2026年以降の放射線治療経営戦略|包括化・寡分割時代の収益最大化シミュレーション

TL;DR(この記事の結論)

2026年度改定で寡分割照射が一連算定に移行し、回転率を上げた施設が有利になる構造に変化。前立腺がんIMRTは96,500点(一連)、乳がん全乳房照射は41,500点(一連)で固定。施設が取るべき戦略は3つ:①緩和を活用して格差を是正する、②集約化に巻き込まれない体制を作る、③声を上げて制度を動かす。記事末尾の収益シミュレーターで自施設の最適解を確認できます。

1. 改定の概要 ― 放射線治療の収益構造が変わる

2026年度診療報酬改定(本体+3.09%)は、放射線治療部門の収益構造を根本から変える内容です。最大のポイントは寡分割照射の一連算定移行IMRT施設基準の緩和の2つ。

📌 経営インパクトの大きい2つの変更

  • 寡分割照射の一連算定:前立腺がんIMRTが96,500点(一連固定)、乳がん全乳房照射が41,500点(一連固定)。出来高→固定へ
  • IMRT施設基準の緩和:人口減少地域で常勤医1名+遠隔支援により算定可能に。ただし「集約化の入り口」にもなる
ゆん ゆん
今回の改定の核心は「一連算定」への移行だ。治療回数を減らしても点数が固定されるということは、回転率を上げた施設が得をする仕組みになったということ。この構造変化を踏まえて、施設と技師がどう動くべきか ―― 今日は「経営戦略」にフォーカスして考えよう。
リナ リナ
制度の「二面性」については別の記事で詳しく分析しましたよね。今回は「じゃあ、具体的にどう動くか」の部分を深掘りするんですね!
CROSS-OVER LINK:制度の二面性を詳しく知る

IMRT施設基準緩和と寡分割照射の一連算定移行が「地方格差是正」と「集約化加速」のどちらに繋がるのか ―― 制度の二面性をXの現場声と数字で分析した記事はこちら:
IMRT・寡分割照射の見直しで「地方格差是正」か「集約化加速」か

2. 2026年度改定 放射線治療 点数一覧

経営戦略を立てるにあたり、まず新設・変更された点数を整理します。

【資料】放射線治療関連 点数一覧

シミュレーションの前提となる、主な新設・変更点数です。

新設項目

  • NEW BNCT(ホウ素中性子捕捉療法):187,500点
  • NEW 小児放射線治療加算(粒子線):7,000点(M001-4 注4)
  • NEW フュージョンイメージング加算:200点(RFA等のIVR手技で算定)

包括化・変更

  • CHANGE IMRT(前立腺癌):96,500点(一連につき固定)
  • CHANGE 全乳房照射:41,500点(一連につき固定)
  • CHANGE IMRT施設基準緩和:常勤医1名+遠隔支援で算定可能に
  • CHANGE 画像誘導放射線治療加算(IGRT):包括化プランでは一連点数(前立腺9,000点/乳腺2,400点)に変更
ゆん ゆん
注目すべきは前立腺がんIMRTの96,500点(一連)だ。従来は39回×各回の出来高で約120万円の収益だったものが、20回で約105.5万円に変わる。1件あたりの収益は減るが、回転率を上げれば年間トータルでは増収も可能という構造だ。

3. 技師・施設のリアルな選択肢

改定の二面性を理解した上で、技師と施設が取りうる現実的な戦略を3つ提示します。

戦略A:緩和を活用して格差を是正する

  • 遠隔支援ネットワークへの参加:近隣のがん拠点病院や大学病院との連携協定を締結し、IMRT算定の施設基準をクリア
  • 技師のスキルアップ:日本医学放射線学会や日本放射線技術学会の研修を活用し、治療計画立案・線量管理のスキルを強化
  • 寡分割の効率化:16回(乳がん)・20回(前立腺)の一連算定を最大限活用し、回転率を上げて症例数を確保

戦略B:集約化に巻き込まれない体制を作る

  • 拠点病院との紹介・逆紹介パスの整備:IMRT以外の治療(緩和照射、骨転移照射など)は自院で完結させ、高精度治療のみ紹介する「棲み分け」を確立
  • がん拠点要件の維持:症例数確保に向けた地域連携の強化。放射線科以外の科との院内連携も重要
  • 技師が「施設の強み」になる:治療計画の質、患者対応、安全管理で差をつけ、「あの施設の技師は信頼できる」というブランドを構築

戦略C:声を上げて制度を動かす

  • 学会・職能団体への意見発信:「人口減少地域限定」の条件撤廃を求める声を上げる。地方だけでなく、都市部の中小病院にも同じ課題がある
  • 現場の声をデータで可視化:「自施設の症例数」「遠隔支援の実態」をSNSやブログで発信し、制度設計者に現場の温度感を伝える
リナ リナ
「嘆くだけでなく、制度を使いこなす」って姿勢が大事なんですね。うちの施設でIMRT緩和が活用できるか、まず施設基準の要件と地域指定の確認から始めてみます!
ゆん ゆん
その行動力が正解だ。制度は「待っていれば恩恵が来る」ものじゃない。自分から取りに行った施設と技師だけが、改定のメリットを享受できる。読者のみなさんも、ぜひ自施設の状況を確認してほしい。

4. 収益シミュレーター ― 自施設の最適解を試算する

記事で解説した寡分割照射の一連算定移行が、実際の収益にどう影響するかを試算できるシミュレーターです。自施設の患者数を入力して確認してみてください。

⚠️ このシミュレーターは現在改良中です。算定条件は簡略化されており、参考値としてご利用ください。

🏥 放射線治療 収益シミュレーター 2026

スライダーを動かして、自施設の条件を設定してください。

200
前立腺癌患者数: 40
20
SBRT(5回)を行う割合。残りはIMRT(20回)と仮定。
10
乳癌患者数: 60人 (包括16回計算)
30
※包括点数とは別枠(出来高)で計算(5回想定)
50
2026年 改定後 推定収益
¥0
改定前 (2024) との比較
¥0
(患者構成は同一と仮定)
リニアック稼働枠 節約効果
0 枠/年

※ Boostは3,000点/回(5回)で試算。
前立腺癌・乳癌以外の患者は平均的な通常照射(単価50万円/30回)として概算しています。

5. まとめ ― 制度を使いこなす施設と技師が勝つ

✅ この記事のまとめ

2026年度改定で放射線治療の収益構造は「出来高」から「一連算定(固定)」へと大きく転換しました。前立腺がんIMRT(96,500点)・乳がん全乳房照射(41,500点)の一連算定では、回転率を上げた施設が有利になります。

施設が取るべき戦略は、①遠隔支援ネットワークを活用した格差是正、②棲み分けによる集約化回避、③学会・SNSを通じた制度への声上げ ―― の3パターン。いずれの戦略でも、技師のスキル(治療計画・線量管理・遠隔支援対応)が施設の競争力の源泉になります。

収益シミュレーターで自施設の最適解を確認しましたか?
ぜひ結果をもとに施設の戦略を検討してみてください!

参考文献

[1] 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」(2026年2月13日答申)

[2] 中央社会保険医療協議会 総会(第620回)資料 P606〜 放射線治療関連施設基準

[3] 日本放射線腫瘍学会「診療報酬改定に対する見解」(2026年2月)

ABOUT ME
ゆん
技師歴15年。副業歴5年。投資歴5年。 資格、転職・副業などのキャリア情報と、患者さん向け情報を発信しています。