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RADIOLOGIC TECHNOLOGIST NEWS PRESS

AI運用

― 放射線技師ラボ ニュースエクスプレス ―
2026年7月21日 AI安全クラスター 第02号
競合先回り・高品質ガイドシリーズ

AIに「これだけは守って」を最初に渡す|放射線技師のためのルールファイル設計ガイド

放射線技師のための業務効率化とキャリア戦略

ChatGPTやClaudeなどの生成AIを業務効率化のために使い始める放射線技師が増えています。しかし、「毎回同じような指示を入力するのが面倒」「日によって回答の精度がバラバラで信用できない」といった悩みを抱えていないでしょうか。業務の合間を縫ってプロンプトを練り直す時間は、本来なら患者さんのケアや撮影技術の向上に充てるべき貴重なリソースです。
この記事では、AIに対して「これだけは必ず守ってほしい」という前提条件をあらかじめ固定化する「ルールファイル」の設計手法を解説します。医療現場という特殊な環境下でAIを安全かつ安定して活用するために必須となる、禁止事項の定義、トーンの指定、そして出力形式のコントロール方法について、具体的なテンプレートを交えながら詳しくお伝えします。

LINA
LINA
ゆんさん、最近業務の調べ物でAIを使い始めたんですが、たまにすごく的外れな答えが返ってきたり、妙に馴れ馴れしい言葉遣いになったりして困っているんです。毎回「医療従事者向けに専門的に書いて」って打ち込むのも面倒で……。
YUN
YUN
それは大変だね、LINAさん。毎回ゼロから指示を出すのは効率が悪いし、何より医療情報を扱う上での安全性も気になるところ。今回は、AIに最初に読み込ませる『憲法』のようなもの、ルールファイルの作り方を一緒に見ていこうか。
📌 本記事の要点(TL;DR)
  • ルールファイルはAIの行動を制限し、回答のブレをなくすための指示書
  • 医療現場特有の個人情報保護や断定的な診断を避けるための安全網として機能する
  • 禁止事項、許可事項、トーン、出典の要求、出力形式の5ブロックで構成するのが基本
  • 部署全体でルールを統一することで、チーム全体のAI活用リテラシーが向上する
  • 定期的な見直しとバージョン管理を行い、現場のニーズに合わせて安全にアップデートする

ルールファイルとは何か——プロンプトの「憲法」

生成AIを使用する際、多くのユーザーは都度プロンプト(指示文)を打ち込んで対話を開始します。しかし、この方法ではAIがどのような前提条件で動くべきかが毎回リセットされてしまい、出力結果に大きなばらつきが生じます。そこで重要になるのが、「ルールファイル」という概念です。ルールファイルとは、AIに対して「あなたはどのような立場で、何を優先し、何をしてはいけないのか」を事前に定義した、いわばプロンプトの「憲法」とも呼べる根幹の指示書です。

LINA
LINA
ルールファイルを設定すると、具体的にどう変わるんですか?
YUN
YUN
AIが『放射線技師向けの専門用語を用いること』や『エビデンスレベルの高い情報のみを出力すること』といった基本方針を、自動的に守ってくれるようになるんだよ。通常のプロンプトが単なる『お願い』だとしたら、システム指示によるルールは『絶対の掟』として機能してくれる、というイメージだね。
LINA
LINA
なるほど。新人技師に『今日からこういう方針で仕事をしてね』と業務マニュアルを渡すようなイメージですね。でも、毎回それを入力するのは手間じゃないですか?
YUN
YUN
実は、ChatGPTの『カスタム指示』やClaudeの『プロジェクト機能』などに一度設定しておけば、毎回入力する必要はなくなるんだよ。定型的な指示の手間からは解放されるから、ずいぶん楽になるはず。

例外として、意図的にルールから外れたブレインストーミング(例えば、患者向けパンフレットの平易な文章案を作りたい場合など)を行いたい場合は、ルールファイルを適用しない新規セッションを一時的に立ち上げる必要があります。しかし、医療情報を扱う限りにおいては、基本的には常にルールファイルを適用した状態でAIを操作することが、安全運用における大原則となります。

