超音波検査士認定試験(健診領域)の実績書類作成において、最も時間を要し、かつ重要な部分がスケッチ作成です。本ガイドでは、2025年度試験に対応した効率的で高評価を得られるスケッチ作成の方法について、具体例とともに解説します。
目次
- スケッチ作成の基本原則
- 様式3の3(撮影技術と解剖)のスケッチ
- 様式3の2(超音波検査実績)のスケッチ
- 臓器別スケッチのコツ
- スケッチ作成の実践手順
- 合格者のスケッチ例と解説
- 2025年度におけるスケッチ作成の注意点
1. スケッチ作成の基本原則
1.1 スケッチの目的
スケッチは単なる画像のコピーではなく、以下の能力を評価するものです:
- 超音波解剖の理解度
- 描出されている構造物の認識能力
- 異常所見の認識と解釈能力
- 簡潔で的確な説明能力
1.2 スケッチ作成の基本ルール
- 手書きが必須:鉛筆書きは可能
- 無エコー部分は白く:血管、嚢胞、胆嚢内腔など
- 実質臓器はドットや線で表現:エコー強度に応じて濃淡を付ける
- 解剖学的構造物の名称を記載:主要な臓器、血管、筋肉などを明記
- 異常所見には簡潔な説明を付記:所見の特徴を端的に記載
- スケッチと画像の整合性を保つ:位置関係や大きさの比率を維持
2. 様式3の3(撮影技術と解剖)のスケッチ
2.1 必要な解剖構造の明示
健診領域の様式3の3では、特に以下の部位の解剖構造を明確に示すことが重要です:
肝臓関連
- 肝左葉外側区域と内側区域の境界
- 尾状葉
- 肝静脈(上・中・下)と分岐
- 門脈の分岐(右・左)
- 肝右葉と横隔膜の境界
胆道系
- 胆嚢頸部、体部、底部
- 肝外胆管(総肝管、総胆管)
- 膵内胆管(遠位胆管)
膵臓
- 膵頭部、体部、尾部の境界
- 膵管(主膵管が見えれば)
- 周囲の血管との関係(脾静脈、腹腔動脈など)
脾臓
- 脾上縁、下縁
- 脾門部の血管
- 横隔膜との境界
腎臓
- 腎皮質、髄質、腎盂の境界
- 腎上極、下極
- 腎門部の血管
大血管
- 腹部大動脈
- 下大静脈
- 総腸骨動脈分岐部
2.2 スケッチ記載例
肝右葉横走査の例:
↑頭側
肝右葉 横隔膜
↑
|
|
肝静脈→|←門脈枝
|
|
↓
右腎(上極)
↓尾側
膵臓横走査の例:
←頭側 尾側→
脾静脈
↓
胃→ /膵体部\ ←脾動脈
\____/
↑
主膵管
2.3 2025年度の撮影技術と解剖スケッチ作成スケジュール
期間作業内容2025年4月1日~15日・被験者選定<br>・撮影計画の立案2025年4月15日~30日・撮影の実施<br>・20~30断面の撮影<br>・画像の選定2025年5月1日~15日・スケッチの下書き<br>・主要解剖構造の確認2025年5月15日~31日・スケッチの仕上げ<br>・ラベリングの確認2025年6月1日~15日・最終チェック<br>・様式への記入(走査法等)
3. 様式3の2(超音波検査実績)のスケッチ
3.1 疾患ごとの重要ポイント
様式3の2では疾患の特徴を明確に示すスケッチが必要です。特に以下の点に注意しましょう:
F-1(肝臓)
- 脂肪肝:実質のエコーレベル上昇、減衰、肝静脈周囲の高エコー帯
- 肝嚢胞:境界明瞭な無エコー域、後方音響増強
- 血管腫:境界明瞭な低エコー腫瘤、辺縁高エコー
F-2(胆嚢・肝外胆管)
- 胆石:音響陰影を伴う高エコー像
- ポリープ:壁から突出する充実性腫瘤、血流あり
- 胆泥:重力による層形成、体位変換で移動
F-3(膵臓)
- 膵嚢胞:境界明瞭な無エコー域
- 膵管拡張:拡張した主膵管の描出
F-4(脾臓)
- 脾腫:脾臓の腫大、脾長径の増大
- 脾嚢胞:境界明瞭な無エコー域
F-5(腎臓)
- 腎嚢胞:境界明瞭な無エコー域
- 腎結石:高エコー像、音響陰影
3.2 異常所見の強調方法
- 境界線の強調:病変の境界を太めの線で描く
- コントラストの強調:病変部と正常組織のコントラストを明確に
- サイズの明記:測定値を図に記入
- 特徴的所見の矢印表示:音響陰影、後方エコー増強など
3.3 2025年度の超音波検査実績スケッチ作成スケジュール
