辞める/我慢の二択で止まっている技師へ|第三の選択肢
CAREER · THIRD OPTION
辞める/我慢の二択で止まっている技師へ|第三の選択肢
「辞めるか、耐えるか」で頭が止まると、判断はいつも粗くなります。二択の外側にある「情報を持ったまま留まる」という三つ目の道を、統計と法令に沿って具体化します。
本文中の AI つきリンクは、その用語をGoogleのAIモードで調べ直せる入口です。知らない言葉が出てきたら、読みながらその場で補ってください。
- 「辞める/我慢」は選択肢ではなく、思考が止まったときの症状。二つしか見えていないときは、たいてい情報が足りていません。
- 第三の選択肢は「情報を持ったまま、今の場所に留まる」こと。辞表を出さずにできることが、想像よりずっと多く残っています。
- 転職の結果は賭けではない。令和6年の転職入職者のうち賃金が増えたのは40.5%、減ったのは29.4%。分布は条件の詰め方で動きます。
- 「安全が脅かされている」ケースだけは別扱い。ハラスメントAIや健康被害があるなら、情報収集より先に公的窓口へ。相談を理由にした不利益取扱いは法律で禁止されています。
- 期限を切らない様子見は、我慢と同じ。「いつまでに何を集めるか」を決めた時点で、留まることは戦略に変わります。
ここから先は、二択で止まりやすい場面を対話形式でほどいていきます。

その行ったり来たりが一番消耗するんだ。私も同じ時期があったから分かる。ただ、二つの間で悩んでいるように見えて、実は「決めるための材料がない」だけということが多い。材料が無いまま考え続けても、同じところを回るだけなんだよ。
二択で止まると、何が起きるのか
「辞める」か「我慢する」か。この二つだけを往復している状態は、意志が弱いから起きるのではありません。選択肢が二つしかないとき、人はどちらも選べなくなるという、ごく普通の反応です。どちらにも大きな損失が見えていて、しかも比較する材料がないからです。
問題は、この状態が長引くほど判断の質そのものが落ちていくことにあります。二択で消耗している間は、目の前の不満が実際より大きく見えたり、逆に「どこも同じでしょ」と諦めが強くなったりする。どちらも、情報が足りないときに起きる歪みです。
- 比較対象がないと、今の職場を正しく評価できない。不満が3つあっても、それが業界標準なのか自分の施設だけなのかが分からない。
- 「辞める」の中身が漠然としている。どこへ、いくらで、どんな働き方で、が空欄のまま「辞める」だけが選択肢になっている。
- 時間だけが確実に減る。悩んでいる期間も経歴は進むのに、そこで何を積んだかを説明できる形にはなっていない。
「すぐ辞める」と「永久に我慢する」のコスト
迷いを言葉にする段階でつまずくなら、先にチェックリストで現状を点検してから戻ってくると読みやすくなります。
二つの極端な選択には、それぞれ別の種類のコストがあります。どちらが正しいという話ではなく、コストの中身が違うということを先に把握しておくと、年収以外も含めた判断軸が立ちます。
| 観点 | すぐ辞める | ずっと我慢する | 第三の道(情報を持って留まる) |
|---|---|---|---|
| 情報量 | 比較材料が無いまま決める | 集める機会を持たない | 働きながら材料を増やせる |
| 収入 | 空白期間のリスクがある | 維持されるが変化もない | 維持したまま次を検討できる |
| 交渉力 | 切羽詰まるほど下がる | 使う機会がない | 辞めなくてよい状態が最大の交渉力 |
| 健康 | 環境次第で改善する | 消耗が蓄積しやすい | 期限を切れば消耗を管理できる |
| キャリアの説明 | 短期離職の理由を問われる | 年数はあるが中身を語りにくい | 「何をしたか」を意図的に積める |
※ 一般的な傾向を整理したもので、統計値ではありません。実際は施設の状況と個人の事情で大きく変わります。
この表のうち「交渉力」が分かりにくいところなので、対話形式で補足します。
数字で見る「転職の実際」
二択で止まっているとき、頭の中の「転職」は極端に振れがちです。うまくいけば全部解決、失敗すれば全部を失う——実際の統計はもっと穏やかな分布を示しています。厚生労働省の雇用動向調査AIは、毎年この動きを追いかけている公的な調査です。
出典:厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概要」3 転職入職者の状況。「増加」が「減少」を11.1ポイント上回っています。
読み取ってほしいのは「転職すれば上がる」でも「下がるからやめておけ」でもありません。3割は下がっているという事実と、4割は上がっているという事実が同時にあるということです。つまり結果を分けているのは運ではなく、動く前にどれだけ条件を詰められたかです。
医療・福祉は「人が動いている」分野
同じ調査で産業別の数字を見ると、医療・福祉分野の令和6年の入職率AIは14.1%、離職率AIは13.8%でした。およそ7人に1人が1年の間に入れ替わっている計算になります。つまり、あなたが今感じている迷いは、この業界ではごく一般的な出来事です。
数字の読み方に注意。この入職率・離職率は「医療,福祉」という大きな産業区分の値で、診療放射線技師だけを取り出した数字ではありません。介護職を含む幅広い職種が入っています。「業界全体で人の出入りが多い」という背景の把握までにとどめ、自分の職種の相場としては扱わないでください。
