この記事でわかること
- 超音波検査の基本的な仕組みと特徴
- 検査の流れと所要時間
- 費用の目安(保険適用)
- CTやMRIとの違いと使い分け
- よくある疑問への回答(妊娠中、絶食の有無など)
放射線技師歴10年以上の筆者が、患者さんからよく聞かれる疑問に答えます。
👉 より詳しい技術解説は後編(医療従事者向け)へ
Contents
【結論】超音波検査の基本情報まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 検査時間 | 15〜30分(部位による) |
| 痛み | なし |
| 費用(3割負担) | 腹部:1,500〜3,000円 心臓:1,800〜3,500円 頸動脈:1,500〜2,500円 |
| 服装 | 検査部位を出しやすい服装 |
| 食事制限 | 腹部:6時間以上絶食 その他:基本的になし |
| 被ばく | なし(放射線を使わない) |
| 繰り返し検査 | 何度でも可能 |
超音波検査とは

超音波検査(エコー検査)は、人間の耳には聞こえない高い周波数の音波を使って体の中を見る検査です。
健康診断や妊婦健診で「お腹にゼリーを塗って機械を当てる検査」と言えば、ピンとくる方も多いでしょう。
最大の特徴
✅ 放射線を使わない → 被ばくゼロ
✅ リアルタイムで観察 → 臓器の動きが見える
✅ 痛みがない → 体に負担をかけない
✅ 繰り返し検査可能 → 安全性が高い
超音波検査は安全性が高く、妊婦健診では平均8〜10回も実施されます。50年以上の使用実績で母体や胎児への悪影響は報告されていません。
仕組みの簡単な説明
超音波検査は、プローブ(探触子)という機器から音波を体内に送り込み、臓器や組織から反射して戻ってくる音波(エコー)を受信して画像化します。
イメージとしては、イルカやコウモリが使う反響定位(エコーロケーション)と同じ原理です。
主な検査部位
超音波検査で観察できる主な部位
- 腹部:肝臓、胆のう、膵臓、腎臓、脾臓
- 心臓:心臓の大きさ、動き、弁の機能
- 血管:頸動脈、下肢血管の動脈硬化や血栓
- 甲状腺:腫瘍の有無、大きさ
- 乳腺:乳がん検診、しこりの評価
- 産科:胎児の発育状態、羊水量
観察が難しい部位
- 肺(空気が障壁となる)
- 骨(音波を通さない)
- 成人の頭部(頭蓋骨が障壁)
検査の流れ
1. 受付・準備(5〜10分)
- 予約時間の10分前に受付
- 問診票の記入(初診の場合)
- 検査着への着替え(腹部・心臓検査の場合)
- 貴重品はロッカーへ
持ち物:
- 保険証
- 診察券
- 予約票(ある場合)
2. 検査室への入室(5分)
- 検査台に横になる
- 検査部位を露出
- リラックスして待つ
技師から検査の説明を受けます。不安なことがあれば遠慮なく質問してください。
3. 検査開始(15〜30分)
ステップ1:ゼリーを塗る
体とプローブの間の空気を除去するため、検査部位にゼリー(超音波ゼリー)を塗ります。
- 透明で無害なゼリーです
- 少しひんやりすることがあります
ステップ2:プローブを当てる
技師がプローブを検査部位に当てて観察します。
- 軽く押されることがあります
- 痛みはほとんどありません
- 呼吸の指示があることがあります(「息を吸って」「止めて」など)
ステップ3:体位変換
観察する角度を変えるため、体位を変えることがあります。
- 仰向け → 左側臥位(左を下にして横向き)
- 仰向け → 座位(座った姿勢)
技師の指示に従って、ゆっくり動いてください。
ステップ4:画像の記録
技師が必要な画像を記録します。
- 画面を見ながら何枚も写真を撮ります
- 測定を行うこともあります
- 静かに待っていてください
4. 検査終了・着替え(5分)
- ゼリーを拭き取る(ティッシュやタオルで)
- 着替えて終了
- 会計へ
5. 結果説明
結果は後日、診察時に医師から説明されることが一般的です。
- 当日に説明される場合もあります(緊急性がある場合)
- 画像は技師が撮影し、医師が診断します
- 詳しい結果は1〜2週間後が目安
所要時間
検査部位別の時間
| 検査部位 | 検査時間 | 全体の所要時間 | 特記事項 |
