【計算の芸術】公式を暗記するな、現象をイメージせよ。物理・機器工学「良問」アーカイブ

ゆん
「計算問題は苦手だから捨てます」——そんな風に、試験開始前から白旗を上げている受験生は多いですが、実は計算問題こそが「国家試験における最も安定した得点源」であることを知っていますか?
ゆんさん、大変です!第77回国家試験の問題が届きましたよ!
計算問題もいくつかあったんですけど、これ、今までの「良問」たちと同じロジックで解けるのかしら……?
ゆん
おっ、Linaさん。いいところに。まさに今、その77回の問題も追加しようと思っていたところだよ。
でも、まずはこの「マスターピース」たちを完璧にすることが合格への近道だ。数字の向こう側にある物理を、一緒に紐解いていこう!
暗記科目は、ど忘れ一つでその得点を失います。しかし、計算問題は解法(ロジック)さえ脳内にあれば、その場で答えを導き出すことができます。また、一度解けるようになれば、ひっかけ問題のパターンも自ずと見えてくるのです。
ここでは、過去に出題された計算問題の中から、特に美しく、本質的な理解を問う「良問」をセレクトしました。数字の向こう側にある物理現象をイメージしながら、パズルを解くように進んでいきましょう。
相似形を見抜く「影絵のロジック」
【典型的な過去問】
焦点サイズ \(F\) が 2.0 mm のX線管を使用し、焦点-被写体間距離(SOD)を 80 cm、被写体-フィルム間距離(OFD)を 20 cm とした。
このときの幾何学的不鋭(半影)の大きさ \(H\) [mm] はいくらか。
「\(H = F \times \frac{b}{a}\)…ええと、\(a\) と \(b\) どっちがどっちだったっけ?」
そんな迷いとは、今日で決別しましょう。中学校で習った「砂時計の形をした三角形の相似」を描けば、公式なんて勝手に脳から湧き出てきます。
💀 受験生が陥る罠:a と b の比率を逆にしてしまう
公式 \(H = F \times (b/a)\) の \(a, b\) を暗記で覚えようとするから間違えるのです。図を描けば、\(H\) に近い方の距離が分子に来ることは一目瞭然。暗記はいつか裏切りますが、図形は裏切りません。
2.0mm”] –>|”SOD
80cm”| P((“交点”)) P –>|”OFD
20cm”| H[“半影
H mm”] style F fill:#f0f9ff,stroke:#0891b2,stroke-width:2px style P fill:#0891b2,stroke:#fff,stroke-width:2px,color:#fff style H fill:#f0f9ff,stroke:#0891b2,stroke-width:2px
- 三角形の性質: 頂点が向かい合った三角形の底辺の比は、高さの比に一致します。
- 比率の計算:
焦点サイズ:半影 = 距離(SOD):距離(OFD)
\(2.0 \text{ mm} : H = 80 \text{ cm} : 20 \text{ cm}\) - 内項の積と外項の積:
\(80 \times H = 2.0 \times 20\)
\(80H = 40\)
\(H = 0.5 \text{ mm}\)
なるほど!「砂時計の相似」って覚えやすいわね。公式を丸暗記するより、図を描いて比を出す方が絶対に間違えないわ。
リプル(脈動)という名の「出力ブースト」を見極めろ
【典型的な過去問】
インバータ式X線装置(管電圧リプル率 2% 以下)を用い、以下の条件で撮影を行った。
- 管電圧:100 kV
- 管電流:500 mA
- 撮影時間:0.1 秒
このときに発生する熱量(HU)として最も近いものはどれか。
💀 受験生が陥る罠:単相のリズムで計算してしまう
「\(kV \times mA \times sec\) で完了!」と思っていたら、それは出題者のトラップに見事に嵌まっています。熱量計算には、波形による「補正係数」の概念が欠かせません。
X線装置の波形がなだらかになる(リプルが小さくなる)ほど、実効的な電圧が高くなり、管球への熱負荷も増大します。
係数 1.0″] —|”効率UP”| B[“三相6P
係数 1.35″] B —|”最高効率”| C[“インバータ
係数 1.41″] style A fill:#f0f9ff,stroke:#64748b,stroke-width:2px style B fill:#e0f2fe,stroke:#0891b2,stroke-width:2px style C fill:#0891b2,stroke:#fff,stroke-width:2px,color:#fff
- 基本計算(電力的エネルギー):
\(100 \text{ kV} \times 500 \text{ mA} \times 0.1 \text{ sec} = 5,000 \text{ J}\) - HU(ヒートユニット)への変換:
インバータ式なので係数 1.41(約\(\sqrt{2}\))をかけます。
\(5,000 \times 1.41 = 7,050 \text{ HU}\)
最も近い選択肢である 7,000 HU が正解です。
単相=1.0、三相6P=1.35、インバータ=1.41…この3つの係数さえ覚えておけば、HU計算は怖くないわね!
