超音波

超音波検査士認定試験1週間前のプレチェック|30問で総仕上げ

この記事でわかること

  • 試験直前に確認すべき重要ポイント30問
  • 各問題の詳しい解説
  • 間違えやすい問題の攻略法
  • 試験当日の心構え

技師歴10年以上の筆者が、試験1週間前に絶対確認してほしい問題を厳選しました。

はじめに

超音波検査士認定試験まであと1週間。

この時期は「何を勉強すればいいかわからない」「不安で落ち着かない」という声をよく聞きます。

そこで、試験直前に確認すべき重要ポイントを30問にまとめました。

この問題集の使い方:

  1. まず全問解いてみる(答えを見ずに)
  2. 間違えた問題にチェックをつける
  3. 解説をじっくり読む
  4. 間違えた問題だけもう一度解く

全問正解できたら、自信を持って試験に臨んでください!

【基礎物理編】問題1-10

💬 問題1:超音波の周波数

問題: 超音波検査で使用される周波数として、最も一般的な範囲はどれか。

a) 20Hz~20kHz
b) 100kHz~500kHz
c) 2MHz~15MHz
d) 50MHz~100MHz

💡 解答と解説を見る

解答:c) 2MHz~15MHz

解説:

人間の可聴域は20Hz~20kHzです。超音波はそれより高い周波数の音波を指します。

医用超音波検査では、2MHz~15MHzの範囲が一般的です。

  • 腹部検査:2~5MHz(深部まで届く)
  • 乳腺・甲状腺:7~12MHz(浅い部位を高解像度で)
  • 血管・表在:10~15MHz(より高解像度)

覚え方: 「深い部位は低周波数、浅い部位は高周波数」

周波数が高いほど解像度は良くなりますが、減衰も大きくなるため深部まで届きません。

💬 問題2:音速

問題: 生体内における超音波の平均音速として、超音波診断装置で設定されている値はどれか。

a) 330m/s
b) 1,000m/s
c) 1,540m/s
d) 3,000m/s

💡 解答と解説を見る

解答:c) 1,540m/s

解説:

超音波診断装置は、生体内の平均音速を1,540m/sとして距離を計算しています。

これは水に近い音速です(水中は約1,500m/s)。

参考:他の媒質での音速

  • 空気中:約330m/s
  • 骨:約3,500m/s
  • 脂肪:約1,450m/s
  • 筋肉:約1,580m/s

生体内は組織によって音速が異なりますが、装置は1,540m/sで統一して計算しています。そのため、骨や脂肪が多い部位では若干の誤差が生じます。

試験頻出: 1,540m/sは必ず覚えてください!

💬 問題3:波長の計算

問題: 周波数5MHzの超音波が生体内(音速1,540m/s)を伝播するとき、波長はおよそいくらか。

a) 0.3mm
b) 0.3cm
c) 3mm
d) 3cm

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解答:a) 0.3mm(正確には0.308mm)

解説:

波長λは、λ = 音速 ÷ 周波数で計算します。

λ = 1,540m/s ÷ 5,000,000Hz
λ = 0.000308m
λ = 0.308mm ≒ 0.3mm

計算のコツ:

1,540を1,500として概算すると簡単です。

1,500 ÷ 5,000,000 = 0.0003m = 0.3mm

覚えておくべきポイント:

  • 周波数が高い → 波長が短い → 解像度が良い
  • 周波数が低い → 波長が長い → 深部まで届く
💬 問題4:分解能

問題: 超音波ビーム方向(深さ方向)の分解能を向上させる方法として、適切なものはどれか。

a) 周波数を下げる
b) パルス幅を長くする
c) 周波数を上げる
d) ゲインを上げる

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解答:c) 周波数を上げる

解説:

距離分解能(軸方向分解能)を向上させるには:

  1. 周波数を上げる → 波長が短くなる
  2. パルス幅を短くする → 近接した反射を分離できる

距離分解能 ≒ パルス幅の半分 ≒ 波長の半分

NG選択肢の理由:

  • a) 周波数を下げる → 波長が長くなり、分解能が悪化
  • b) パルス幅を長くする → 分解能が悪化
  • d) ゲインを上げる → 分解能とは無関係(画像の明るさ)