期間作業内容2025年4月1日~30日・症例の選定<br>・各疾患コードの症例収集2025年5月1日~31日・各症例の画像選定<br>・スケッチの下書き2025年6月1日~30日・スケッチの仕上げ<br>・所見の追記<br>・専門医または指導検査士への依頼準備2025年7月1日~15日・最終チェック<br>・専門医または指導検査士の署名取得
4. 臓器別スケッチのコツ
4.1 肝臓のスケッチ
- 肝実質は細かい点(ドット)で表現
- 肝内血管(肝静脈、門脈)は白抜きで
- 肝区域の境界線を意識して描く
- 病変(腫瘤、嚢胞)は境界を明確に
4.2 胆嚢のスケッチ
- 胆嚢壁は二重線で表現
- 内腔は白抜き
- 結石は黒く塗りつぶし、音響陰影は斜線で
- ポリープは壁から突出する形で描写
4.3 膵臓のスケッチ
- 膵実質は中等度の濃さでドット表現
- 主膵管は白抜きの細い線で
- 周囲血管(脾静脈など)との位置関係を明示
- 膵頭部、体部、尾部の区別を明確に
4.4 脾臓のスケッチ
- 脾実質は均一なドットパターンで
- 脾門部の血管は白抜きで
- 境界は滑らかな曲線で
- 横隔膜との境界も明示
4.5 腎臓のスケッチ
- 皮質、髄質、腎盂の濃淡を分ける
- 腎洞は白く
- 腎嚢胞は境界明瞭な白抜き円形で
- 結石は高エコーの点として描写
5. スケッチ作成の実践手順
5.1 必要な道具
- HBまたはB鉛筆(シャープペンシル可)
- 消しゴム(細部修正用)
- 定規(直線を引く場合)
- ボールペンまたは油性ペン(スケッチ以外の記載用)
5.2 ステップバイステップ手順
- 観察と理解
- 超音波画像をよく観察し、描出されている構造を理解する
- 主要な解剖学的構造を特定する
- 異常所見の位置と特徴を把握する
- 下書き
- 画像全体の輪郭を薄く描く
- 主要構造物の位置関係を大まかに配置
- 病変がある場合はその位置を確認
- 詳細描写
- 解剖学的構造の境界線を明確に描く
- エコー強度に応じて濃淡をつける(ドットや線を使用)
- 無エコー部分(血管、嚢胞)は白く残す
- 高エコー部分は濃く表現する
- ラベリング
- 主要な解剖学的構造に名称を付ける
- 病変部には簡潔な説明を添える
- 走査方向(頭側、尾側、背側、腹側など)を明記
- 最終確認
- スケッチと元画像を比較し、一致しているか確認
- 解剖学的に重要な部分が全て記載されているか
- 異常所見が適切に描写されているか
5.3 時間配分の目安(2025年度向け)
2025年度の提出期限(7月31日)に間に合わせるための時間配分:
- 1枚のスケッチに約15-20分
- 様式3の3(約20断面):合計6-7時間 → 4月中旬から5月末までに完成
- 様式3の2(10症例×1-2枚):合計3-4時間 → 5月から6月中旬までに完成
- 修正・調整時間:2-3時間 → 6月中旬から7月上旬
- 専門医・指導検査士への依頼・署名取得:7月上旬から中旬
- 提出準備・発送:7月15日~25日
6. 合格者のスケッチ例と解説
6.1 様式3の3 スケッチ例
肝右葉横走査
[スケッチ画像例]
解説:
- 肝右葉実質を適度なドット密度で表現
- 肝静脈を白抜きで明確に描写
- 横隔膜との境界を明示
- 適切なラベリング(肝右葉、肝静脈、横隔膜など)
膵体部横走査
[スケッチ画像例]
解説:
- 膵実質の輪郭を明確に
- 主膵管を細い白線で表現
- 脾静脈との位置関係を正確に
- 周囲臓器(胃、腹部大動脈など)も記載
6.2 様式3の2 スケッチ例
肝嚢胞(F-1)
[スケッチ画像例]
解説:
- 嚢胞を境界明瞭な白抜き円で表現
- 後方エコー増強を示す斜線
- 周囲肝実質との対比が明確
- 「境界明瞭、後方エコー増強あり」と簡潔な説明
胆石症(F-2)
[スケッチ画像例]
解説:
- 胆嚢内の結石を高エコーの塗りつぶしで表現
- 音響陰影を斜線で明示
- 結石のサイズを記載
- 「音響陰影を伴うストロングエコー」と説明
7. 2025年度におけるスケッチ作成の注意点
7.1 2025年度の変更点への対応
- 公式ウェブサイトで2025年4月1日に公開される最新の様式を確認する
