【診療画像検査学】CT・MRI・超音波の「撮像原理」を制覇せよ!アーチファクトから安全性まで

「ボタンを押せば絵が出る」時代は終わりました。 プロの技師は、「なぜその絵が出るのか」を知っています。
CTのラドン変換、MRIのk空間、超音波の圧電効果……。 一見難しそうな理論も、すべては「見えない体内を可視化する」という一つの目的のためにあります。 この科目は配点がバカ高いだけじゃなく、就職してからも一生使う知識の宝庫です。
Linaと一緒に、ブラックボックスの中身を覗きに行きましょう!
ゆんさん!診療画像検査学って、CT・MRI・超音波…全部まとめて出題されるんですよね?
それぞれ原理が全然違うのに、どうやって整理すればいいんだろう…
いい質問だね、リナ。確かに原理は違うけど、「見えないものを可視化する」という目的は同じなんだ。
CTは「X線の影」、MRIは「磁気の共鳴」、超音波は「音の反射」。それぞれの特性を理解すれば、自然と使い分けもわかってくるよ。
🌀 1. CT (Computed Tomography):X線で輪切りにする
CTは「影絵(レントゲン)」をぐるっと一周撮影して、計算で「立体」に戻す技術です。
ピッチファクタ (Pitch Factor)
ヘリカルスキャンで「どれくらい速く寝台を動かすか」の指標。
- 定義: 1回転あたりの寝台移動距離 / ビーム幅。
- 影響: ピッチを上げると、撮影は速くなるけど、画像は少しボケ(SSPが悪化)、ノイズも増える。このトレードオフを覚えるのが国試の基本!
CT値 (HU: Hounsfield Unit) の計算パターン
空気は −1000、水は 0。これが絶対的なルール。 $$HU = 1000 \times \frac{\mu_{object} – \mu_{water}}{\mu_{water}}$$
- 計算のコツ: μ(線減弱係数)が与えられたら、この式に放り込むだけ。脂肪はマイナス、骨はプラス(500以上)になることを感覚的に持っておこう!
撮影方式の進化
- ノンヘリカル(アキシャル): 1回転して止まり、寝台を動かす。精密な頭部撮影などに使用。
- ヘリカル(らせん): X線を出し続けながら寝台も動く。「補間(Interpolation)」計算が必要。肺や造影検査の基本。
- マルチスライスCT (MDCT): 検出器が複数列ある。コーンビーム補正が必要になる。
ピッチファクタって、「速く撮る」と「画質が落ちる」のトレードオフなんですね!
でも最近のCTって、被ばくも減ってるって聞きました。どうやってるんですか?
素晴らしい気づきだね!それが次に説明する逐次近似法(IR)なんだ。
従来のFBP法と違って、計算を何度も繰り返してノイズだけを削ぎ落とす。だから被ばくを半分にしても、同じ画質が得られるんだよ。
画像再構成:逐次近似法 (IR)
- 逐次近似法 (IR): 最新の主流。計算を何度も繰り返して、ノイズ成分だけを引いていく。
- メリット: 被ばくを半分以下にしても、従来(FBP法)と同じ画質が得られる! 「患者さんに優しいCT」の心臓部だよ。
🧲 2. MRI (Magnetic Resonance Imaging):原子の声を聴く
MRIの本質は、「磁力を使って、体内の水素原子(プロトン)を揺らす」ことです。
T1緩和とT2緩和(イメージで掴め!)
- T1(縦緩和): 倒した磁石が「起き上がる」までの時間。「脂」が早い(真っ白に見える)。
- T2(横緩和): 揃えた磁石が「バラける」までの時間。「水」が長い(真っ白に見える)。
- 強調画像の作り方:
- T1強調: 短い TR(繰り返し)で、起き上がりの差を際立たせる。
- T2強調: 長い TE(エコー待ち)で、バラけ方の差を最大にする。
SE法 vs GRE法
- スピンエコー (SE): 180°パルスを打つことで、磁場の不均一によるボケをリセットする。画質は綺麗だけど時間がかかる。
- グラジェントエコー (GRE): 180°パルスなし! 傾斜磁場だけでエコーを作る。爆速だけど磁場の乱れに弱い(不均一に敏感)。
T1とT2の違いが、やっと腑に落ちました!
「脂肪はT1で白」「水はT2で白」って覚えればいいんですね。でも、SE法とGRE法の使い分けって、現場ではどう判断するんですか?