試験のポイント: 「分解能を向上 = 周波数を上げる」は超音波の基本中の基本です。

💬 問題5:減衰

問題: 超音波の減衰に関する記述で正しいのはどれか。

a) 周波数が高いほど減衰は小さい
b) 生体内では、1cmあたり約1dB/MHzの減衰が起こる
c) 骨は軟部組織より減衰が小さい
d) 減衰は距離に関係しない

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解答:b) 生体内では、1cmあたり約1dB/MHzの減衰が起こる

解説:

生体内での超音波の減衰は、約0.5~1dB/cm/MHzです。

例:5MHzの超音波が10cm進むと
5MHz × 10cm × 1dB/cm/MHz = 50dB減衰

NG選択肢の理由:

  • a) 周波数が高いほど減衰は大きい
  • c) 骨は軟部組織より減衰が大きい
  • d) 減衰は距離に比例する

実務での応用:
深部を観察する腹部エコーでは低周波数(2~5MHz)を使い、表在の甲状腺では高周波数(10~12MHz)を使うのはこのためです。

💬 問題6:アーチファクト(多重反射)

問題: 多重反射によるアーチファクトはどれか。

a) 音響陰影
b) 後方エコー増強
c) コメットサイン(リバーベレーション)
d) サイドローブアーチファクト

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解答:c) コメットサイン(リバーベレーション)

解説:

多重反射(リバーベレーション)は、プローブと強い反射体の間で超音波が何度も往復することで発生します。

典型例:

  • 胆嚢壁とプローブ間
  • 横隔膜付近
  • コメットサイン:彗星の尾のような線状エコー

他のアーチファクト:

  • a) 音響陰影:胆石、骨などの後方が黒く抜ける
  • b) 後方エコー増強:嚢胞性病変の後方が白く見える
  • d) サイドローブ:メインビーム以外のビームによる偽像

見分け方: コメットサインは「尾を引くように深部まで続く線」です。

💬 問題7:ドプラ効果

問題: ドプラ効果に関する記述で正しいのはどれか。

a) プローブに近づく血流は周波数が低くなる
b) プローブから遠ざかる血流は周波数が高くなる
c) ドプラ角度が90度のとき、最も正確に血流速度を測定できる
d) ドプラ角度が0度のとき、最も正確に血流速度を測定できる

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解答:d) ドプラ角度が0度のとき、最も正確に血流速度を測定できる

解説:

ドプラ効果の基本:

  • プローブに近づく血流 → 周波数が高くなる(赤色表示)
  • プローブから遠ざかる血流 → 周波数が低くなる(青色表示)

ドプラ角度と測定精度:

血流速度 = ドプラ偏移周波数 ÷ (2 × 周波数 × cosθ) × 音速

cosθの値:

  • θ = 0度 → cosθ = 1(最も正確)
  • θ = 60度 → cosθ = 0.5(誤差が大きくなる)
  • θ = 90度 → cosθ = 0(測定不可能)

実務のポイント: ドプラ角度は60度以下が推奨されています。

💬 問題8:フォーカス

問題: フォーカス(焦点)に関する記述で正しいのはどれか。

a) フォーカスポイントより深部の方が、横方向の分解能が良い
b) フォーカスポイントで横方向の分解能が最も良い
c) フォーカスは距離分解能に影響する
d) フォーカスポイントを浅くすると、ビーム幅が広がる

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解答:b) フォーカスポイントで横方向の分解能が最も良い

解説:

フォーカス(焦点)は、超音波ビームが最も細くなる位置です。

  • フォーカスポイント = 横方向の分解能が最も良い位置
  • フォーカスより浅い・深い部位 = ビームが広がり、分解能が低下

実務での応用:
観察したい部位(病変など)にフォーカスを合わせることで、最も鮮明な画像が得られます。

NG選択肢の理由:

  • a) 深部はビームが広がり、分解能が悪化
  • c) フォーカスは横方向の分解能に影響(距離分解能は周波数)
  • d) フォーカスを浅くしても、ビーム幅は変わらない
💬 問題9:時間ゲイン補正(TGC)

問題: TGC(Time Gain Compensation:時間ゲイン補正)の目的として正しいのはどれか。

a) 深部の減衰を補正し、画面全体を均一な輝度にする
b) ノイズを除去する
c) 分解能を向上させる
d) フレームレートを上げる

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解答:a) 深部の減衰を補正し、画面全体を均一な輝度にする