- フォーカスポイントの記載またはオートフォーカスのチェックを忘れずに
- 画像の個人情報(ID、氏名、生年月日)は必ず消去する
7.2 スケッチ作成の失敗例と対策
- 解剖学的構造の誤認
- 対策:解剖学の基本を再確認、不明点は参考書で確認
- 実践:解剖アトラスや教科書を常に参照する
- 濃淡表現の不足
- 対策:エコーレベルに応じたドット密度の変化をつける
- 実践:高エコーは濃く、低エコーは薄く表現
- ラベリング不足
- 対策:主要な構造物には必ず名称をつける
- 実践:チェックリストを作り、記載もれを防ぐ
- 異常所見の強調不足
- 対策:病変部は特に丁寧に描写し、特徴を明記
- 実践:矢印や説明文を添える
7.3 2025年度試験に向けた最終アドバイス
- 書類提出期間(2025年6月1日~7月31日)の中でも早めの提出を目指す
- 専門医・指導検査士の夏季休暇を考慮し、7月中旬までに署名を得る
- 提出前の最終チェックは別の日に行い、客観的な視点で確認する
- スケッチは描けば描くほど上達するので、早い段階から練習を始める
- 2024年度以前の合格者のスケッチを参考にする機会があれば積極的に学ぶ
超音波検査士認定試験のスケッチ作成は、地道な作業ですが確実に評価される重要なステップです。このガイドを参考に、効率的かつ高評価を得られるスケッチ作成に取り組んでください。「百聞は一見に如かず」、「百見は一描に如かず」です。スケッチを描くことで、超音波解剖の理解が格段に深まります。2025年度試験での合格を目指して頑張りましょう! に
- 主膵管を細い白線で表現
- 脾静脈との位置関係を正確に
- 周囲臓器(胃、腹部大動脈など)も記載
6.2 様式3の2 スケッチ例
肝嚢胞(F-1)
[スケッチ画像例]
解説:
- 嚢胞を境界明瞭な白抜き円で表現
- 後方エコー増強を示す斜線
- 周囲肝実質との対比が明確
- 「境界明瞭、後方エコー増強あり」と簡潔な説明
胆石症(F-2)
[スケッチ画像例]
解説:
- 胆嚢内の結石を高エコーの塗りつぶしで表現
- 音響陰影を斜線で明示
- 結石のサイズを記載
- 「音響陰影を伴うストロングエコー」と説明
7. よくある失敗とその対策
7.1 スケッチ作成の失敗例
- 解剖学的構造の誤認
- 対策:解剖学の基本を再確認、不明点は参考書で確認
- 実践:解剖アトラスや教科書を常に参照する
- 濃淡表現の不足
- 対策:エコーレベルに応じたドット密度の変化をつける
- 実践:高エコーは濃く、低エコーは薄く表現
- ラベリング不足
- 対策:主要な構造物には必ず名称をつける
- 実践:チェックリストを作り、記載もれを防ぐ
- 異常所見の強調不足
- 対策:病変部は特に丁寧に描写し、特徴を明記
- 実践:矢印や説明文を添える
7.2 時間短縮のコツ
- テンプレート活用
- よく使う解剖構造はテンプレート化しておく
- 走査断面ごとの基本構造を整理しておく
- 集中作業時間の確保
- まとまった時間(2-3時間)を確保して集中的に描く
- 1日に描く枚数の目標を立てる(例:3-5枚/日)
- 効率的な順序
- 同じ臓器・断面のスケッチをまとめて作成
- 様式3の3→様式3の2の順で作成すると効率的
- チェックリストの活用
- 描くべき構造物のチェックリストを事前に作成
- 完成後にチェックリストで確認
7.3 最終アドバイス
- スケッチは芸術ではなく解剖学的理解を示すもの
- 過度に複雑にせず、要点を押さえた簡潔な表現を心がける
- 試験委員は「解剖構造の理解」と「異常所見の認識」を評価している
- 合格した先輩のスケッチを参考にするのが最も効果的
- 練習を重ねることで上達するので、早めに取り組むこと
超音波検査士認定試験のスケッチ作成は、地道な作業ですが確実に評価される重要なステップです。このガイドを参考に、効率的かつ高評価を得られるスケッチ作成に取り組んでください。「百聞は一見に如かず」、「百見は一描に如かず」です。スケッチを描くことで、超音波解剖の理解が格段に深まります。合格を目指して頑張りましょう!