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超音波

超音波検査士認定試験 健診領域 実績作成マニュアル(2025年度版)

はじめに

本マニュアルは2025年度超音波検査士認定試験(健診領域)の申請書類のうち、実績書類の作成について解説します。健診領域は他の領域と異なり、10症例の実績と正常解剖のスケッチ提出が必要です。この資料では公式手引きとWeb検索で得られた先輩合格者のアドバイスを基に、最短かつ最適な作成手順を解説します。

目次

  1. 実績提出の概要
  2. 2025年度の重要日程
  3. 提出書類リスト
  4. 撮影技術と解剖(様式3の3)の作成
  5. 超音波検査実績(様式3の2)の作成
  6. スケッチ作成のコツ
  7. よくある減点ポイントと注意事項
  8. 合格者からのアドバイス
  9. 実績書類作成スケジュール

1. 実績提出の概要

健診領域の書類審査は「撮影技術と解剖」と「超音波検査実績」の2種類から構成されます。第34回試験から大きく変更され、必要症例数は20例から10例に減りましたが、新たに成人健常者1名の対象臓器を網羅した一連の超音波画像とスケッチを提出する「撮影技術と解剖」の書類審査が加わりました。

健診領域の特徴

  • 健診領域は自覚症状のない方を対象とした検査を対象としています
  • 書類審査は(1)「撮影技術と解剖」と(2)「超音波検査実績」の2本立て
  • 必要症例数は10例のみ(他領域は20例)
  • 健診施設あるいは健診部門で健診目的で行った検査症例に限定

2. 2025年度の重要日程

2025年度の超音波検査士認定試験に関する重要日程は以下の通りです:

  • 書類様式公開: 2025年4月1日(火)
  • 書類提出期間: 2025年6月1日(日)~ 2025年7月31日(木)当日消印有効
  • 受験票発送: 2025年10月中旬予定
  • 筆記試験日: 2025年11月23日(日)
  • 合格発表: 2026年1月末予定

※日程は変更される可能性があるため、最新情報は日本超音波医学会ウェブサイトで必ず確認してください。

3. 提出書類リスト

  1. 超音波検査士認定試験申込書兼規約書
  2. 個人表
  3. 超音波検査実績(健診領域用「様式3の1」「様式3の2」「様式3の3」)
  4. 超音波検査士認定試験受験者推薦状(様式4)
  5. 超音波検査研修申告
  6. 国家試験合格証明書
  7. 顔写真2枚(縦4cm×横3cm、最近6ケ月以内、脱帽)
  8. 244円分の切手
  9. 【必要に応じて】検査学会在籍証明書
  10. 【前年度合格者のみ】受験票送付用切手基礎免除証明書

※青字の資料は日本超音波医学会公式HPからダウンロード可能(2025年4月1日以降)

4. 撮影技術と解剖(様式3の3)の作成

撮影技術と解剖の概要

  • 成人健常者1名(軽度の異常は容認)の一連の腹部超音波画像とそのスケッチ
  • 上限は30断面まで(1枚の写真で2分割画像の場合は2断面としてカウント)
  • 健診領域用「様式3の3」を使用(超音波専門医の署名は不要)

重点評価される部位

特に観察が不十分になりやすい以下の領域が明瞭に描出されているかが重視されます:

  • 肝臓:肝左葉外側区域、尾状葉、肝静脈、門脈、肝右葉横隔膜下
  • 胆嚢:胆嚢頸部、胆嚢底部
  • 胆管:肝外胆管(肝門部領域胆管)、膵内胆管(遠位胆管)
  • 膵臓:膵頭部(縦走査、横走査の2方向)、膵体部主膵管、膵尾部
  • 脾臓:脾上縁、脾下縁、脾門部
  • 腎臓(左右):腎上縁、腎下縁、中心部エコー像
  • 大動脈:左右総腸骨動脈分岐部までの長軸像