いい質問だね。時間と画質のバランスで決めるんだ。
SE法は画質重視で脳の精密検査に使う。GRE法は速度重視で、心臓のように動くものや、造影剤の流れを追うときに使う。目的に応じて使い分けるのがプロの技だよ。
🔊 3. 超音波 (US):アーチファクトの迷宮
エコーが「嘘」を映すことがあります。それを見破るのがプロの技師。
- 音響陰影 (Acoustic Shadow): 結石や骨など、超音波を跳ね返す固いものの後ろが真っ暗になる。
- 後方エコー増強: 逆に、嚢胞(水溜まり)などの通しやすいものの後ろが明るくなる。
- 鏡面現象 (Mirror Image): 横隔膜などの強い反射面で、像が鏡のように反対側にも写っちゃう。
- サイドローブ: メインのビーム以外の端っこの方から出た音が拾われて、別の場所に像が出る。
超音波のアーチファクト、こんなにたくさんあるんですね!
でも、これって「邪魔なもの」じゃなくて、逆に診断のヒントになることもあるんですか?
その通り!例えば音響陰影があれば「ここに固いもの(結石や骨)がある」ってわかるし、後方エコー増強があれば「ここは水溜まり(嚢胞)だ」って判断できる。
アーチファクトは「嘘の像」だけど、その嘘の出方を知っていれば、逆に真実を見抜く手がかりになるんだよ。
⚠️ 4. 安全性と造影剤のレスキュー
MRIの安全性(SAR)
- 吸引事故: 金属が飛んでいく! 磁石は24時間切れません。
- SAR (比吸収率): 検査中に体温が上がっちゃうこと。W/kg で制限が決まっているよ。
- クエンチ: 冷却ヘリウムが漏れ出す緊急事態。窒息に注意して避難!
MRIの安全性って、「被ばくゼロ」だから安全ってイメージでしたけど…
磁石の吸引事故やSARなど、意外とリスクが多いんですね!
その通り。「被ばくゼロ」と「安全」は別の話なんだ。
磁石は24時間365日、一度も止まらない。だから金属物の管理や、ペースメーカー患者さんのスクリーニングは、CT以上に徹底しないといけないんだよ。
造影剤:腎臓とアレルギーの盾
- eGFR: 腎機能が悪い人(30未満など)には、ガドリニウム造影剤は「NSF(腎性全身性線維症)」のリスクがあるから投与制限されることが多い。
- 副作用: 痒み、蕁麻疹、最悪はアナフィラキシー。アドレナリン(エピペン)の準備は常に怠らないこと!
MRIは「放射線被ばくゼロ」だけど、事故の危険はCTより高いかもしれない。
物理が得意な技師こそ、安全管理のリーダーになれるんだよ。知識は自分の身も、患者さんの命も守る盾になるからね!

ウィンドウ設定(Window Level / Window Width)
CT値(水=0、空気=-1000)をどう表示するか。
- 肺野条件: WWを広く(1500くらい)、WLを低く(-600くらい)。空気と血管のコントラストを見る。
- 縦隔条件: WWを狭く(400くらい)、WLを軟部組織(40くらい)に。
🧲 2. MRI (Magnetic Resonance Imaging):磁石とラジオ波の会話
MRIは放射線を使いません。使うのは「強力な磁石(静磁場)」と「ラジオ波(RFパルス)」です。主役は水素原子核(プロトン)!
💡 CROSS-OVER LINK MRIの「共鳴現象」は、放射線物理学の「核磁気共鳴」と全く同じ原理です。ラーモア周波数 ω = γB0 の式は物理でも出るので、ここでセットで覚えちゃいましょう!
T1とT2:組織の性格を知る
- T1緩和(縦緩和): 倒された磁化が「起き上がる」時間。
- 脂肪は早い(白く写る)。水は遅い(黒く写る)。解剖構造が見やすい!
- T2緩和(横緩和): 揃っていた磁化が「バラける」時間。
- 水は遅い(白く写る)。病変(むくみ・炎症)を見つけるのに最強!
👁️ EXAMINER’S EYES:出題者の狙い
T1/T2の緩和時間の順序は鉄板のひっかけ問題。「水はT1が長くT2も長い」「脂肪はT1が短く(回復が速く)、T2も短い(減衰が速い)」。 出題者は「水のT1は短く…」としれっと嘘を混ぜてきます。グラフの形(回復曲線・減衰曲線)を脳内で再生できるようにしておくのが最強の防御策です。
パルスシーケンスの基本
- スピンエコー (SE): 90°パルスの後に180°パルスを打つ。磁場の不均一をリセットできる基本形。
- グラジエントエコー (GRE): 180°パルスを使わず、傾斜磁場でエコーを作る。速いけどアーチファクトに弱い。
- EPI (Echo Planar Imaging): 爆速。拡散強調像(DWI)に使われる。急性期脳梗塞の診断に必須!
k空間(k-space)って何?