|---|---|---|---|
| 腹部 | 15〜20分 | 約30〜40分 | 絶食が必要 |
| 心臓 | 20〜30分 | 約40〜50分 | 上半身を脱ぐ |
| 頸動脈 | 15〜20分 | 約25〜35分 | 首を出す |
| 乳腺 | 10〜20分(片側) | 約30〜40分 | 女性技師が担当 |
| 甲状腺 | 10〜20分 | 約25〜30分 | 首を出す |
| 下肢血管 | 20〜30分 | 約35〜45分 | ズボンを脱ぐ |
時間が延びる要因:
- 病変が見つかった場合
- 複数部位を同時に検査する場合
- 患者さんの体格や体位変換が難しい場合
- 技師のスキルレベル
時短のコツ:
- 予約時間の10分前には受付を済ませる
- 脱ぎやすい服装で来る
- 事前に質問事項をまとめておく
費用
保険適用(3割負担)の場合
【図1】超音波検査の費用比較表
2024年度 診療報酬点数に基づく費用比較
💰 超音波検査の種類別費用
| 検査の種類 | 診療報酬点数 | 3割負担 | 1割負担 | 所要時間 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 腹部超音波検査 | 530点 | 約1,590円 | 約530円 | 15~20分 | 絶食が必要 |
| 心臓超音波検査(経胸壁) | 880点 | 約2,640円 | 約880円 | 15~30分 | – |
| 心臓超音波検査(経食道) | 1,500点 | 約4,500円 | 約1,500円 | 30~40分 | 鎮静剤使用 |
| 頸動脈超音波検査 | 350点 | 約1,050円 | 約350円 | 15~20分 | 絶食不要 |
| 乳腺超音波検査 | 350点 | 約1,050円 | 約350円 | 10~20分 | – |
| 甲状腺超音波検査 | 350点 | 約1,050円 | 約350円 | 15~20分 | – |
| 下肢血管超音波検査 | 450点 | 約1,350円 | 約450円 | 20~30分 | – |
※ 初診料(288点)や診察料が別途かかります
※ 保険適用の場合の費用です
📊 他の画像検査との費用比較(3割負担の場合)
超音波検査(腹部)
被曝: なし
特徴: リアルタイム観察
胸部X線検査
被曝: あり
特徴: 簡便・骨観察に適
腹部CT検査
被曝: あり
特徴: 詳細な断層画像
腹部MRI検査
被曝: なし
特徴: 軟部組織コントラスト良好
※ 造影剤使用時は別途費用が加算されます
💡 費用の内訳と計算方法
基本的な費用構成
| 区分 | 点数 | 3割負担 |
|---|---|---|
| 初診料 | 288点 | 約860円 |
| 再診料 | 73点 | 約220円 |
🧮 実際の負担額例
例1:腹部超音波検査(初診)
腹部超音波検査:530点
────────────────
合計:818点 × 10円 = 8,180円
3割負担:約2,450円
例2:心エコー検査(再診)
心臓超音波検査(経胸壁):880点
────────────────
合計:953点 × 10円 = 9,530円
3割負担:約2,860円
✅ 超音波検査の費用メリット
- 比較的低価格: CT・MRIの1/3~1/5程度
- 繰り返し可能: 経過観察で複数回実施しても負担が少ない
- 被曝ゼロ: 追加の健康リスクコストなし
- 待ち時間短縮: 予約が取りやすく、検査時間も短い
- 保険適用: 医学的必要性があれば保険が使える
- 医療費控除対象: 確定申告で還付を受けられる
📝 保険適用と自費診療
✓ 保険適用となる場合
- 医師が医学的に必要と判断した場合
- 症状や既往歴から検査の必要性がある場合
- 治療効果の判定や経過観察のための検査
✗ 自費診療となる場合
- 健康診断・人間ドックでの検査
- 症状がない場合の希望による検査
- 美容目的の検査
💳 健康保険の種類による自己負担割合
| 保険の種類 | 負担割合 | 腹部超音波(530点)の負担額 |
|---|---|---|
| 現役世代(社保・国保) | 3割 | 約1,590円 |