💡 要点整理
  • ルールファイルは毎回入力する手間を省くための固定指示書
  • システム指示として設定することで、AIの挙動を根本から制御できる
  • 専門性の維持と情報の信頼性を担保するためのベースラインとなる
LINA
LINA
ルールファイルって、普通のプロンプトと何が違うんでしょうか?長めの文章を最初に送るだけなら、毎回コピペするのと変わらない気がしてしまいます。
YUN
YUN
通常のプロンプトが『今回の仕事の内容』を伝えるものだとしたら、ルールファイルは『あなたの職業と就業規則』を定義するもの、と言えるかな。専用の機能(カスタム指示など)に設定しておけば、新しい対話を始めるたびに自動的にその規則が適用されるから、毎回コピペする手間も省けるよ。

なぜ医療職に必須なのか

なぜ放射線技師をはじめとする医療従事者がAIを利用する際、ルールファイルが「あった方が便利」ではなく「必須」なのでしょうか。その理由は、生成AIが持つ特有の性質と、医療現場で求められる高度な安全性・倫理観との間にギャップが存在するためです。適切な制約を与えずにAIを使用することは、セキュリティやコンプライアンスの観点から非常に大きなリスクを伴います。

LINA
LINA
それらの事故を防ぐために、ルールファイルが防波堤になるんですね。具体的にはどう設定するんですか?
YUN
YUN
例えば、『いかなる場合も患者を特定できる情報を入力させないよう警告する』とか、『個別具体的な診断や治療方針の決定に該当する表現を一切用いない』といった条項を、ルールファイルに明記しておくんだよ。
LINA
LINA
もし技師が『このMRI画像の所見から考えられる疾患は?』と入力したら、どう変わるんでしょうか。
YUN
YUN
ルールがないAIは『〇〇病の可能性が高いです』なんて断定的に答えてしまうことがある。でもルールを設けておけば、『一般的な鑑別疾患として〇〇などが挙げられますが、確定診断は必ず担当医師の判断を仰いでください』というふうに、適切な留保がついた回答を徹底させられるんだよ。

これは、AIの出力をそのままレポートの下書きなどに流用した際に、誤った断定表現がカルテに残ることを防ぐための極めて重要なセーフティネットとなります。万が一の医療事故の際に、AIの回答を根拠に行動したという事態を避けるためにも免責事項の自動付与は必須です。

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図2: ルールファイル設計のポイント(LINA)

💡 現場の基準
  • 医療現場特有の個人情報漏洩リスクと診断断定リスクを物理的に防ぐ
  • AI特有の自信過剰な表現(ハルシネーション)を抑制し、客観的なトーンを保つ
  • 最終的な判断は常に人間の医療従事者が行うという原則をAIに徹底させる

設計の骨格:禁止・許可・トーン・出典・出力形式

それでは、実際に強固なルールファイルを作成するための設計方法を見ていきましょう。効果的なルールファイルは、単に要望を羅列するのではなく、AIが理解しやすい構造化された形式で記述する必要があります。ここでは、汎用性が高く、かつ医療現場の要求を満たすための「5ブロック設計」という手法を採用します。

LINA
LINA
効果的なルールファイルを作るには、どんな構造にすればいいんでしょうか?
YUN
YUN
単に要望を並べるだけではなくて、AIが理解しやすい『5ブロック設計』を使うといいよ。『役割定義』『禁止事項』『許可事項』『トーンとマナー』『出力形式と出典要求』の5つだね。
LINA
LINA
禁止事項が一番重要そうですね。患者情報や確定診断の禁止など、絶対のレッドラインを引くイメージですか?
YUN
YUN
その通り。ただ、禁止事項だけでガチガチに縛りすぎないように、『許可事項』で安全な範囲の行動はきちんと許可しておくのがコツだよ。例えば『一般的なガイドラインに基づく情報提供は可能』というふうに明記しておくんだね。

第4ブロックの「トーンとマナー」では、出力される文章の雰囲気を指定します。「客観的で冷静なトーン」「煽り文句や過剰な装飾を避ける」「です・ます調で統一する」などを設定することで、そのまま業務で使いやすい文章になります。最後の第5ブロック「出力形式と出典要求」では、情報ソースの提示を義務付けます。「医学的な事実を述べる際は、可能な限り信頼できる機関の出典を明記する」と指示することで、情報のファクトチェックを容易にします。