辞めた理由の上位は「人間関係」と「労働条件」
令和6年の転職入職者が前職を辞めた理由を見ると、女性では「その他の個人的理由」24.3%を除くと「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」12.8%が最も多く、次いで「職場の人間関係が好ましくなかった」11.7%となっています。男性では「定年・契約期間の満了」14.1%に次いで「給料等収入が少なかった」10.1%でした。
ここが重要なところで、上位に来ている理由は、どれも「求人票を読むだけでは分からない」項目です。給与は書いてありますが、人間関係も実際の休日の取りやすさも書いてありません。だからこそ、辞める前に情報を集める工程が要ります。
この点が実務でどう効いてくるかを、対話形式で見ていきます。
第三の選択肢の中身──辞表を出さずにできる4つ
「第三の選択肢」と言うと曖昧に聞こえますが、やることは具体的です。在職のまま、比較材料を作る作業だと考えてください。いずれも辞表とは無関係に、今日から始められます。
小さく試す──決断の前段階を作る
求人の読み方そのものに不安があるなら、技師の最終読影で読解の手順を先に確認しておくと、この工程が速く終わります。
いきなり退職・応募という大きな一歩を踏む必要はありません。取り消せる範囲の実験を挟むと、判断材料が一気に増えます。
- 在職中の情報収集で、就業規則の確認を飛ばさない。特に副業や外部での有償活動を検討する場合は、勤務先の規定が先です。公務員として勤務している場合、国家公務員法AI・地方公務員法AIで兼業AIは許可制とされています(「禁止」ではなく「許可を受けなければ従事できない」という建て付けです)。
- 現職の内部情報を持ち出さない。診療放射線技師法第29条は、業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならないと定めています。転職活動での実績説明も、患者が特定されない形にとどめます。仲介事業者を使う場合の注意点は転職サイト・エージェントの使い方にまとめています。
例外──「情報収集より先に動くべき」ケース
ここまで「急がず材料を集めよう」と書いてきましたが、そのやり方が当てはまらない状況があります。安全と健康が損なわれている場合です。この場合、情報収集は後回しで構いません。賃金の未払いや記録されない時間外労働AIのように労働基準法に関わる問題であれば、労働基準監督署AIが直接の窓口になります。
公的な相談先は無料で、相談したこと自体を理由に不利益を受けない
厚生労働省は、都道府県労働局に総合労働相談コーナーを設けています。個別労働紛争解決制度AIとして、①総合労働相談コーナーでの情報提供・相談、②都道府県労働局AI長による助言・指導、③紛争調整委員会によるあっせんAI——という3つの援助制度があり、いずれも無料・秘密厳守です。
重要な点として、厚生労働省はこう明記しています。「労働者がこれらの制度を利用したことを理由として、事業主が労働者に対して不利益な取扱いをすることは法律で禁止されています」。相談した結果として職場での立場が悪くなるのではないか、という不安が相談をためらわせますが、その取扱い自体が違法です。
対象となるのは、解雇・雇止め・労働条件の不利益変更といった労働条件に関する紛争、いじめや嫌がらせなどの職場環境に関する紛争などです。メンタル面の不調が続く場合は、同じく厚生労働省のこころの耳が働く人向けの相談窓口をまとめています。
相談をためらわせる心理について、対話形式で触れておきます。
辞めると決めた場合に知っておくこと
材料を集めた結果、辞めるという結論になることは当然あります。第三の選択肢は「辞めないこと」ではなく「情報を持って決めること」なので、それは成功した判断です。その場合に押さえておきたい基本を挙げます。
退職の申し入れ
期間の定めのない雇用について、民法第627条第1項は「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する」と定めています。
ただし実務では、就業規則で「退職AIの申し出は1か月前まで」等と定めている施設が多く、引き継ぎや人員配置の都合もあります。法律上の下限を盾に急ぐより、就業規則を確認したうえで余裕を持って伝えるほうが、結果的に円滑です。有期雇用AI契約の場合は民法第628条など別の規律が関わるため、契約書を確認してください。
労働条件は書面で確認する
提示された条件をどう詰めるかは、内定後の条件交渉術で扱っています。書面の確認と交渉は同じ場面で起きます。
労働基準法第15条第1項は、使用者に対し労働契約の締結に際して賃金・労働時間その他の労働条件を明示する義務を課しています。しかも「厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない」とされています。口頭で聞いた条件が書面に無いなら、その時点で確認するのが正当な手順です。
今週やること(4項目)
大きく動く必要はありません。以下の4つは、いずれも在職のまま、今週のうちに終わります。ここまで済ませておくと、次に迷ったときの出発点が変わります。
理解度チェック
Q1. 令和6年の雇用動向調査で、転職入職者のうち前職より賃金が「増加」した人の割合は?
