシーベルト(mSv)
被ばくの量をはかるものさし。くわしくはミリシーベルトのガイドで解説しています。
06 腸閉塞(イレウス)
腸の中身が詰まって流れなくなる状態。バリウムを出しきらないと起こりうるため、下剤と水分が大切です。
01 · BASICS

そもそもバリウム検査(胃部X線検査)とは?

バリウム検査(正式には上部消化管造影検査)は、白い造影剤(硫酸バリウム)と、胃をふくらませる発泡剤を飲み、X線(レントゲン)で食道・胃・十二指腸の形や粘膜の変化を撮影する検査です。

胃はやわらかい袋のような臓器なので、そのままレントゲンを撮っても形がはっきり写りません。そこで二重造影法という方法を使います。

1 · ふくらませる 胃を風船のように 発泡剤の炭酸ガスで胃をふくらませ、シワを伸ばします
2 · 塗る 粘膜に薄く付ける 体の向きを変えて、胃の内側にバリウムを行きわたらせます
3 · 写す 白と黒の影絵にする 空気(黒)とバリウム(白)の差で、凹凸・しこり・潰瘍を浮かび上がらせます

がん検診での位置づけ

バリウム検査は、胃がんの検診としてもっとも歴史のある方法で、日本の対策型がん検診に位置づけられています。国立がん研究センターの「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」では、胃X線検査は死亡率を下げる効果を示す相応の証拠があるとして推奨グレードBとされています(胃内視鏡検査も同じくグレードB)。

項目自治体の胃がん検診(国の指針)
対象年齢原則50歳以上バリウムは「当分の間、40歳以上を対象としても差し支えない」とされています
受診間隔原則2年に1回バリウムに限り、当分の間は年1回でも差し支えないとされています
検査の選び方バリウムと胃カメラはどちらか一方を選ぶのが原則。毎年交互に受けることは勧められていません

実際の対象年齢・間隔・自己負担額は、自治体や健康保険組合の運用によって異なります。お住まいの自治体や勤務先の案内を確認してください。

02 · ON THE DAY

バリウム検査当日の流れ

撮影そのものは3〜7分ほど、着替えや準備を含めても20〜30分ほどです。まず全体の流れをつかんでから、ひとつずつ見ていきましょう。

前日 夕食は早めに 多くの施設では21時ごろまでに夕食を終え、その後は絶食です
約10分 受付・問診・着替え 妊娠の可能性・便秘の程度・以前のトラブルを確認します
約1分 発泡剤を飲む ここから撮影が終わるまで、ゲップを我慢します
約1分 バリウムを飲む 合図に合わせて飲み、食道を流れる様子を撮影します
約3〜5分 体の向きを変えて撮影 マイクの指示で回転・あお向け・うつ伏せになります
直後 下剤をその場で飲む 多めの水で飲み、帰宅後も水分をとり続けます
当日〜翌日 白い便が出きれば完了 白い便が2〜3回続き、茶色い便に戻れば出しきったサインです

1. 検査前日・当日の飲食制限

胃の中に食べ物が残っていると、バリウムが粘膜に付かず、食べ物のかすがポリープやがんと見分けにくくなります。時間や内容は施設によって違うので、受診先の案内を優先してください。

  • 前日:21時ごろまでに夕食をすませ、その後は絶食します。水や麦茶をコップ1〜2杯ほどなら、寝る前まで飲めることが多いです(アルコールやジュースは避けます)。
  • 当日の朝:検査が終わるまで絶食です。水分も原則として控えます。血圧や心臓の薬は、早朝に少量の水で飲むよう指示されることがあります。糖尿病の薬は低血糖を防ぐため飲まないのが一般的です。薬の扱いは必ず事前に確認してください。

2. 受付・問診・着替え

問診票を出し、妊娠の可能性、便秘の程度、以前のバリウム検査でのトラブルの有無を確認します。そのあと、金属やプリントのない検査着に着替えます。ネックレス、ワイヤーや金属ホックのある下着、カイロ、湿布などはX線に写り込むので外してください。

3. 発泡剤を飲む(ゲップ我慢のコツ)

検査台に立ったら、まず発泡剤(顆粒の薬)を少量の水で一気に飲み込みます。口に入れるとシュワシュワとふくらむので、迷わずに少量の水でゴクンと流し込むのがコツです。

発泡剤の服用をサポートする技師
発泡剤は、シュワシュワする前に少量の水で一気に流し込みます。

胃の中でガスが出るとすぐにゲップをしたくなりますが、ここが最初のふんばりどころです。ゲップで空気が抜けると胃がしぼみ、きれいな写真が撮れなくなって、発泡剤を飲み直すことになります。