| 小児(6歳まで) | 2割 | 約1,060円 |
| 後期高齢者(一般) | 1割 | 約530円 |
| 後期高齢者(現役並み) | 3割 | 約1,590円 |
人間ドック・健診の場合(自費)
| 検査項目 | 費用目安 |
|---|---|
| 腹部超音波検査 | 5,000〜8,000円 |
| 心臓超音波検査 | 10,000〜15,000円 |
| 頸動脈超音波検査 | 5,000〜8,000円 |
| 乳腺超音波検査 | 4,000〜6,000円 |
人間ドックのセット料金(例)
- 基本コース + 腹部超音波:30,000〜50,000円
- 充実コース(心臓・頸動脈含む):60,000〜100,000円
他の検査との違い
超音波検査 vs CT検査 vs MRI検査
| 項目 | 超音波検査 | CT検査 | MRI検査 |
|---|---|---|---|
| 被ばく | なし | あり(約6.9mSv) | なし |
| 撮影時間 | 15〜30分 | 5〜10分 | 20〜60分 |
| リアルタイム性 | ○ | × | × |
| 費用(3割負担) | 1,500〜3,000円 | 6,000〜12,000円 | 6,000〜15,000円 |
| 音 | 静か | やや大きい | 非常に大きい |
| 得意分野 | 腹部臓器、心臓、血管 | 骨、肺、全身 | 脳、関節、軟部組織 |
| 苦手分野 | 骨、肺、ガス | 軟部組織の詳細 | 骨、肺 |
| 妊婦 | ○ | △(緊急時のみ) | △(時期による) |
| 繰り返し検査 | ○ | △(被ばく考慮) | ○ |
検査の得意・不得意
超音波検査が向いている:
- 腹部臓器のスクリーニング(健康診断)
- 心臓の動きを見る
- 血管の動脈硬化を調べる
- 妊婦さんや小児の検査
- 繰り返し検査が必要な場合(治療効果の確認)
CT検査が向いている:
- 全身の精密検査
- 肺の病変(肺がん、肺炎など)
- 骨折の診断
- 緊急時の迅速な診断(救急外来)
MRI検査が向いている:
- 脳の精密検査(脳腫瘍、脳梗塞など)
- 関節の靭帯や軟骨の評価
- 脊髄の病変
- 軟部組織の腫瘍
迷ったら → 医師が最適な検査を選んでくれます。患者さんが選ぶ必要はありません
よくある質問
A. できるだけ動かないでください。ただし、MRIほど厳密ではありません。
- 呼吸は普通に続けてOK
- 技師の指示に従って深呼吸や息止めをお願いすることがあります
- 痛みや不快感があれば遠慮なく伝えてください
- 咳やくしゃみが出そうな時は声をかけてください
A. プローブと皮膚の間の空気を除去するためです。
- 空気があると超音波が通りません
- ゼリーで密着させることで鮮明な画像が得られます
- 検査後はきれいに拭き取ります
- 服につくとシミになることがあるので注意
ゼリーの特徴:
- 無害で体に優しい
- 水溶性なので洗えば落ちる
- 少しひんやりする
- アレルギーはほとんど報告されていない
A. はい、安全に受けられます。
- 放射線被ばくがゼロのため、妊娠全期間を通じて安全
- 妊婦健診では平均8〜10回実施されます
- 胎児への悪影響は50年以上の使用実績で報告なし
- 3D/4D超音波で赤ちゃんの顔も見られます
妊婦健診のスケジュール例:
- 妊娠初期(4〜12週):2〜3回
- 妊娠中期(13〜27週):3〜4回
- 妊娠後期(28週以降):3〜4回
A. 検査部位によって異なります。
| 検査部位 | 食事制限 | 理由 |
|---|---|---|
| 腹部 | 6時間以上絶食 | 胆のうが収縮する/ガスが溜まる |
| 心臓 | なし | 影響なし |
| 頸動脈 | なし | 影響なし |
| 甲状腺 | なし | 影響なし |
| 乳腺 | なし | 影響なし |
| 骨盤(膀胱) | 尿を溜めておく | 膀胱を膨らませる必要がある |
腹部検査の準備:
- 前日の夜10時以降は絶食
- 当日の朝食も抜く
- 水は少量OK(200ml程度)
- 検査1〜2時間前からは水も控える
- 薬は医師の指示に従う
なぜ絶食が必要?