説明画像

図3: ルールファイル設計のポイント(LINA)

📋 ルールファイルの5ブロック設計
  • 1. 禁止事項の明示 … 個人情報・診断断定など絶対NGを固定
  • 2. 許可タスクの定義 … 要約・校正・一般解説など安全な範囲を許可
  • 3. 出力トーン・口調 … 丁寧・客観・現場で使える文体に統一
  • 4. 出典・参考文献要件 … 根拠不明の断定を避け、確認導線を残す
  • 5. 出力形式・構成 … 見出し・表・免責文など業務用フォーマットを指定
💡 要点整理
  • 役割、禁止、許可、トーン、出力形式の5ブロックで体系的に構成する
  • 禁止事項で安全を担保し、許可事項で有用性を引き出すバランスが重要
  • トーンと出力形式を指定することで、業務への流用(手直し)の手間を減らす
LINA
LINA
禁止事項ばかり書くと、AIが「お答えできません」とばかり言うようになりませんか?以前、厳しく指示しすぎたら全く役に立たなくなってしまったことがあって……。
YUN
YUN
そうだね、その心配はもっとも。だからこそ『許可事項』のブロックがセットで必要になってくるんだよ。『個別診断は禁止』とする一方で、『一般的な疾患の解説や撮影技術の理論についての情報提供は許可する』と明言しておけば、AIは安全な範囲で力を発揮してくれるようになる。

コピペ用:個人用ルールファイル(全文テンプレ)

ここからは、実際に現場ですぐに使える個人用ルールファイルの全貌をお見せします。このテンプレートは、前述の5ブロック設計に基づいており、医療安全と業務効率のバランスを考慮して作成されています。そのままコピー&ペーストして使用することも、自身の業務内容に合わせて微調整することも可能です。

LINA
LINA
具体的にどんな文章を設定すればいいのか、そのまま使えるテンプレートはありますか?
YUN
YUN
もちろんあるよ。以下の内容をコピー&ペーストして、AIの『システム指示』や『カスタム指示』の欄に入力してみて。

【役割定義】あなたは放射線技術学および関連する医療知識に精通した専門アシスタントです。日本の医療現場で働く放射線技師をサポートすることが目的です。

【禁止事項】1. 患者を特定できる情報(氏名、ID、生年月日等)が入力された場合は直ちに警告し、処理を停止すること。2. 確定的な診断、治療方針の決定、および個別具体的な法的助言に該当する回答を一切行わないこと。3. 存在しない論文、ガイドライン、架空の数値データを絶対に生成しないこと(事実が不明な場合は「不明である」と明記すること)。4. 過剰な表現や煽り文句を使用しないこと。

【許可事項】1. 日本放射線技術学会などの公的なガイドラインに基づく一般的な情報提供は推奨する。2. 撮影技術の物理的・工学的理論に関する解説は積極的に行うこと。3. ユーザーが入力した専門用語(略語含む)は理解した上で対話を進めること。

LINA
LINA
免責事項も毎回自動で出力させるんですよね?
YUN
YUN
そうだよ。【出力形式と出典要求】の末尾に『※最終的な判断は施設の運用ルールおよび担当医師の指示に従ってください』と付記するよう指示しておくといい。さらに、自分の担当モダリティに合わせて『許可事項』を微調整すると、使い勝手がもっと良くなるはずだよ。
💡 要点整理
  • テンプレートはそのままコピペして「カスタム指示」等に設定可能
  • 自身の担当モダリティや業務内容に合わせて「許可事項」を微調整すると使い勝手が増す
  • 免責事項を毎回自動で出力させることで、情報の取り扱いに対する意識を高く保つ

チーム/部署用ルールへ拡張する

個人レベルでルールファイルの効果を実感できたら、次はそれをチームや部署全体へ展開していく段階に入ります。部署内で統一されたAIの運用ルールを持つことは、情報セキュリティの底上げだけでなく、スタッフ間のAIリテラシーの格差を埋めるためにも非常に有効な手段となります。