画像データの「周波数」の倉庫です。
- 中心部: 画像の「コントラスト(白黒)」を決める。
- 周辺部: 画像の「高精細さ(エッジ)」を決める。

k空間なんて見たことない? でもね、ここをどう埋めるかで撮影時間が決まるの。
「パラレルイメージング」は、このk空間をスカスカに埋めて計算で復元する技術。だから速いのよ! 「k空間=データの地図」って覚えておいて!
⚠️ 3. MRIの安全性とアーチファクト
MRIは「強力な磁石」の部屋に入るということ。金属持ち込みは命に関わります!
安全性の指標
- SAR(比吸収率):
RFパルスによる「発熱」の指標。単位は [W/kg]。
- 全身用コイルで通常操作モード:2.0 W/kg 以下(体温上昇 0.5℃未満)。
- dB/dt(磁場変動率): 傾斜磁場の切り替えによる「神経刺激」。ピリピリするやつ。
クエンチ (Quench)
超伝導電磁石が突然抵抗を持ち、液体ヘリウムが一気に気化する事故。 酸素濃度が低下して窒息のリスクがあります。緊急時以外は絶対に停止ボタンを押しちゃダメ!
🦇 4. 超音波 (Ultrasound):音の反射を見る
「プローブ(探触子)」から音を出して、跳ね返ってくる時間を見ています。
音響インピーダンス Z = ρc
音の通りにくさ。異なるインピーダンスの境界(例:肝臓と血管の壁)で反射が起きます。
- 空気や骨とはインピーダンス差が大きすぎて、全反射してしまうため、その奥は見えません(音響陰影)。だから肺や脳(大人の)は苦手なの。
ドプラ効果 (Doppler Effect)
救急車のアレです。
- プローブに近づく血流:周波数が高くなる(赤色で表示)。
- プローブから遠ざかる血流:周波数が低くなる(青色で表示)。
- 「BART (Blue Away, Red Towards)」 って覚えると一発だよ!
💉 5. 造影検査:白黒の世界に色をつける
ヨード造影剤(CT用)
- 副作用:
- 軽度:吐き気、じんましん。
- 重度:アナフィラキシーショック(血圧低下、呼吸困難)。発生率は低いけど、起きたら即死レベル。だから同意書が必要なの。
- 禁忌: ヨード過敏症、重篤な甲状腺疾患、気管支喘息(原則禁忌)。
- eGFR(腎機能): 造影剤は腎臓に負担をかけるから、血清クレアチニン値でeGFRをチェックするのが義務! eGFR 30以下は原則アウトだよ。
ガドリニウム造影剤(MRI用)
- CT用より副作用は少ないけど、腎性全身性線維症 (NSF) という怖い病気のリスクがあるから、やっぱり腎機能チェックは必須。
造影剤って、「便利だけどリスクもある」っていうバランスが難しいですね…
eGFRのチェックって、具体的にはどのタイミングでやるんですか?
いい質問だね。検査前に必ず確認するんだ。
特に造影CTやMRIでは、予約時に血液検査の結果(クレアチニン値)を確認して、eGFRが30未満なら医師に報告。場合によっては検査自体を中止することもあるんだよ。
🎓 結論:技術は「患者さんのため」にある
🎯 FOCUS POINT
CTの被ばく低減(逐次近似)、MRIの高速化(パラレルイメージング)、超音波の非侵襲性。すべての技術進化は、「より速く、より高画質で、より患者さんに優しく」という方向に向かっています。原理を理解して、最適なプロトコルを選択できる技師になってくださいね!
ゆんさん、この科目を勉強して、「原理を知ること」の大切さがやっとわかりました!
ボタンを押すだけじゃなくて、「なぜその画像が出るのか」を考えられる技師になりたいです!
その意気、素晴らしいよ、リナ!
「知識は患者さんの命を守る盾」。そして、「自分のキャリアを切り開く剣」にもなる。診療画像検査学をマスターしたら、次は機器学でハードウェアの中身を見ていこう!
よし! これでモダリティの主要3科目はOK! あとは「機器学」でハードウェアの中身を見れば完全無欠だね。次へ行こう!
📚 参考文献 (References)
[1] 日本放射線技術学会 監修『診療画像検査技術学』. [2] 医療情報科学研究所『病気がみえる vol.7 脳・神経』, メディックメディア. [3] ICRP Publication 87, 102, 105 (CT, MRI防護関連).















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