- 食事すると胆のうが収縮して見えにくい
- 消化管にガスが溜まると膵臓が見えにくい
- 腸の動きが活発になると観察の妨げになる
A. 検査部位を出しやすい服装がおすすめです。
腹部検査:
- ✅ 上下分かれた服
- ✅ ゆったりしたズボン・スカート
- ✅ 前開きのシャツ
- ❌ ワンピース
- ❌ タイトなジーンズ
心臓検査:
- ✅ 前開きの服
- ✅ ブラトップやスポーツブラ
- ❌ ワイヤー入りブラジャー(外す場合があります)
- ❌ タートルネック
頸動脈・甲状腺:
- ✅ 首が出しやすい服
- ✅ Vネックやクルーネック
- ❌ タートルネック
- ❌ ハイネック
乳腺検査:
- ✅ 上下分かれた服
- ✅ 前開きのシャツ
- ❌ ワンピース
その他の注意点:
- アクセサリーは外しておく
- 金属類は基本的にOK(超音波は金属の影響を受けない)
- 貴重品は最小限に
A. 検査当日〜後日の診察時に説明されます。
当日説明の場合:
- 緊急性の高い所見がある場合(胆石、腹水など)
- 検査当日に診察予約がある場合
- クリニックで検査と診察が同日の場合
後日説明の場合(1〜2週間後):
- 詳細な画像診断が必要な場合
- 複数の医師の意見が必要な場合
- 外来の予約日に合わせる場合
- 大学病院など大規模施設での検査
結果の見方:
- 画像は技師が撮影
- 診断は医師が実施
- 報告書が作成され、主治医に渡される
- 主治医から患者さんに説明
A. いいえ、超音波検査にも限界があります。
超音波検査が得意なこと:
- 臓器の大きさや形の異常
- 腫瘍やのう胞の発見
- 胆石や腎結石の発見
- 脂肪肝の評価
- 血流の評価
超音波検査が苦手なこと:
- 肺の病変(空気が邪魔をする)
- 骨の内部(超音波が通らない)
- 消化管(ガスが邪魔をする)
- 非常に小さな病変(数mm以下)
- 肥満の方の深部臓器
見落としを防ぐために:
- 定期的な検査を受ける
- 他の検査(CT、MRIなど)と組み合わせる
- 症状がある場合は医師に必ず伝える
A. 基本的に痛みはありません。
ただし、以下の場合は軽い不快感があることがあります:
- プローブで押される時(軽い圧迫感)
- 炎症がある部位を観察する時(圧痛)
- 尿を溜めている状態で膀胱を観察する時
- ゼリーが冷たく感じる時
痛みを感じたら:
- 遠慮なく技師に伝えてください
- 検査を中断することも可能です
- 体位を変えることで楽になることがあります
A. 基本的には使いません。
超音波検査では造影剤を使わないのが一般的です。ただし、以下の場合は使用することがあります:
造影超音波検査(限定的):
- 肝臓の腫瘍の精密検査
- 血流の詳細な評価
- 専門施設でのみ実施
造影剤の種類:
- CTやMRIの造影剤とは異なる
- ソナゾイドなどの微小気泡製剤
- 副作用は非常に少ない
一般的な超音波検査:
- 造影剤なしで十分な情報が得られる
- カラードプラ法で血流は観察できる
- 造影剤のアレルギーの心配不要
A. いいえ、超音波検査にも得意・不得意があります。
超音波検査が得意なもの:
- 腹部臓器(肝臓、胆のう、腎臓など)
- 心臓の動きや弁の機能
- 血管の動脈硬化
- 甲状腺や乳腺の腫瘍
- 妊娠中の胎児の観察
超音波検査が苦手なもの:
- 肺の病変:空気が多く、超音波が通らない → 胸部X線やCTが適切
- 骨の内部:超音波が反射してしまう → X線やCT、MRIが適切
- 消化管:ガスが邪魔をする → CTやMRI、内視鏡が適切
- 非常に小さな病変:数mm以下は見えにくい → CTやMRIが適切
最適な検査を選ぶために:
- 医師が症状や目的に応じて検査を選びます
- 超音波検査で見つかりにくいものはCTやMRIを追加
- 複数の検査を組み合わせることもあります
まとめ
超音波検査の重要ポイント
✅ 安全性が高い → 放射線被ばくゼロ、妊婦さんも安心
✅ 痛みがない → 体に負担をかけない
✅ リアルタイム → 臓器の動きが見える
✅ 費用が安い → 1,500〜3,000円程度(3割負担)
✅ 繰り返し可能 → 治療効果の確認に最適
検査を受ける前の準備
- 予約時間の10分前に受付を済ませる
- 腹部検査は6時間以上絶食(その他は基本的に制限なし)
- 脱ぎやすい服装で来院
- 質問事項をまとめておく
検査後の注意点
- 結果は後日、診察時に説明されることが多い
- 異常が見つかった場合は追加検査が必要なことも
- 定期的な検査で早期発見・早期治療につながる
次のステップ
より詳しく知りたい方へ
👉 **後編(医療従事者向け)**では、以下の内容を詳しく解説しています:
- 超音波の物理学的原理(周波数、波長、減衰)
- プローブの種類と使い分け(コンベックス、リニア、セクタ)
- 画像の見方とアーチファクト
- カラードプラ法の原理
- 最新技術(3D/4D、エラストグラフィ)
- 各部位別の走査法と観察ポイント
- 医療従事者向けの参考文献
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参考文献(一般向け)
書籍
ウェブサイト
- 日本超音波医学会 https://www.jsum.or.jp/ 一般向けの超音波検査の解説ページあり
- 日本人間ドック学会 https://www.ningen-dock.jp/ 健康診断での超音波検査について
監修:放射線技師歴10年以上の現役技師 最終更新日:2025年11月
この記事が超音波検査を受ける方の不安解消に少しでもお役に立てれば幸いです。検査について不明な点があれば、遠慮なく医療機関のスタッフにお尋ねください。


