心電図検定3級 試験1週間前のプレチェック|10問で総仕上げ
心電図検定3級を受験予定の皆さん、試験直前の最終確認はできていますか?この記事では、試験によく出る重要ポイントを10問のプレチェック形式でまとめました。3級以外の受験のみなさんもぜひ問題に挑戦してみて下さい。
10年以上の臨床経験を持つ現役放射線技師の視点から、実践的な解説をお届けします。
Contents
心電図検定3級とは
心電図検定は日本不整脈心電学会が主催する全国統一試験で、心電図判読能力を客観的に評価する検定です。3級は「心電図の基礎〜中等度の判読力」を問う内容で、医療従事者だけでなく医療系学生や一般の方も受験可能です。
2024年(第10回)の実績では、受検者6,398人中4,778人が合格し、合格率は74.7%でした。しっかり対策すれば十分に合格が狙えます。
受検者 6,398人 → 合格者 4,778人
合格率 74.7%
なぜ放射線技師が心電図を学ぶのか
厚生労働省の令和5年患者調査によると、心疾患の総患者数は約358.1万人に上り、令和4年の死亡統計では心疾患による年間死亡者数は約23.3万人(死因第2位)です。私たち放射線技師は、CT検査やカテーテル検査で心疾患患者と接する機会が非常に多く、心電図の基礎知識は日常業務に直結します。
「令和4年(2022)人口動態統計(確定数)の概況」
「令和4年度(2022)国民医療費の概況」
10問プレチェック
以下の10問で総仕上げを行いましょう。各問題の下に詳細な解説を記載しています。
選択肢を確認してから「解答を見る」をクリックしてください。
- A. P波が陰性でも洞調律と呼べる
- B. P波が認められ、各P波の後にQRS波が続く
- C. RR間隔が不規則でもよい
- D. PR間隔は0.30秒以上が正常
B. P波が認められ、各P波の後にQRS波が続く
解説
正常洞調律(Normal Sinus Rhythm:NSR)の条件は以下の通りです。
- P波が存在し、Ⅱ誘導で陽性(上向き)
- 各P波の後にQRS波が続く(1:1伝導)
- PR間隔が0.12〜0.20秒の範囲内
- 心拍数が60〜100回/分(洞性徐脈・頻脈を除く)
- RR間隔がほぼ一定(変動10%以内)
ワンポイント:CT検査前のモニター確認で「P波→QRS→T波」の順序を見る習慣をつけておくと、異常に気づきやすくなります。
- A. P波が増幅され、QRS波が減少する
- B. P波が消失し、f波(細動波)が不規則に出現する
- C. P波が陰性になる
- D. QRS波が消失する
B. P波が消失し、f波(細動波)が不規則に出現する
解説
心房細動(Atrial Fibrillation:AF)は最も頻度の高い持続性不整脈です。日本では推定約100万人以上の患者がいるとされています。
心房細動の特徴
- P波が消失し、代わりに不規則なf波(細動波)が出現
- RR間隔が絶対的に不規則(irregularly irregular)
- 心房は300〜600回/分で無秩序に興奮
- 心室は不規則に100〜160回/分程度で興奮(未治療時)
要注意ポイント:鋸歯状の「F波」が規則的に見られるのは心房粗動(AFL)です。「f波」と「F波」の違いは頻出です。
- A. 心房粗動ではf波が不規則に出現する
- B. 心房粗動では鋸歯状のF波が規則的に出現する
- C. 心房細動ではF波が規則的に出現する
- D. 両者は同じ疾患である
B. 心房粗動では鋸歯状のF波が規則的に出現する
解説
心房粗動と心房細動は混同しやすいですが、明確な違いがあります。
心房粗動(AFL)vs 心房細動(AF)
- 心房波:鋸歯状のF波(250-350/分) vs 不規則なf波(300-600/分)
- 基線:規則的なノコギリ歯状 vs 細かく不規則に揺れる
- RR間隔:比較的規則的(4:1、2:1伝導など) vs 絶対的に不規則