解説:

TGC(時間ゲイン補正)は、深さによって異なるゲイン(増幅率)をかけることで、減衰による輝度低下を補正します。

なぜ必要か?
超音波は深部に行くほど減衰するため、補正しないと深部が暗く見えてしまいます。

実務での使い方:

  • 浅部のゲインを下げる
  • 深部のゲインを上げる
  • → 画面全体が均一な明るさになる

覚え方: 「TGC = 深さによってゲインを変える」

💬 問題10:フレームレート

問題: フレームレートを向上させる方法として、適切でないのはどれか。

a) 表示深度を浅くする
b) 走査線密度を減らす
c) セクタ角度を狭くする
d) フォーカスポイントの数を増やす

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解答:d) フォーカスポイントの数を増やす

解説:

フレームレートは、1秒間に何枚の画像を表示できるかを示します。

フレームレートを上げる(速くする)方法:

  • 表示深度を浅くする → 走査時間短縮
  • 走査線密度を減らす → 処理時間短縮
  • セクタ角度を狭くする → 走査範囲縮小

フレームレートを下げる(遅くする)要因:

  • フォーカスポイントを増やす → 処理時間増加
  • 表示深度を深くする
  • 走査線密度を増やす

実務のポイント: 心臓など動きの速い臓器では、フレームレートを上げて観察します。

【解剖・走査法編】問題11-20

💬 問題11:肝臓の区域

問題: 肝臓を左葉と右葉に分ける解剖学的境界はどれか。

a) 肝鎌状間膜
b) 肝静脈(中肝静脈)
c) 門脈本幹
d) Cantlie線(カントリー線)

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解答:d) Cantlie線(カントリー線)

解説:

肝臓の区分には2つの考え方があります:

1. 解剖学的区分(古い分類)

  • 肝鎌状間膜で左葉・右葉に分ける
  • 現在はあまり使われない

2. 機能的区分(Couinaud分類)

  • Cantlie線(中肝静脈とIVC)で左葉・右葉に分ける
  • 門脈支配に基づく8区域分類
  • 現在の標準

Cantlie線: 胆嚢窩とIVCを結ぶ線

試験のポイント: 「機能的区分 = Cantlie線」は頻出です。

実務での応用: 腫瘍の位置を報告する際は、Couinaud分類(S1~S8)を使います。

💬 問題12:胆嚢の走査

問題: 胆嚢を最も観察しやすい体位はどれか。

a) 仰臥位
b) 左側臥位
c) 腹臥位
d) 立位

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解答:b) 左側臥位

解説:

胆嚢の基本走査:

  1. 仰臥位 → まず基本像を描出
  2. 左側臥位 → 胆嚢が右側に移動し、観察しやすくなる
  3. 座位・立位 → 胆石が移動するか確認

なぜ左側臥位が良いか?

  • 肝臓が右側に移動し、胆嚢が助間から出てくる
  • 胃や腸のガスが移動し、観察の妨げにならない
  • 胆石が移動性を確認できる

実務のコツ:

  • 空腹時(絶食6時間以上)に行う → 胆嚢が拡張している
  • 右肋間走査と右肋弓下走査を併用
💬 問題13:腎臓の正常所見

問題: 腎臓の超音波像で正しい記述はどれか。

a) 腎実質エコーは肝実質より高エコー
b) 腎洞部は低エコー
c) 腎皮質は腎髄質より高エコー
d) 正常な腎盂は無エコー領域として描出される

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解答:c) 腎皮質は腎髄質より高エコー

解説:

正常な腎臓のエコー像:

  • 腎洞部:高エコー(脂肪組織が多い)
  • 腎皮質:中等度エコー(肝実質とほぼ同じ)
  • 腎髄質:低エコー(腎ピラミッド)
  • 腎盂:正常では描出されない(水分がないため)

エコーレベルの順:
腎洞(高)> 腎皮質(中)> 腎髄質(低)

NG選択肢の理由:

  • a) 腎実質エコーは肝実質とほぼ同じ
  • b) 腎洞部は高エコー
  • d) 正常な腎盂は描出されない(水腎症があれば無エコー領域として見える)

病的所見: 腎皮質が肝実質より高エコーになったら、腎実質障害を疑います。

💬 問題14:脾臓のサイズ

問題: 成人の正常な脾臓の頭尾長(最大径)はおよそどれか。

a) 5cm以下
b) 10cm以下
c) 12cm以下
d) 15cm以下

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解答:c) 12cm以下

解説:

正常脾臓のサイズ:

  • 頭尾長:10~12cm
  • 厚さ:3~5cm
  • 体格で脾臓のサイズは異なるが、12cmを超えたら脾腫を疑う

測定方法:
左肋間走査で脾臓の最大長径を計測

脾腫の原因:

  • 肝硬変(門脈圧亢進症)
  • 血液疾患(白血病、悪性リンパ腫など)
  • 感染症(EBウイルスなど)

実務のポイント: 「脾臓12cm以上 = 脾腫」と覚えてください。

💬 問題15:膵臓の走査

問題: 膵臓を超音波で観察する際のランドマークとして最も有用なのはどれか。

a) 下大静脈
b) 腹部大動脈
c) 脾静脈
d) 上腸間膜動脈

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解答:c) 脾静脈

解説:

膵臓走査の基本:

最重要ランドマーク = 脾静脈

  • 脾静脈は膵体部・膵尾部の背側を走行
  • 脾静脈を目印に膵臓を探す
  • 「脾静脈の上にあるのが膵臓」

その他のランドマーク:

  • 上腸間膜動脈(SMA):膵頭部と膵体部の境界
  • 腹部大動脈:脾静脈よりさらに背側
  • 下大静脈:膵頭部の右側

走査のコツ:

  1. まず腹部大動脈を描出
  2. その前方の脾静脈を探す
  3. 脾静脈の上が膵臓

実務のポイント: 膵臓は胃のガスで見えにくいことが多いので、飲水法や体位変換を活用します。

💬 問題16:甲状腺の正常所見

問題: 甲状腺の超音波像で正しいのはどれか。

a) 正常甲状腺は低エコー
b) 正常甲状腺は周囲筋より高エコー
c) 正常甲状腺の厚さは2cm以下
d) 甲状腺峡部は描出されない

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解答:b) 正常甲状腺は周囲筋より高エコー

解説:

正常甲状腺のエコー像:

  • エコーレベル:周囲筋(胸鎖乳突筋など)より高エコー
  • 内部エコー:均一
  • 被膜:薄い高エコーライン
  • 各葉の厚さ:2cm以下
  • 峡部:描出される(薄い)

エコーレベルの順:
甲状腺(高)> 周囲筋(低)

異常所見:

  • 低エコー結節 → 腫瘍や嚢胞を疑う
  • 全体的に低エコー + 粗雑 → 橋本病を疑う
  • びまん性腫大 → バセドウ病を疑う

試験のポイント: 「正常甲状腺 > 周囲筋」のエコーレベル関係は頻出です。

💬 問題17:乳腺の走査

問題: 乳腺超音波検査で推奨される走査法はどれか。

a) 放射状走査のみ
b) 同心円状走査のみ
c) 放射状走査と同心円状走査の併用
d) 横断走査のみ

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解答:c) 放射状走査と同心円状走査の併用

解説:

乳腺超音波の基本走査:

1. 放射状走査:乳頭を中心に放射状に走査

  • 乳管の走行に沿った走査
  • 病変の検出に有用

2. 同心円状走査:乳頭を中心に同心円状に走査

  • 放射状で見つけた病変の広がりを確認
  • 乳管の連続性を評価

両方を併用することで見落としを防ぐ

実務のコツ:

  • 時計の文字盤で位置を記録(3時方向、など)
  • 乳頭からの距離も記載
  • 微細石灰化にも注意
💬 問題18:下肢静脈の走査

問題: 下肢深部静脈血栓症(DVT)の超音波診断で最も重要な所見はどれか。

a) 血流速度の低下
b) 圧迫法で静脈が虚脱しない
c) 血管壁の肥厚
d) 静脈弁の逆流

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解答:b) 圧迫法で静脈が虚脱しない

解説:

DVT診断の基本:圧迫法(compression method)

正常静脈:

  • プローブで圧迫すると完全に虚脱する
  • 静脈内腔が見えなくなる

DVT(血栓あり):

  • プローブで圧迫しても虚脱しない
  • 血栓が静脈内に見える
  • 非圧縮性(non-compressible)

その他の所見:

  • 血栓エコー(低~等エコー)
  • 血流シグナルの欠損
  • 静脈の拡張

実務のポイント: 圧迫法は簡便で感度が高いため、DVT診断の第一選択です。

💬 問題19:頸動脈の走査

問題: 頸動脈超音波検査で測定するIMT(内膜中膜複合体厚)の基準値はどれか。

a) 0.5mm以下
b) 1.0mm以下
c) 1.5mm未満
d) 2.0mm未満

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解答:b) 1.0mm以下

解説:

IMT(Intima-Media Thickness)の基準:

  • 正常:1.0mm以下
  • 肥厚:1.1mm以上
  • プラーク:1.5mm以上の限局性肥厚

測定部位:
総頸動脈(CCA)の遠位壁を、長軸像で測定

IMT肥厚の意義:

  • 動脈硬化の早期マーカー
  • 心血管イベントのリスク予測

実務のコツ:

  • 拡張期に測定(内腔が最も広い時期)
  • 左右両側を測定
  • 3回測定して平均値を採用

試験頻出: 「IMT 1.0mm以下が正常」は必須知識です。

💬 問題20:心エコーの基本断面

問題: 心エコー検査で、左室長軸像を描出するアプローチはどれか。

a) 傍胸骨左縁長軸像
b) 傍胸骨左縁短軸像
c) 心尖部四腔像
d) 心窩部アプローチ

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解答:a) 傍胸骨左縁長軸像(PLAX)

解説:

心エコーの基本4断面:

1. 傍胸骨左縁長軸像(PLAX)

  • 左室の長軸を描出
  • 左室、左房、大動脈、僧帽弁を観察

2. 傍胸骨左縁短軸像(PSAX)

  • 左室を短軸(輪切り)で描出
  • 弁レベル、乳頭筋レベルなど

3. 心尖部四腔像(A4C)

  • 4つの心腔を同時に観察
  • 左室、右室、左房、右房

4. 心窩部アプローチ

  • 下大静脈、肝静脈を観察
  • 右心系の評価

試験のポイント: 各アプローチで何が見えるか、整理しておきましょう。

【疾患・異常所見編】問題21-30

💬 問題21:肝血管腫

問題: 肝血管腫の典型的な超音波所見はどれか。

a) 境界不明瞭な低エコー腫瘤
b) 境界明瞭な高エコー腫瘤
c) 内部に壊死を伴う腫瘤
d) 辺縁に低エコー帯を伴う腫瘤

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解答:b) 境界明瞭な高エコー腫瘤

解説:

肝血管腫の典型像:

  • 境界明瞭で輪郭不整
  • 高エコー(均一)
  • 後方エコー増強あり
  • 辺縁の低エコー帯なし
  • 多発することもある

鑑別診断:

  • 肝細胞癌:境界不明瞭、辺縁低エコー帯(halo)、モザイクパターン
  • 転移性肝癌:境界明瞭、低エコー、bull’s eye sign

確定診断:
造影CT、造影MRIで特徴的な染まり方(早期濃染、後期持続)

実務のポイント: 肝血管腫は良性腫瘍で、経過観察が基本です。

💬 問題22:胆石

問題: 胆石の超音波所見として正しくないのはどれか。

a) 高エコー
b) 音響陰影
c) 体位変換で移動性あり
d) 後方エコー増強

💡 解答と解説を見る

解答:d) 後方エコー増強

解説:

胆石の3徴候:

  1. 高エコー:石は音波をよく反射
  2. 音響陰影(acoustic shadow):石の後方が黒く抜ける
  3. 移動性:体位変換で重力方向に移動

NG選択肢の理由:

  • d) 胆石は音響陰影を伴う(後方エコー増強ではない)

後方エコー増強が見られるもの:

  • 嚢胞
  • 胆嚢(内部が胆汁で液体)

鑑別診断:

  • 胆嚢ポリープ:移動性なし、音響陰影なし
  • 胆嚢腺筋腫症:壁内の小嚢胞(comet-like echo)
💬 問題23:急性胆嚢炎

問題: 急性胆嚢炎の超音波所見として最も特異的なのはどれか。

a) 胆石の存在
b) 胆嚢壁の肥厚
c) Murphy’s sign陽性
d) 胆嚢の腫大

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解答:c) Murphy’s sign陽性

解説:

急性胆嚢炎の超音波所見:

1. Murphy’s sign陽性(最も特異的)

  • プローブで胆嚢を圧迫したときの疼痛
  • 患者さんが痛がって息を止める(吸気を止める)
  1. 胆嚢壁の肥厚(3mm以上)
  2. 胆嚢の腫大
  3. 胆石の存在(約90%)
  4. 胆嚢周囲の液体貯留

なぜMurphy’s signが最も特異的か?
胆嚢壁肥厚や胆嚢腫大は、他の疾患(肝硬変、心不全など)でも見られますが、Murphy’s sign陽性は急性胆嚢炎に特異的です。

実務のポイント: Murphy’s signを確認する際は、必ず患者さんに「痛いですか?」と声をかけます。

💬 問題24:脂肪肝

問題: 脂肪肝の超音波所見として正しいのはどれか。

a) 肝臓のエコーレベルが腎臓より低い
b) 肝内血管の描出が明瞭になる
c) 深部エコーの減衰が強い
d) 肝表面が不整になる

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解答:c) 深部エコーの減衰が強い

解説:

脂肪肝の超音波3徴候:

  1. Bright liver:肝臓が腎臓より高エコー
  2. 深部エコーの減衰:肝臓の深部が見えにくい
  3. 血管の不明瞭化:門脈や肝静脈の壁が不明瞭

正常との比較:

  • 正常:肝実質エコー ≒ 腎実質エコー
  • 脂肪肝:肝実質エコー > 腎実質エコー

NG選択肢の理由:

  • a) 肝臓のエコーレベルが腎臓より高い
  • b) 肝内血管の描出が不明瞭になる
  • d) 肝表面の不整は肝硬変の所見
💬 問題25:肝硬変

問題: 肝硬変の超音波所見として正しくないのはどれか。

a) 肝表面の凹凸不整
b) 肝辺縁の鈍化
c) 脾腫
d) 肝臓の腫大

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解答:d) 肝臓の腫大

解説:

肝硬変の超音波所見:

  1. 肝表面の凹凸不整(nodular surface)
  2. 肝辺縁の鈍化
  3. 肝萎縮(特に右葉)← d)が誤り
  4. 肝内エコーの粗雑化・不均一
  5. 脾腫(門脈圧亢進症)
  6. 腹水
  7. 側副血行路の発達

NG選択肢の理由:

  • d) 肝硬変では肝臓が萎縮する(腫大ではない)
  • 肝腫大が見られるのは:急性肝炎、うっ血肝など

実務のポイント: 肝硬変の診断には、複数の所見を総合的に評価します。

💬 問題26:腎結石

問題: 腎結石の超音波所見として正しいのはどれか。

a) 腎盂内の高エコー、移動性あり
b) 腎盂内の高エコー、音響陰影あり
c) 腎盂の拡張
d) 腎皮質の菲薄化

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解答:b) 腎盂内の高エコー、音響陰影あり

解説:

腎結石の超音波所見:

  • 高エコー
  • 音響陰影(acoustic shadow)
  • 移動性なし(腎盂内で固定)← a)が誤り

cf. 胆石との違い:

  • 胆石:移動性あり
  • 腎結石:移動性なし

合併症:

  • 水腎症:結石が尿管に詰まると、腎盂が拡張
  • 腎盂腎炎:感染を合併

NG選択肢の理由:

  • a) 腎結石は移動性なし
  • c) 腎盂の拡張は水腎症の所見
  • d) 腎皮質の菲薄化は慢性腎不全の所見
💬 問題27:水腎症

問題: 水腎症のgrading(重症度分類)で、腎盂・腎杯が拡張し、腎実質が軽度菲薄化している状態はどれか。

a) Grade 1
b) Grade 2
c) Grade 3
d) Grade 4

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解答:c) Grade 3

解説:

水腎症のgrading(SFU分類):

  • Grade 0:正常(腎盂拡張なし)
  • Grade 1:腎盂のみ軽度拡張
  • Grade 2:腎盂・腎杯が拡張(実質菲薄化なし)
  • Grade 3:腎盂・腎杯が拡張 + 実質の軽度菲薄化
  • Grade 4:高度拡張 + 実質の著明な菲薄化

原因:

  • 尿管結石
  • 尿管腫瘍
  • 後腹膜線維症
  • 妊娠(生理的水腎症)