LINA
LINA
個人のルールファイルを部署全体で共有する場合、気をつけることはありますか?
YUN
YUN
個人用が『自分が使いやすいように』最適化されているのに対して、部署用ルールは『最もAIに不慣れなスタッフが使っても事故が起きないように』、安全側に倒して設計する必要があるんだよ。
LINA
LINA
なるほど。具体的にはどのように運用ルールを構築すればいいんでしょうか。
YUN
YUN
階層的なアプローチがおすすめだよ。まずベースとなる『部門共通ルール』を作って、そこに病院全体のセキュリティポリシーと強力な禁止事項を盛り込む。ここは絶対に改変不可としておく。その次に、モダリティや班ごとの『班別ルール』を重ねていくイメージだね。

実際の運用場面では、共有のクラウドストレージや院内のイントラネット上にルールファイルのマスターデータを配置し、全員がそこからコピーして使用する形をとります。また、新しいAIツールを導入する際のアカウントセットアップ手順書の中に、「初回ログイン時に必ずこのルールファイルをシステム指示に設定すること」という工程を組み込むことで、設定漏れを防ぐことができます。例外として、特定の研究目的などで一時的に制限を解除したい場合は、必ず管理者の承認を得た上で、ネットワークが分離された専用の端末で行うなどのルール作りも併せて必要です。

💡 AIルール強度チェッカー

プロンプトやシステム指示ファイルの安全・適合度をセルフチェックします

💡 安全活用のチェック
  • 部署用ルールは「最も不慣れなスタッフ」の安全を担保するよう堅牢に設計する
  • 部門共通の絶対ルールの上に、各班(モダリティ)ごとの役割ルールを重ねる階層構造をとる
  • 初期設定のフローにルールファイルの適用を組み込み、設定漏れを防ぐ
LINA
LINA
部署で統一ルールを作ると、スタッフから「縛りがきつすぎて使いにくい」という不満が出ないか心配です。個人の自由度とのバランスはどう取ればいいんでしょうか?
YUN
YUN
安全に関する『禁止事項』は全員共通で厳守すべきだけど、『出力形式』や『許可事項』の範囲内で個人が微調整できる余白を残しておくのがコツだよ。例えば、『回答は表形式で出して』といった表示の好みなどは、共通ルールを逸脱しない範囲で各自が追記してもOK、という柔軟な運用にしておくと、みんな不満なく使えるはず。

更新とバージョン管理

ルールファイルは一度作って終わりではありません。生成AIのモデル自体が日々アップデートされ、性能や出力の傾向が変化していくため、ルールファイルもそれに対応して進化させる必要があります。また、院内の運用規定の変更や、実際の使用で明らかになった課題を反映させるための、定期的な更新とバージョン管理が不可欠です。

LINA
LINA
ルールファイルは一度作ったらそれで完成ですか?
YUN
YUN
いや、AIのモデル自体が日々アップデートされていくから、ルールファイルもそれに合わせて進化させる必要があるんだよ。定期的な更新とバージョン管理は欠かせないね。
LINA
LINA
どうやってバージョン管理をすればいいんですか?専用のソフトが必要ですか?
YUN
YUN
テキストファイル等(メモ帳やObsidianなどのツール)を使って、ファイル名と内容に変更履歴を明記するだけで十分だよ。『RadTech_AIRules_v1.0.md』のようにして、先頭に『更新日』と『変更内容のサマリー』を書いておくといいね。

更新の頻度としては、少なくとも数ヶ月に一度、あるいは新しいAIモデルがリリースされたタイミングでの定期レビューを推奨します。変更したルールファイルは、部署内のミーティング等で「なぜこの一文を追加したのか」という背景(インシデントの未然防止など)と共に共有することで、スタッフ全体のセキュリティ意識の向上にも繋がります。過去のバージョンも破棄せずにアーカイブしておくことで、「以前の設定に戻したい」「なぜこのルールが存在するのか経緯を追いたい」という要求にすぐに応えることができます。

💡 要点整理
  • ルールファイルはAIの進化や現場の課題に合わせて定期的に見直し・更新する
  • バージョン番号と更新履歴をテキストファイル内に明記し、誰が見ても変更意図が分かるようにする
  • ルール追加の背景(インシデント事例など)をスタッフ間で共有し、全体の意識向上に繋げる

やってはいけないカスタム

ルールファイルを便利にしようとするあまり、かえってセキュリティリスクを高めたり、AIの性能を著しく低下させたりする誤ったカスタマイズをしてしまうケースが見受けられます。ここでは、現場で陥りがちな「やってはいけないカスタム」の代表例と、その危険性について警鐘を鳴らします。