技師が教える、ゲップを我慢する3つのコツ。
  • あごを引いて、少し下を向く:のどを閉じるイメージで、ゲップが上がりにくくなります。
  • つばをゴクンと飲み込む:出そうになったら、空気を胃に押し戻すように飲み込みます。
  • 口を閉じて、鼻でゆっくり呼吸する:口から息を吸うと、のどが刺激されてしまいます。

4. バリウムを飲む(食道の撮影)

次に、コップに入った白いバリウム(150〜200mlほど)を、技師の合図に合わせて数回に分けて飲みます。このとき、のどから食道を流れていく様子をその場で撮影しています。最近のバリウムは粒が細かくなり、バニラやフルーツなどの味もついて、以前より飲みやすくなっています。

バリウムを飲む患者さんとサポートする技師
合図に合わせて飲み込む瞬間に、食道を通るバリウムを撮影します。

5. 体の向きを変えながら撮影

検査台がゆっくり倒れ、あお向けやうつ伏せになります。「右を向いてぐるっと1回転してください」など、技師がマイクで細かく指示を出します。重力を使って、バリウムを胃の壁全体にまんべんなく行きわたらせるためです。検査台には手すりがあり、技師はモニターで安全を見ながら進めるので、あわてずに指示に合わせてください。

操作室からマイクで撮影の指示を出す技師
操作室からマイクで、体の向きを細かくご案内します。
03 · COST

検査にかかる費用の目安

同じバリウム検査でも、どの制度で受けるかによって自己負担は数千円単位で変わります。

受け方自己負担の目安特徴
会社の定期健康診断無料会社・健保の負担健康保険組合の補助の対象。オプションで選べることもあります
自治体の胃がん検診無料〜約2,000円原則50歳以上(バリウムは当分の間40歳以上も可)。マンモグラフィ検診などと一緒に案内されることも
保険診療(症状がある場合)約2,000〜3,000円3割負担胃の痛みや胸やけなどがあり、医師が必要と判断した場合
人間ドックの追加(自費)約3,000〜5,000円検査パッケージの一部として受けます

金額は施設・自治体・健康保険組合によって異なります。受診先の案内を確認してください。

04 · AFTER CARE

検査後の排便ケアがいちばん大切

バリウムは体に吸収されませんが、大腸に長くとどまると水分を吸われて、石こうのように固くなります。

腸の中で固まると、がんこな便秘になるだけでなく、まれに腸閉塞(イレウス)や、腸に穴があく消化管穿孔といった重い合併症につながり、手術が必要になることもあります。検査後のケアまでが検査だと考えてください。

下剤はすぐに飲む

検査が終わったらその場か帰宅後すぐに、渡された下剤(酸化マグネシウムやセンノシドなど)を多めの水で飲みます。追加で飲むタイミングは施設の指示に従ってください。

いつもの1.5〜2倍の水を

当日は合計1.5〜2Lを目安に、こまめに水分をとります。一度にたくさんではなく、1時間にコップ1杯ずつが効果的です。

アルコールとカフェインは控える

お酒やコーヒー・濃いお茶は利尿作用があり、体の水分が減ってバリウムが固まりやすくなります。排便が終わるまでは避けましょう。

食事は検査が終わればとってかまいません。うどんやおかゆなど消化のよいものから始め、野菜や果物で食物繊維をとると、腸が動いて排便をうながします。

検査後のセルフチェック 0 / 5 完了
✓ 渡された下剤を、検査直後に多めの水で飲んだ 追加の服用は施設の指示どおりに
✓ 1時間にコップ1杯を目安に、水分をとっている 当日の合計1.5〜2Lが目安です
✓ お酒・コーヒー・濃いお茶を控えている 水や麦茶がおすすめです
✓ 白い便が出た 2〜3回続くことがあります
✓ 茶色いふつうの便に戻った これで出しきったサインです
おつかれさまでした。バリウムは出しきれています。
こんなときは、すぐに受診してください。下剤を飲んでも24時間以上まったく排便がない、または白い便が出きらないうちに強い腹痛や吐き気が出たときは、自宅でがまんせず、検査を受けた医療機関か消化器内科に連絡してください。
飲み込みに不安がある方へ。ガイドラインは、濃いバリウムが広まってから誤嚥(バリウムが気管に入ること)の報告が増えていることを、検診の不利益としてあげています。むせやすい方、飲み込む力が落ちてきた方、脳の血管の病気をしたことがある方は、検査の前に必ず伝えてください。胃カメラなど別の方法を勧められることがあります。
05 · VS ENDOSCOPY