実務のポイント: 水腎症を見つけたら、原因検索(CT、造影検査など)が必要です。

💬 問題28:甲状腺結節

問題: 甲状腺癌を疑う超音波所見として最も重要なのはどれか。

a) 高エコー結節
b) 嚢胞性病変
c) 微細石灰化
d) 辺縁整な結節

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解答:c) 微細石灰化(microcalcification)

解説:

甲状腺癌を疑う所見:

1. 微細石灰化(最も特異的)

  • 砂粒体(psammoma body)を反映
  • 乳頭癌に特徴的
  1. 低エコー結節
  2. 辺縁不整
  3. 前後径/横径 > 1(縦長、taller than wide)
  4. 内部血流豊富

良性を疑う所見:

  • 高エコー
  • スポンジ様(spongiform)
  • 嚢胞性
  • 辺縁整
  • 粗大石灰化

実務のポイント: 微細石灰化を見つけたら、必ず穿刺吸引細胞診(FNA)を検討します。

💬 問題29:乳癌

問題: 乳癌を疑う超音波所見として正しくないのはどれか。

a) 不整形
b) 境界不明瞭
c) 後方エコー増強
d) 微細石灰化

💡 解答と解説を見る

解答:c) 後方エコー増強

解説:

乳癌を疑う所見:

  1. 不整形(spiculated margin:棘状)
  2. 境界不明瞭
  3. 低エコー
  4. 後方エコー減弱(癌細胞が音波を吸収)← c)が誤り
  5. 縦横比 > 1(taller than wide)
  6. 微細石灰化

良性腫瘍(線維腺腫など)の所見:

  • 境界明瞭
  • 整形(楕円形)
  • 後方エコー増強または変化なし
  • 縦横比 < 1

NG選択肢の理由:

  • c) 乳癌は後方エコー減弱(増強ではない)

実務のポイント: 後方エコーの評価は、良悪性鑑別に重要です。

💬 問題30:深部静脈血栓症(DVT)

問題: 深部静脈血栓症(DVT)の好発部位として最も多いのはどれか。

a) 下腿の筋肉内静脈(ヒラメ筋静脈など)
b) 大腿静脈
c) 総腸骨静脈
d) 下大静脈

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解答:a) 下腿の筋肉内静脈(ヒラメ筋静脈など)

解説:

DVTの好発部位(頻度順):

1. 下腿の筋肉内静脈(最多)

  • ヒラメ筋静脈
  • 腓腹筋静脈
  • 遠位型DVT
  1. 膝窩静脈
  2. 大腿静脈
  3. 総腸骨静脈
  4. 下大静脈

臨床的重要性:

  • 遠位型DVT(下腿):肺塞栓のリスクは低い
  • 近位型DVT(膝窩静脈以上):肺塞栓のリスクが高い

実務のポイント: 下腿の筋肉内静脈は見落としやすいので、丁寧に圧迫法で確認します。

試験当日の心構え

1週間前にやるべきこと

✅ 知識の最終確認

  • この30問を繰り返し解く
  • 間違えた問題を重点的に復習
  • 解剖図を見直す

✅ 体調管理

  • 睡眠時間を確保(7~8時間)
  • バランスの良い食事
  • 風邪を引かないよう注意

✅ メンタルケア

  • 適度な運動でリフレッシュ
  • 過度な詰め込みは避ける
  • 「できることはやった」と自信を持つ

試験当日

持ち物チェック:

  • 受験票
  • 筆記用具(HB鉛筆、消しゴム)
  • 時計
  • 身分証明書

時間配分:

  • まず全問目を通す
  • わかる問題から解く
  • わからない問題は後回し
  • 見直しの時間を確保

メンタル:

  • 深呼吸してリラックス
  • 最後まであきらめない
  • 自分を信じる

さいごに

超音波検査士認定試験は、決して簡単な試験ではありません。

でも、ここまで勉強してきたあなたなら、必ず合格できます。

この30問で満点が取れたら、本番も大丈夫です。

試験当日は、落ち着いて、自分の力を信じて、全力を出し切ってください。

応援しています!

参考文献


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最終更新:2025年11月

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ゆん
「放射線技師ラボ」を運営する診療放射線技師のゆんです。 資格取得、転職、副業などのキャリア情報と、検査を受ける患者さん向けの安心情報を発信しています。業務効率化アプリの開発もしています。

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