Q2. 期間の定めのない雇用で、退職の申し入れから雇用が終了するまでの期間を定めているのは?
Q3. 総合労働相談コーナーなどの個別労働紛争解決制度について、正しいものは?
よくある質問
いいえ。安全と健康が損なわれている場合は例外です。ハラスメント、賃金の未払い、記録されない時間外労働、安全手順の逸脱などがあるなら、情報収集より先に公的な窓口へ相談してください。総合労働相談コーナーは無料・秘密厳守で、相談したことを理由に事業主が不利益な取扱いをすることは法律で禁止されています。この記事の「第三の道」は、安全が確保されている状況を前提にした進め方です。
不誠実ではありません。求人を読むことも面接を受けることも、労働者の自由な行動の範囲です。ただし、勤務時間中に活動しない、現職の設備や情報を使わない、患者情報を持ち出さないという線は守る必要があります。診療放射線技師法第29条は業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならないと定めており、これは在職中も退職後も変わりません。実績を説明する際は、患者が特定されない形にとどめてください。
目安は3か月です。求人の相場を掴み、経験の棚卸しを終え、必要なら1〜2件の面接を受けるには、それくらいの期間が要ります。逆に半年を超えると、当初の問題意識が薄れて「なんとなく続けている」状態に戻りやすくなります。期限が来たら、辞めるか、留まると決め直すか、期限を延ばす明確な理由を書くか、いずれかを選んでください。判断を先送りしないための仕掛けなので、カレンダーに具体的な日付で入れておくことをおすすめします。
令和6年の雇用動向調査によると、転職入職者のうち賃金が「増加」した人は40.5%、「減少」した人は29.4%、「変わらない」が28.4%でした。増加が減少を11.1ポイント上回っていますが、3割は下がっているのも事実です。重要なのは、この分布が運ではなく準備で動くということです。相場を知らずに提示額をそのまま受けると、下がる側に入りやすくなります。賃金の相場は厚生労働省の賃金構造基本統計調査AIでも確認できます。
職場の外に一人つくることをおすすめします。同期、学生時代の同級生、学会や研究会で知り合った他施設の技師などです。職場の中の人だけだと、施設の常識が業界標準かどうかを検証できません。加えて、話が広がるリスクも避けられます。適当な相手が思い当たらない場合は、公的な相談窓口を情報提供の場として使うこともできます。総合労働相談コーナーは紛争になっていない段階の相談も受け付けています。
最後に、この記事の要点を対話形式でまとめ直します。

「辞めるか我慢か」で止まっていたのは、選べなかったからじゃなくて材料が無かったからなんですね。まずは不満を条件に書き換えるところから始めてみます。期限も、今日カレンダーに入れておきます。
参考文献
厚生労働省:令和6年 雇用動向調査結果の概要(「3 転職入職者の状況」に賃金変動状況・前職を辞めた理由、「2 産業別の入職と離職」に医療,福祉の入職率・離職率)
厚生労働省:個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん)(3つの紛争解決援助制度/無料・秘密厳守/制度利用を理由とする不利益取扱いの禁止)
厚生労働省:総合労働相談コーナーのご案内(各都道府県労働局の窓口一覧)
e-Gov法令検索:民法 第627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ/申入れの日から2週間の経過による終了)
e-Gov法令検索:労働基準法 第15条(労働契約の締結に際する労働条件の明示義務)
e-Gov法令検索:診療放射線技師法 第29条(秘密を守る義務)
厚生労働省:賃金構造基本統計調査(令和7年 結果の概況)

