LINA
LINA
もっと便利にするために、やってはいけないカスタマイズってありますか?
YUN
YUN
最も危険なのは、『患者IDや固有の症例データを学習させて、当院専用のAIに育てよう』としてしまう設定だね。一般的に利用されているクラウド型の生成AIに個人情報や機密情報を入力すると、重大な情報漏洩インシデントに直結してしまうから、絶対に避けてほしい。
LINA
LINA
出典を厳密に限定するのもダメなんですか?例えば『特定の大学の最新論文だけを引用して』みたいに。
YUN
YUN
実はそれも失敗の原因になるんだよ。指定された限られたソースの中に答えが見つからないと、AIは無理に辻褄を合わせようとして、架空の論文をでっち上げてしまう確率が跳ね上がる。だから、出典の要求は『一般的なガイドライン等に基づくこと』程度に留めておくのが一番安全だね。

さらに、「小学生にもわかるように説明して」「常にジョークを交えて」といった、業務に不適切なトーンを指定することも避けるべきです。医療情報というシビアな内容を扱う以上、出力されるテキストは常に一定の緊張感と正確性を保つ必要があります。ルールファイルはAIを「優秀な同僚」にするためのものであり、「面白い話し相手」にするためのものではないという目的意識を忘れないでください。

💡 組織運用
  • 通常のクラウド環境で、患者情報や機密データを入力・記憶させる指示は情報漏洩に直結するため厳禁
  • 出典を極端に限定する指示は、かえってAIのハルシネーション(虚偽情報の生成)を誘発する危険がある
  • 業務に不適切なトーン(過度な平易化やジョーク)の指定は、医療情報の正確性を損なうため避ける
LINA
LINA
「以前の症例の特徴を覚えておいて」と指示した方が、連続して似た調べ物をする時に便利だと思っていたんですが、それも危険な使い方なんですか?
YUN
YUN
それは危険な使い方だね。入力したデータがAIの開発企業のサーバーに送信されて、他のユーザーの回答生成に使われてしまうリスクがあるんだよ。過去の文脈を引き継ぎたい場合は、個人を特定できないように完全に匿名化・抽象化した条件だけを、その都度新しく入力するのが、医療従事者としての正しいアプローチだね。

導入30日ロードマップ

最後に、今日からルールファイルを活用し、安全かつ効果的なAI運用を定着させるための「導入30日ロードマップ」を提案します。一気に完璧なルールを作ろうとするのではなく、段階的に設定を追加し、実際の業務の中で調整を繰り返していくことが成功の鍵です。

LINA
LINA
いきなり部署全体に導入するのはハードルが高そうです。どう進めればいいですか?
YUN
YUN
一気に完璧なルールを作ろうとするのではなくて、段階的に設定を追加しながら、実際の業務の中で調整を繰り返していくのが成功の鍵だよ。まずは『導入30日ロードマップ』を試してみようか。

【第1週:ベースラインの適用】
最初の1週間は、本記事で紹介した「個人用ルールファイル(全文テンプレ)」をそのままシステム指示(カスタム指示)にコピーして使用してください。まずは毎回「専門家として振る舞って」と入力する手間が省ける快適さを体感し、同時に患者情報の入力制限など、基本的な安全網が機能していることを確認します。

【第2週:役割と許可事項の微調整】
2週目に入ったら、自身の担当業務に合わせて「許可事項」をカスタマイズします。例えば、CT業務が多い方は「アーティファクトの物理的要因に関する説明を厚くする」といった指示を追加します。