作成手順

  1. 対象者の選定:健常成人で、できるだけエコーウィンドウの良い方を選ぶ
  2. 撮影計画:上記の重点評価部位をカバーする走査断面を計画
  3. 撮影実施:各断面をくまなく観察・撮影
  4. 画像選択:20断面程度を選択(上限30断面)
  5. 様式3の3に貼付:1枚につき1断面の写真を貼付
  6. スケッチ作成:各画像に対応するスケッチを作成し、主要臓器や血管名を記載
  7. 走査法記載:各画像の走査方向を必ず記載
  8. フォーカスポイント確認:フォーカスポイントを含めて提出、オートフォーカス使用の場合はチェック欄にチェック

5. 超音波検査実績(様式3の2)の作成

必要症例数と内訳

合計10症例が必要で、以下の内訳となります:

疾患コード疾患内容内訳症例数F-1肝臓2例以上F-2胆嚢・肝外胆管2例以上F-3膵臓1例以上F-4脾臓1例以上F-5腎臓2例以上F-6乳腺・甲状腺・副甲状腺有無は問わないF-7その他(頸動脈、腹部大動脈など、リンパ節)有無は問わない

※必ず提出する疾患症例は8例、残り2例はF-1〜F-7から選択

注意点

  • 同一診断名の良性疾患(肝嚢胞、胆嚢結石など)の重複は認められません
  • 類似した超音波所見を呈する症例の重複は認められません
  • 同一患者での複数疾患の重複提出は認められません
  • F-6(乳腺)においては両側乳腺および腋窩リンパ節の状態も記載
  • F-6(甲状腺)においては甲状腺両葉の状態も記載
  • F-6(副甲状腺)においては左右上下の4腺の状態も記載
  • F-7(頸動脈)の提出上限は1例まで
  • 一般に心エコーは健診として広く行われていないため、心疾患や冠動脈疾患はF-7に含めない

作成手順

  1. 症例の選定:各疾患コードの必要数を満たす症例を選定
  2. 様式3の1の作成:超音波検査実績一覧を作成
  3. 様式3の2の作成:各症例ごとに超音波検査所見、超音波診断を記載
  4. 画像の選択と貼付:診断の根拠となる画像を選び貼付
  5. スケッチ作成:画像に対応するスケッチを作成し、解剖学的構造と所見を記載
  6. 専門医または指導検査士の署名:様式3の2には認定超音波専門医または指導検査士の署名が必要

6. スケッチ作成のコツ

基本事項

  • スケッチは手書きが必須(血管領域のみパソコンによるスケッチも可)
  • 鉛筆書きは可能
  • 無エコー部分(嚢胞や血管)は白、エコーのある部分は黒で表現

スケッチ作成のポイント

  1. 下書きから始める:まず薄く輪郭を描き、徐々に濃くしていく
  2. 主要な解剖構造を標記:全てのスケッチに主要な臓器や血管名を記載
  3. 所見の明確化:特に異常所見は丁寧に描写し、簡潔な説明を添える
  4. 空間的位置関係を表現:各構造の相対的な位置関係がわかるように
  5. 白黒のコントラスト:無エコー(血管、嚢胞等)は白く、実質臓器はドットで濃淡を表現
  6. 簡潔な説明文の追加:主要所見には端的な説明を添える

よくあるスケッチの失敗例

  • 解剖学的構造の記載漏れ
  • 所見の説明不足
  • コントラストがつけられていない
  • 位置関係が不明確
  • 文字が小さすぎて読めない

7. よくある減点ポイントと注意事項

  1. 書類不備
    • 個人情報の消去もれ(写真のID、名前などが残っている)→大きな減点対象
    • 走査方法の記載漏れ
    • フォーカスポイントの記載漏れまたはオートフォーカスチェックの漏れ
    • 専門医・指導検査士の署名もれ
  2. 記載ミス
    • 略語の使用過多(初出時に正式名称を記載し、後に略語を使用する)
    • 病名の直接記載(「胆嚢に結石を認める」は×、「胆嚢内腔に音響陰影を伴うストロングエコーを認める」が○)
    • 誤字脱字
    • 単位の間違い
  3. 画像・スケッチの問題
    • 画質不良(ゲイン、STC調整不良)
    • スケッチと画像の不一致
    • スケッチの不適切な描写(無エコー部と実質部の区別が不明確など)
    • 重要構造の記載漏れ
  4. その他
    • ミリメートル表示について、小数点以下は四捨五入して記載
    • 手書き部分(スケッチ以外)を鉛筆書きで記載(ボールペンか油性ペンを使用すること)