「蛇口」と「排水溝」の収支バランス
【典型的な過去問】
物理的半減期 \(T_p\) が 6時間 のRI医薬品を投与した。
この薬剤の生物学的半減期 \(T_b\) が 3時間 であるとき、体内での有効半減期 \(T_e\) は何時間か。
有効半減期 \(T_e\) は、核種が勝手に壊れるスピード(物理)と、体が勝手に外に放り出すスピード(生物)の合算です。二つの現象が同時進行するので、どちらよりも速く減少するはずです。
💀 受験生が陥る罠:単純に足し算してしまう
「6時間と3時間だから、足して9時間?」…違います!二つのルートで減っていくのだから、残る時間はもっと短くなるはず。計算結果が、元の半減期のどちらよりも短くなっているか、常に検算する癖をつけましょう。
Tp = 6時間”] –>|”自然崩壊”| E((“有効半減期
Te = 2時間”)) B[“生物学的半減期
Tb = 3時間”] –>|”体外排出”| E style P fill:#fef2f2,stroke:#ef4444,stroke-width:2px style B fill:#f0fdf4,stroke:#22c55e,stroke-width:2px style E fill:#0891b2,stroke:#fff,stroke-width:3px,color:#fff
公式(逆数の和)
\[ \frac{1}{T_e} = \frac{1}{T_p} + \frac{1}{T_b} \]
\[ \frac{1}{T_e} = \frac{1}{6} + \frac{1}{3} = \frac{3}{6} = \frac{1}{2} \Rightarrow T_e = 2 \text{ (時間)} \]
リナの時短テク(和分の積)
\[ T_e = \frac{T_p \times T_b}{T_p + T_b} = \frac{6 \times 3}{6 + 3} = \frac{18}{9} = 2 \]
「和分の積」の公式、私のお気に入りよ!逆数をとって足して…なんてやるより、分子に積、分母に和を入れるだけで一発よ。
「宇宙の薄まり」を定量評価せよ
【典型的な過去問】
焦点から 100 cm の距離で線量を測定したところ、20 mR であった。
同じ条件で、距離を 200 cm にしたときの線量はいくらになるか。
X線は中心から四方八方に広がっていきます。距離が2倍になると、その光がカバーする「面積」は縦2倍×横2倍で 4倍 に広がります。エネルギーの総量は変わらないので、単位面積あたりの強さは 1/4 に薄まる。これが逆二乗の法則です。
💀 受験生が陥る罠:単純に「2倍離れたから 1/2」と答えてしまう
距離が2倍なら線量は「2の2乗」で 1/4 です。もし距離が3倍なら 1/9。この「2乗」を忘れると、放射線防護の計算で致命的なミスに繋がります。
1倍”] –>|”広がる”| L1[“面積 1
線量 100%”] D2[“距離
2倍”] –>|”4倍に広がる”| L2[“面積 4
線量 25%”] style D fill:#f0f9ff,stroke:#0891b2,stroke-width:2px style L1 fill:#fef2f2,stroke:#ef4444,stroke-width:2px style D2 fill:#f0f9ff,stroke:#0891b2,stroke-width:2px style L2 fill:#0891b2,stroke:#fff,stroke-width:2px,color:#fff
- 距離の比: \(100 : 200 = 1 : 2\)
- 二乗の比: \(1^2 : 2^2 = 1 : 4\)
- 逆数の比: 線量は距離の二乗に反比例するので、強さは \(1/4\) 倍。
- 計算: \(20 \text{ mR} \times \frac{1}{4} = 5 \text{ mR}\)
「2倍離れたら1/2」って思いがちだけど、実際は「2乗」で1/4になるのよね。スプレーが広がるイメージ、すごく分かりやすいわ!
プロトンの「ダンスのテンポ」を合わせろ
【典型的な過去問】
静磁場強度 1.5 T(テスラ)のMRI装置において、水素原子核(プロトン)の共鳴周波数(ラーモア周波数)は約何 MHz か。
ただし、水素原子核の磁気回転比を 42.6 MHz/T とする。
MRIの計算は難解なイメージがありますが、このラーモア方程式だけは世界一シンプルな「掛け算」です。
💀 受験生が陥る罠:単位の MHz と Hz を見間違える
国試では「64 Hz」という選択肢が紛れ込んでいることがあります。1.5T で 64 Hz なんて、カブトムシの羽音より遅い回転です。MRIの共鳴は「メガヘルツ(100万倍)」の世界であることを忘れないでください。
\[ f = \gamma \times B_0 \]
(周波数 = 磁気回転比 × 磁場強度)
- 計算: \(42.6 \text{ MHz/T} \times 1.5 \text{ T} = 63.9 \text{ MHz}\)
42.6 × 1.5 = 64!MRIの計算はこれだけ覚えれば大丈夫。「64 Hz」って選択肢に騙されないようにね!