LINA
LINA
第3週と第4週で、いよいよ本格的な運用に乗せていくんですね。
YUN
YUN
そうだね。第3週は回答の『見た目』にこだわって、表形式での出力ルールなどを追加していく。そして第4週で、自分が作成してブラッシュアップしたルールファイルを同僚と共有して、部署としての共通ルールのたたき台を作っていく流れだよ。
💡 要点整理
  • 第1週は基本のテンプレートをそのまま使い、手間の削減と安全網の効果を体感する
  • 第2〜3週で自身の専門業務に合わせた「許可事項」と、手直しを減らす「出力形式」をカスタマイズする
  • 第4週で同僚とルールを共有・レビューし、部署全体の共通ルール作成へと繋げる
YUN
YUN
ルールファイルは、AIという強力なツールを医療現場で安全に乗りこなすための『手綱』のようなものだよ。まずは難しく考えずに、この記事のテンプレートをコピーして、お使いのAIの設定画面に貼り付けることから始めてみてね。それだけで、明日からのAIの回答精度と安全性はしっかり変わってくるはずだよ。
✅ まとめセルフチェックリスト
  • AI利用時の前提条件を固定化する「ルールファイル」を設定したか
  • ルール内に患者の識別子入力を禁止する条項が含まれているか
  • 確定的な診断や医学的判断をAIに行わせないよう明記しているか
  • ハルシネーションを防ぐため、架空のデータ生成を禁止しているか
  • 出力に際して一般的な出典やガイドラインの明示を求めているか
  • 個人情報や機密データを学習させようとする危険なカスタマイズをしていないか
  • 定期的にルールファイルを見直し、変更履歴を記録する体制があるか

💬 よくある質問(FAQ)

❓ Q1. ルールファイルはどの画面に入力すればいいですか?

ChatGPTの場合は設定画面の「カスタム指示(Custom Instructions)」に、Claudeの場合は「Project(プロジェクト)」のカスタムインストラクション欄に入力します。これにより、新しく対話を開始するたびに自動的にルールが適用されます。

❓ Q2. 長すぎるルールファイルはAIの動作を重くしますか?

極端に長い(数万文字など)場合は影響が出る可能性がありますが、本記事で紹介した程度の数千文字のルールであれば、動作速度に悪影響はありません。むしろ、前提条件が明確になることで回答の精度が上がり、やり直しの手間が減るため全体の効率は向上します。

❓ Q3. ルールファイルを設定しても、AIがルールを無視することがあります。

現在の生成AIは完璧ではないため、時折ルールを逸脱することがあります。その場合は、「ルール3の禁止事項に抵触しています。修正してください」と指摘することで軌道修正が可能です。また、重要な禁止事項はルールの末尾に再掲すると、AIが遵守しやすくなる傾向があります。

❓ Q4. 部署の全員で同じアカウントを使い回してルールを共有してもいいですか?

アカウントの使い回しはセキュリティ上推奨されません(規約違反になる場合も多いです)。ルールファイル自体をテキストデータとして共有フォルダ等に置き、各スタッフが個人のアカウントの設定画面にそれぞれコピーして使用する運用が正しい方法です。

❓ Q5. 無料版のAIでもルールファイルは使えますか?

はい、無料版のChatGPTなどでも「カスタム指示」機能は利用可能です。ただし、無料版のモデルは有料版の高性能モデルに比べて複雑なルールを遵守する能力がやや劣る場合があるため、出力結果により慎重な確認が必要になります。

❓ Q6. チャット以外のAIツールでも同じ考え方は使えますか?

使えます。例えば業務データの集計・自動化にAIコーディングツール「Claude Code」を使う場合も、作業フォルダに置いた「CLAUDE.md」というファイルに前提ルールを書いておくと、毎回の指示なしにそのルールが自動的に適用されます。書く内容の考え方は本記事のルールファイルと同じで、「個人が特定できるデータは扱わない」「出力前に必ず内容を人間が確認する」といった条項を先頭に固定しておくと安全です。

❓ 本日の理解度チェック
ルールファイルを設計する際、医療現場における安全性の観点から含めるべきではない(不適切な)指示はどれでしょうか?
患者を特定できる情報の入力に対して警告を出す指示
個別具体的な診断や治療方針の決定を行わない指示
回答の精度を上げるため、過去の当院の症例データを記憶させる指示
出力する医学情報には一般的な出典を併記するよう求める指示

📚 参考文献・出典

[1]医療機関における生成AI利活用ガイダンス リンク
[2]生成AIサービスの利用におけるセキュリティ対策 リンク
[3]医療情報システムの安全管理に関するガイドライン リンク
[4]OpenAI API Data Usage Policies リンク
[5]Anthropic Commercial Terms of Service リンク
ABOUT ME
ゆん
技師歴15年。副業歴5年。投資歴5年。 資格、転職・副業などのキャリア情報と、患者さん向け情報を発信しています。