- Ⅱ、Ⅲ、aVF:F波が見やすい vs f波を確認
覚え方:「粗動(ソドウ)は鋸(ノコギリ)の歯」「細動(サイドウ)は砂嵐のように細かい」
- A. 狭いQRS波を示し、P波が先行する
- B. P波が消失し、基線が揺れる
- C. RR間隔が完全に不規則になる
- D. 幅広いQRS波を示し、先行するP波がない
D. 幅広いQRS波を示し、先行するP波がない
解説
心室期外収縮(Premature Ventricular Contraction:PVC)は、心室から発生する異所性興奮です。
PVCの特徴
- 幅広いQRS波(0.12秒以上)
- 先行するP波がない
- 代償性休止期を伴うことが多い
- T波はQRS波と逆方向
危険なPVCのパターン(Lown分類)
- 多源性PVC
- 連発(2連発、3連発以上)
- R on T現象
- 頻発(1分間に30個以上または総心拍の10%以上)
- A. 前壁梗塞 → Ⅱ、Ⅲ、aVF
- B. 下壁梗塞 → V1〜V4
- C. 前壁梗塞 → V1〜V4
- D. 側壁梗塞 → Ⅱ、Ⅲ、aVF
C. 前壁梗塞 → V1〜V4
解説
急性心筋梗塞では、梗塞部位に対応した誘導でST上昇が見られます。
梗塞部位と心電図誘導の対応
- 前壁中隔:V1〜V4 → 左前下行枝(LAD)
- 側壁:Ⅰ、aVL、V5、V6 → 回旋枝(LCX)
- 下壁:Ⅱ、Ⅲ、aVF → 右冠動脈(RCA)
- 後壁:V7〜V9(V1〜V3で鏡像変化) → RCAまたはLCX
覚え方:「前はV(ブイ)ってことで前列」「下は足元だからⅡ、Ⅲ、aVF(Foot)」
要注意:ST上昇を見たら「STEMI(ST上昇型心筋梗塞)」を疑い、緊急カテーテル検査の準備を。Door-to-Balloon時間90分以内が目標です。
- A. PR間隔は一定である
- B. PR間隔が徐々に延長し、QRS波が脱落する
- C. 完全にP波とQRS波が解離している
- D. QRS波が完全に消失している
B. PR間隔が徐々に延長し、QRS波が脱落する
解説
房室ブロックは房室結節またはヒス束での伝導障害で、重症度により3段階に分類されます。
房室ブロックの分類
- Ⅰ度:PR間隔が0.20秒以上に延長するが、全てのP波がQRS波に伝導
- Ⅱ度 Mobitz Ⅰ型(Wenckebach):PR間隔が徐々に延長し、最終的にQRS波が脱落
- Ⅱ度 Mobitz Ⅱ型:PR間隔は一定だが、突然QRS波が脱落
- Ⅲ度(完全房室ブロック):P波とQRS波が完全に解離
覚え方:「ウェンケバッハは”だんだん長くなってドロップ”」
要注意:Mobitz Ⅱ型とⅢ度房室ブロックはペースメーカーの適応となることが多く、Mobitz Ⅰ型に比べて予後が悪いです。
- A. rsR’型(M字型)
- B. rS型
- C. QS型
- D. 正常なqRs型
A. rsR’型(M字型)
解説
脚ブロックは、ヒス束から分岐した右脚または左脚での伝導障害です。
完全右脚ブロック(CRBBB)の特徴
- QRS幅 ≧ 0.12秒(3mm以上)
- V1誘導でrsR’型(M字型、うさぎの耳)
- V5、V6、Ⅰ誘導で幅広いS波
左脚ブロック(LBBB)の特徴
- V1誘導でrS型またはQS型(下向き)
- V5、V6でRR’型(ノッチ)
覚え方:「V1で上向きは右脚(Right)、下向きは左脚(Left)」「うえむきは”う”きゃく、したむきは”さ”きゃく」
要注意:右脚ブロック単独は基礎心疾患がない場合も多く、経過観察でよいことがほとんどです。しかし、左脚ブロックは心筋梗塞や心筋症などの基礎疾患を伴うことが多いため、必ず精査が必要です。
- A. QTcが0.36秒未満で診断される
- B. 徐脈性不整脈のみを引き起こす
- C. トルサード・ド・ポワンツ(TdP)を引き起こし、突然死の原因となりうる
