2026年以降の放射線治療経営戦略 ― 「包括化」「小児」「高精度」の3大潮流を読み解く
Yun
YUN

今回は「数字」で語るよ。2026年改定の本質は「効率性の追求」だ。具体的に、従来法と新基準でどれだけ収益構造が変わるのか、そして「何をしないとどれだけ損をするのか」をシミュレーションしていこう。

【資料】2026年度改定 放射線治療関連 点数一覧

シミュレーションの前提となる、主な新設・変更点数です。

新設項目

  • NEW BNCT(ホウ素中性子捕捉療法):187,500点
  • NEW 術中照射療法加算:5,000点(M001 注8)
  • NEW 小児放射線治療加算(粒子線):7,000点(M001-4 注4)
  • NEW 放射線治療用合成吸収性材料留置術(スペーサー挿入):14,290点(K007-3)
  • NEW フュージョンイメージング加算:200点(超音波リアルタイム融合)

包括化・変更

  • CHANGE IMRT(前立腺癌):96,500点(一連につき固定)
  • CHANGE 全乳房照射:41,500点(一連につき固定)
  • CHANGE IMRT施設基準緩和:常勤医1名+遠隔支援で算定可能に
  • CHANGE 画像誘導放射線治療加算(IGRT):包括化プランでは一連点数(前立腺9,000点/乳腺2,400点)に変更

廃止・統合

  • 廃止 一回線量増加加算(包括点数に統合)
  • 統合 血流予備量比CT解析(7,800点)→ 撮影料(9,400点)に統合・廃止

1. 前立腺癌:IMRT包括評価の衝撃計算

最もインパクトが大きいのが前立腺癌のIMRTです。これまでの「39回 (約8週間)」から、推奨される「20回 (約4週間)」への移行が、病院経営に何をもたらすのか見てみましょう。

1-1. 収益・効率性比較シミュレーション

比較項目A. 従来型
(78Gy/39fr)
B. 2026推奨
(60Gy/20fr)
C. 最先端 (SBRT)
(36.25Gy/5fr)
1人あたり総点数約 120,000点
(出来高積算)
105,500点63,000点
治療期間約 8週間約 4週間 (半減)約 1週間 (激短)
リニアック占有枠 (回)39枠20枠5枠
1枠(1回)あたり収益約 3,070点約 5,275点 (1.7倍)12,600点 (4.1倍)
年間治療可能人数
(1枠固定の場合)
約 6人約 12人約 48人
年間最大生産性720,000点1,266,000点3,024,000点
Lina
LINA

ええっ!? 点数だけ見ると「12万点→10.5万点」で減ってるように見えたけど、時間あたりの生産性は1.7倍〜4倍にもなるんですか!?

Yun
YUN

そう。これが「枠の概念」だ。治療期間が半分になれば、空いた枠で次の新患を治療できる。つまり、病院全体で見れば「回転率」を上げることで、総収益は爆発的に伸びる仕組みなんだよ。

2. 乳癌:標準的治療の再定義

乳癌も同様です。これまで一般的だった「5〜6週間」の照射は、2026年以降「3週間強」が標準となります。

2-1. 乳房温存療法 収益モデル比較

比較項目従来型
(25回+Boost5回 = 30回)
HF全乳房照射
(16回・包括)
算定方式出来高積算包括評価 (41,500点)
IGRT/呼吸性移動日々の算定 (30回分)一連の加算 (2,400点×2)
1人あたり総点数約 65,000点46,300点
治療回数30回16回
1枠(1回)あたり収益約 2,160点約 2,890点 (1.34倍)
患者負担 (3割)約 19.5万円約 13.9万円 (5.6万円減)
Lina
LINA

病院の1回あたり収益が上がりつつ、患者さんの窓口負担は5万円以上も安くなるんですね! これは「Win-Win」ってやつですね!

3. 【警告】「何もしない」ことによる損失額

逆に、体制整備を怠り、古い治療を続けた場合の損失(機会損失)はどれくらいになるでしょうか。

CASE: IMRTが算定できない施設

前立腺癌患者 年間50名を、IMRT施設基準を満たせず 3D-CRT(39回)で治療した場合。

IMRT算定 (20回包括) 5,275,000点 (約5,275万円)
3D-CRT (39回出来高) 約 2,000,000点 (約2,000万円)
年間損失額 ▲ 3,275万円

※ 医師1名でも遠隔支援を受ければIMRT算定は可能です。たった1つの契約を渋るだけで、毎年3000万円以上をドブに捨てている計算になります。

4. リアルタイム収益シミュレーター

あなたの施設の「現在の患者数」と「戦略(IMRT/寡分割化率)」を入力して、2026年以降のポテンシャル収益を試算してみましょう。

🏥 放射線治療 収益シミュレーター 2026

スライダーを動かして、自施設の条件を設定してください。

前立腺癌患者数: 40
SBRT(5回)を行う割合。残りはIMRT(20回)と仮定。
乳癌患者数: 60人 (全員包括16回と仮定)
年間 推定総収益
¥0
リニアック稼働枠 節約効果
0 枠/年

※ 前立腺癌・乳癌以外の患者は平均的な通常照射(単価50万円/30回)として概算しています。

5. まとめ:病院経営層への提言

Yun
YUN

2026年から2030年にかけて、放射線部門長や経営層が打つべき手は次の3つだ。

ACTION PLAN

① システム投資の決断

包括点数に対応した医事会計システムへの更新はもちろん、「高精度・短時間照射」が可能な最新リニアックへの更新投資を急ぐこと。古い機械での長時間照射は、そのまま赤字に直結する。

② 「外来・通院」ベースへの完全移行

入院させずに通院で完結させるフローを構築する。通院治療センターの拡充、看護師によるオリエンテーション強化など、「通いやすい環境」自体が病院の競争力になる。

③ ネットワークへの接続

自院単独主義は捨てる。遠隔読影、遠隔治療計画支援、人材派遣……外部リソースをフル活用して「固定費を下げつつ、医療の質(単価)を上げる」経営への転換が必要。

Lina
LINA

「いい治療をしていれば患者さんは来る」だけじゃダメなんですね……。制度の意図を読んで、賢く変わっていくことが、結果的に患者さんのため(短期間・高精度)にもある。経営戦略って深いです!

ABOUT ME
ゆん
技師歴15年。副業歴5年。投資歴5年。 資格、転職・副業などのキャリア情報と、患者さん向け情報を発信しています。