8. 合格者からのアドバイス

書類作成のコツ

  • 早めに準備開始:スケッチ作成に時間がかかるため、余裕をもって開始する
  • 見本をよく確認:公式の見本に忠実に従う
  • 清書前にチェック:誤字脱字や記載漏れがないか確認
  • 専門医への依頼:専門医への署名依頼は早めに行う
  • カテゴリー分類の暗記:試験対策としてカテゴリー分類の暗記は必須

勉強法

  • 腹部超音波検診判定マニュアル:カテゴリー分類を完全に覚える
  • 過去問分析:健診領域の出題傾向を把握する
  • 画像問題対策:画像から所見や疾患名を答える問題が多いため、画像慣れしておく
  • 基礎分野対策:物理が苦手な人は特に対策を

必須参考書

  1. 超音波検査士認定試験対策: 臨床編 消化器領域・健診領域 Book 1 テキスト
  2. 超音波検査士認定試験対策: 臨床編 消化器領域・健診領域 Book 2 模擬試験
  3. 腹部超音波検診判定マニュアル(2021年版)
  4. 超音波検査士・超音波指導検査士認定試験問題集(最新版)

9. 実績書類作成スケジュール

2025年度に向けた実績書類作成のタイムスケジュールは以下の通りです:

時期実施内容2025年4月1日~15日・書類様式のダウンロードと確認<br>・専門医または指導検査士への依頼<br>・撮影技術と解剖用の被験者選定2025年4月15日~5月15日・撮影技術と解剖の撮影実施<br>・10症例の選定<br>・検査実績の写真収集<br>・様式3の1(実績一覧)作成開始2025年5月15日~6月15日・撮影技術と解剖のスケッチ作成<br>・検査実績のスケッチ作成開始<br>・様式3の2(検査実績)の所見記載2025年6月15日~7月15日・全てのスケッチ完成<br>・専門医または指導検査士に署名依頼<br>・最終チェック<br>・提出書類一式の準備2025年7月15日~31日・書類提出(簡易書留またはレターパックで)

提出期限は2025年7月31日(当日消印有効)ですが、余裕をもって進めることを強くお勧めします。特に専門医の署名をもらう段階では、医師の予定に左右されるため、早めに依頼するようにしましょう。

提出前の最終チェックリスト

以下のチェックリストで最終確認を行いましょう:

書類全般

  • □ 必要書類がすべて揃っているか
  • □ 署名・捺印箇所は全て完了しているか
  • □ 個人情報(写真のID、名前等)は消去されているか
  • □ 誤字脱字はないか
  • □ 書類の向きや順番は正しいか
  • □ ページ番号は正しく記載されているか

様式3の3(撮影技術と解剖)

  • □ 走査法が全ての画像に記載されているか
  • □ フォーカスポイントが含まれているか
  • □ オートフォーカスの場合はチェックがされているか
  • □ スケッチに主要臓器・血管名が記載されているか
  • □ 必須の解剖領域(肝左葉外側区域、尾状葉、肝静脈など)は全て含まれているか

様式3の2(超音波検査実績)

  • □ 疾患コード別の必要症例数を満たしているか
  • □ 同一疾患・同一患者の重複はないか
  • □ 所見欄に病名を直接記載していないか
  • □ ミリメートル表示は小数点以下を四捨五入しているか
  • □ 超音波専門医または指導検査士の署名があるか

送付準備

  • □ 簡易書留またはレターパックで送付準備ができているか
  • □ 必要な切手は貼付しているか
  • □ 提出期限に間に合うよう余裕をもって送付するか

おわりに

超音波検査士の認定取得は難しいと言われていますが、しっかりとした準備と計画で合格は可能です。特に健診領域は他領域と比べて症例数が少なく、試験範囲も限定されているため、効率的な学習が可能です。このマニュアルを参考に、計画的に準備を進め、2025年度の合格を目指してください。