- D. 薬剤性のものは存在しない
C. トルサード・ド・ポワンツ(TdP)を引き起こし、突然死の原因となりうる
解説
QT延長症候群は、心電図上のQT間隔が延長し、トルサード・ド・ポワンツ(TdP)という特殊な多形性心室頻拍を引き起こす可能性のある疾患です。
QT間隔の正常値
- 正常:0.36〜0.44秒
- 男性:QTc > 0.45秒で延長
- 女性:QTc > 0.46秒で延長
先天性と後天性(薬剤性、電解質異常など)があり、特に抗不整脈薬、抗精神病薬、抗菌薬など多くの薬剤がQT延長を引き起こす可能性があります。
- A. 50回/分
- B. 60回/分
- C. 75回/分
- D. 100回/分
B. 60回/分
解説
心拍数の計算方法を覚えましょう。
記録速度25mm/秒の場合、1秒 = 25mm、1分 = 60秒 = 1,500mmとなります。
心拍数 = 1,500 ÷ RR間隔(mm)
RR間隔が25mmの場合:1,500 ÷ 25 = 60回/分
簡単計算法:大きいマス(5mm)で計算する方法もあります。心拍数 = 300 ÷ RR間隔(大マスの数)。例:RR間隔が5大マス → 300÷5 = 60回/分
- A. 洞性頻脈(心拍数110/分)
- B. 心房期外収縮の散発
- C. Ⅰ度房室ブロック
- D. 心室細動(VF)
D. 心室細動(VF)
解説
心室細動(VF)は、心室が無秩序に興奮し、有効な心拍出がなくなる心停止状態です。数分以内に除細動を行わなければ死亡します。
緊急度の高い不整脈(重要度順)
- 心室細動(VF):即座に除細動が必要
- 無脈性心室頻拍(pulseless VT):除細動の適応
- 心室頻拍(VT):血行動態により対応が異なる
- 完全房室ブロック:症状があればペーシング
日本循環器学会の「不整脈非薬物治療ガイドライン」では、VFや無脈性VTに対する早期除細動の重要性が強調されています。
学習のポイント
これらの10問は、心電図検定3級で頻出する基本的な知識です。全問正解を目指して、繰り返し復習しましょう。実際の検定では、波形判読問題も出題されるため、多くの症例を見て経験を積むことが重要です。
あなたの実力チェック
10問中、何問正解できましたか?
| 正解数 | 判定 | アドバイス |
|---|---|---|
| 9〜10問 | 🎉 合格圏内! | この調子で本番に臨みましょう |
| 7〜8問 | 😊 もう少し | 間違えた分野を重点的に復習 |
| 5〜6問 | 📚 要復習 | 公式問題集をもう一周 |
| 4問以下 | 🔥 頑張ろう | 基礎から見直しが必要です |
試験直前1週間の過ごし方
💡 放射線技師からのワンポイント:私自身の経験から、試験直前の1週間は新しいことを覚えるより、今まで勉強したことの定着に時間を使うことをお勧めします。
残り1週間でやるべきこと
- 公式問題集の2周目:間違えた問題を中心に見直し
- 苦手分野の集中復習:特に不整脈の判読
- 時間配分の練習:50問を70分で解く感覚をつかむ
- 体調管理:睡眠をしっかり取り、万全の状態で臨む
試験当日の注意点
- 問題用紙は回収されるため、自己採点はできません
- 迷った問題は一旦飛ばして、時間があれば戻る
- 最初にゆっくり解きすぎないよう、1問1分以内を目安に
おわりに
心電図検定3級は、しっかり準備すれば十分に合格可能な試験です。合格率約75%という数字は、適切な勉強方法と時間を確保できれば、誰でも手が届く範囲にあることを示しています。
私が臨床で感じてきたのは、心電図判読は「パターン認識」と「系統的なアプローチ」の両方が大切だということ。今回紹介した10問は、どれも現場で遭遇する頻度の高い所見ばかりです。試験対策としてだけでなく、今後の臨床に活かしていただければ幸いです。
皆さんの合格を心よりお祈りしています。頑張ってください!