バリウム検査と胃カメラの使い分け

胃の検査として、バリウムと並んでよく選ばれるのが胃カメラ(内視鏡)です。どちらが合うかは、目的や体の状態で変わります。

項目バリウム検査胃カメラ(内視鏡)
写し方X線で胃の形や影を撮る小さなカメラで胃の中を直接カラーで見る
見つけやすいもの胃全体の形の変化、スキルス胃がんなど早期がん、粘膜の小さな色の変化、ピロリ菌による胃炎
被ばくあり(検診1回で約0.6mSv)なし
その場での精密検査できない(疑わしいときは胃カメラへ)組織をとって病理検査ができる
つらさ体を大きく動かす、ゲップの我慢のどや鼻を通るときの違和感(鎮静剤でやわらげられる)
検査後下剤と多めの水分が必須鎮静剤を使った日は運転しない

どちらを選ぶ?技師からのアドバイス

  • バリウム検査が向いている方:胃の大きな病気をしたことがなく、症状もない方の定期的なふるい分けに。短時間で終わり、費用もおさえられます。胃カメラをのどや鼻に通すのがどうしても怖い方にも選ばれています。
  • 胃カメラが向いている方:胃の痛み・もたれ・胸やけ・黒い便などの症状がある方は、はじめから胃カメラを。ピロリ菌の感染を指摘されたことがある方や、家族に胃がんの方が多い方にも勧められます。

おなかの臓器もあわせて調べたいときは、被ばくのない超音波(エコー)検査や、造影剤を使う造影検査が選ばれることもあります。

06 · FAQ

よくある質問

バリウムが苦手です。全部飲まないとだめ?

胃全体をきれいに写すには、決められた量をしっかり飲んでいただく必要があります。ただ、一気飲みしなくて大丈夫です。合図に合わせて、自分のペースで数回に分けて飲んでください。

便秘がちです。気をつけることは?

ふだんから便秘がひどい方(3日以上出ないなど)は、検査後にバリウムがさらに固まりやすくなります。受診前に必ず医師や技師に相談してください。事前に便をやわらかくする薬を使ったり、胃カメラに変えたりすることがあります。

妊娠中・授乳中でも受けられる?

妊娠中や妊娠の可能性がある方は、おなかの赤ちゃんへの被ばくを避けるため、検診のバリウム検査は受けないのが一般的です(胃カメラなどを検討します)。授乳中の方は受けられることが多いですが、下剤の種類によっては母乳に影響するものもあるため、問診で授乳中であることを必ず伝えてください。くわしくは妊娠中・授乳中の画像検査ガイドをご覧ください。

被ばくは体に影響しない?

胃の集団検診1回の被ばくは約0.6mSvとされ、日本で暮らしていて1年間に自然に受ける放射線(約2.1mSv)の3分の1ほどです。病院で症状を調べるために行うバリウム検査は撮影枚数が多く、数mSvになることもあります。この量で健康に影響が出ることは考えにくく、胃がんを早く見つけられる利益のほうが大きいと考えられています。被ばくの単位の目安もあわせてどうぞ。

SUMMARY

まとめ:胃がんは早く見つけるほど治しやすい

胃がんは早い段階では症状がほとんどありません。定期的な検診で早く見つかれば、内視鏡による治療など、体への負担が少ない方法で治せることが多くなっています。全身の広がりを調べるときにはPET検査が使われることもあります。

  • ゲップの我慢には意味がある:胃をふくらませたまま撮ることで、小さな変化まで写せます。
  • 検査後の下剤と水分までが検査:当日はお酒を控え、水を多めに飲みましょう。
  • 困ったらすぐ相談:24時間以上排便がない、強い腹痛があるときは受診してください。
  • 症状がある方は胃カメラへ:バリウムは症状のない方のふるい分けに向いた検査です。
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REFERENCES

参考文献・公的資料

  1. [1]厚生労働省「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」(胃がん検診の対象年齢・受診間隔・検査方法)
  2. [2]同 指針全文(令和7年12月24日一部改正)
  3. [3]国立がん研究センター「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」
  4. [4]国立がん研究センター がん情報サービス「胃がん検診」
  5. [5]国立がん研究センター がん情報サービス「がん検診について」(検診の利益と不利益)
  6. [6]環境省「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料」第1章 身の回りの放射線(診断で受ける放射線量:集団検診 胃部透視0.6mSv/日本の自然放射線 年2.1mSv)
  7. [7]医薬品医療機器総合機構(PMDA)医療用医薬品 情報検索(硫酸バリウム製剤の添付文書)

確認日 2026年9月27日。費用・飲食制限・服薬の扱いは施設によって異なります。受診先の案内と指示を優先してください。

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