複雑なようでいて、実は「平均」を求めるだけ
【典型的な過去問】
頭部CT検査において、CTDIvol が 50 mGy であった。
この検査で、スキャン長が 15 cm、ビーム幅が 3 cm であった場合、加算係数(pitch factor)を考慮しない場合のCTDIw(加重CTDI)はいくらか。
ただし、CTDIvol = CTDIw / pitch factor とする。
💀 受験生が陥る罠:余計な情報に惑わされる
「スキャン長が15cm?ビーム幅が3cm?ピッチファクターは考慮しない?一体何に使うの?」
CTDIの計算問題では、不要な情報が紛れ込んでいることがよくあります。
CTDIvol(体積CTDI)は、スキャン領域全体にわたる平均線量を示す指標です。そして、その定義式は以下の通りです。
\[ CTDI_{vol} = \frac{CTDI_w}{Pitch Factor} \]
問題文には「加算係数(pitch factor)を考慮しない場合」とあります。これは、実質的に Pitch Factor = 1 と見なせる状況、あるいはCTDIvolとCTDIwが等しくなる状況を指しています。
- \(CTDI_{vol} = 50 \text{ mGy}\)
- \(Pitch Factor = 1\) (考慮しない、または等しいと仮定)
- \(CTDI_w = CTDI_{vol} \times Pitch Factor = 50 \text{ mGy} \times 1 = 50 \text{ mGy}\)
したがって、CTDIwは 50 mGy です。スキャン長やビーム幅は、この問題では直接的な計算には使用しません。
CTDIの問題は「ダミー情報」に惑わされないのがコツね。使う数値と使わない数値を見極めることが大事よ!
指数関数的減衰を「半分」という単位で刻め
【典型的な過去問】
ある単色X線において、その強さを 1/2 に減衰させるために必要なアルミニウム板の厚さ(半価層)が 2.0 cm であった。
このX線に対するアルミニウムの線減弱係数 \(\mu\) [cm\(^{-1}\)] はいくらか。
💀 受験生が陥る罠:自然対数 \(e\) に怯えてしまう
「\(I = I_0 e^{-\mu x}\) …あぁ、もう嫌だ!」と数式だけで拒絶反応を起こしてはいけません。国試で問われるのは、いつも「半分になったとき」の特殊な関係性。実はただの割り算です。
半減期(放射能)と半価層(X線)は、全く同じ数学的構造をしています。どちらも「半分になるまで」の指標と、減衰スピードを示す係数の間には、以下の絶対的な関係があります。
\[ \mu = \frac{\ln 2}{HVL} \approx \frac{0.693}{HVL} \]
- 公式の適用: 線減弱係数 \(\mu = 0.693 / HVL\)
- 計算: \(0.693 / 2.0 = 0.3465\)
四捨五入して 0.347 cm\(^{-1}\) となります。
0.693(ln2)は「半分になるとき」の魔法の数字よね。半減期でも半価層でも、これさえ覚えておけば大丈夫!
視野とマトリクスの「解像度」を算出せよ
【典型的な過去問】
視野(FOV)が 30 cm、マトリクスサイズが 512 × 512 のデジタル画像を構成した。
このときの 1 ピクセルの大きさは約何 mm か。
ピクセルサイズの計算は、実はただの「割り算」です。「FOV」という大きな定規を、「マトリクス」という目盛りでどれだけ細かく刻むか、それだけを考えます。
\[ \text{Pixel Size} = \frac{FOV}{\text{Matrix Size}} \]
- 単位の変換: FOV 30 cm → 300 mm(答えが mm なので先に直すのがコツ!)
- 計算: \(300 \text{ mm} / 512 \approx 0.5859 \dots \text{ mm}\)
最も近い値は 0.59 mm です。
FOVをマトリクスで割るだけ!単位を mm に揃えてから計算するのがポイントよ。512で割ると覚えにくいから、「300÷500で0.6くらい」と概算するのもアリね。
お疲れ様!計算問題8問、完走したわね。
ポイントは「公式を暗記するより、現象をイメージする」こと。三角形の相似、スプレーの広がり、蛇口と排水溝…こうした身近なイメージと紐づけておけば、本番でも慌てずに解けるわ。
次は第77回の計算問題も一緒に攻略しましょう!
現在、リナと一緒に第77回国家試験の計算問題を解析中です。近日中に「マスターピース」として追加予定ですので、楽しみにしていてくださいね!



















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