付録

| ST上昇誘導 | 梗塞部位 | 責任血管 | 対側性変化(ST低下) |
|---|---|---|---|
| V1〜V4 | 前壁中隔 | LAD(左前下行枝) | Ⅱ, Ⅲ, aVF |
| V1〜V6, Ⅰ, aVL | 広範前壁 | LAD(近位部) | Ⅱ, Ⅲ, aVF |
| Ⅱ, Ⅲ, aVF | 下壁 | RCA(右冠動脈) | Ⅰ, aVL |
| Ⅱ, Ⅲ, aVF + V3R, V4R | 下壁 + 右室 | RCA(近位部) | Ⅰ, aVL |
| Ⅰ, aVL | 高位側壁 | LCX(左回旋枝)/ LAD対角枝 | Ⅱ, Ⅲ, aVF |
| V5, V6, Ⅰ, aVL | 側壁 | LCX(左回旋枝) | V1〜V3 |
| V7〜V9(後壁誘導) | 後壁(純後壁) | RCA / LCX | V1〜V3(R波増高) |
⚠️ 臨床のポイント
- STEMIが疑われたら10分以内に12誘導心電図を記録
- 下壁梗塞(Ⅱ, Ⅲ, aVF)を認めたら右側胸部誘導(V3R, V4R)も追加
- 後壁梗塞が疑われる場合はV7〜V9誘導を追加
- Door to Balloon time(来院から再灌流まで)の目標は90分以内
📌 対側性変化(reciprocal change)について
梗塞部位の対側に位置する誘導では、鏡像としてST低下が見られます。これを「対側性変化」と呼び、急性心筋梗塞の診断感度を高める重要な所見です。
「M字型」「うさぎの耳」とも呼ばれる
上向きが特徴
幅広いS波(≧0.04秒)
- QRS幅 ≧ 0.12秒(3mm以上)
- V1でrsR’型またはrSR’型
- 二次性ST-T変化(ST低下、陰性T波)
- Ⅰ, aVL, V5, V6で幅広いS波
深い陰性波
下向きが特徴
RR’型(ノッチまたはスラー)
- QRS幅 ≧ 0.12秒(3mm以上)
- V1でrS型またはQS型
- Ⅰ, aVL, V5, V6でq波消失
- 二次性ST-T変化(ST上昇やT波変化)
💡 覚え方のコツ
上向き(陽性)→ 右脚(Right)ブロック
下向き(陰性)→ 左脚(さきゃく)ブロック
✅ 右脚ブロック
- 健常者でも見られることがある
- 基礎心疾患がなければ経過観察
- 単独では予後良好なことが多い
⚠️ 左脚ブロック
- 基礎心疾患を伴うことが多い
- 心筋梗塞・心筋症の精査が必要
- 新規出現は緊急性が高い
⚡ 緊急不整脈 判断フローチャート
心電図で不整脈を発見したら、まず「脈あり?」から確認
- 収縮期血圧 <90mmHg
- 意識障害
- 胸痛・呼吸困難
- 急性心不全徴候
造影剤アナフィラキシーでも不整脈発生の可能性
VF発生時は術者の指示でDC準備
AED設置場所を常に把握
参考:JRC蘇生ガイドライン2020、AHA ACLS Provider Manual
参考文献・引用元
- 日本不整脈心電学会:心電図検定公式問題集&ガイド(改訂3版), メディカ出版, 2018
- 日本循環器学会/日本不整脈心電学会:2024年JCS/JHRSガイドラインフォーカスアップデート版 不整脈治療
- 日本循環器学会:急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版)
- 日本人間ドック学会:標準12誘導心電図検診判定マニュアル(2023年度版)
- 厚生労働省:令和5年(2023)患者調査の概況
- 厚生労働省:令和4年(2022)人口動態統計(確定数)の概況
- 日本心臓財団:心房細動、心房粗動 疾患別解説
- 日本不整脈心電学会:2025年携帯型/装着型心電計の適切使用に関するコンセンサスステートメント, 心電図 44(4): 275-295
- MSDマニュアル プロフェッショナル版:房室ブロック、心房細動、QT延長症候群
- 日本生活習慣病予防協会:心疾患の調査・統計
