OXRAY実機と放射線技師のイメージ

▲ 日立の次世代リニアック「OXRAY」

🎬 ガイアの夜明け 特集装置

O-リング型ガントリー+ジンバル機構で動く腫瘍を「先回りして追尾」する。
10分で完結する高精度がん治療の仕組みを徹底解説。

10
位置合わせ〜照射完了
1mm
回転中の追尾精度
世界
動体追尾IMRT/VMAT臨床実施
📺
「ガイアの夜明け」(テレビ東京)でOXRAYが特集

2026年2月放送の「ガイアの夜明け」で、OXRAYを導入した成田記念病院(愛知県豊橋市)が取り上げられました。がん患者への取材や医師のコメントを通じ、「次世代の放射線治療」として広く紹介されています。
▶ テレビ東京公式記事▶ 動画VOD(会員)

呼吸をするたびに、肺や肝臓の腫瘍は数センチも動く。

従来の放射線治療では、その「動き」を見越してマージン(余白)を大きく取るか、呼吸を止めながら照射するか、という選択を迫られてきた。どちらも患者の負担は大きく、正常組織への線量も課題だった。

OXRAYは、その問いに対して「装置側が腫瘍を追いかける」という答えを出した次世代リニアックだ。日立グループが開発したこの装置は、O-リング型ガントリーとジンバル機構を組み合わせ、動く腫瘍の未来位置を予測しながら、ミリメートル精度で照射を追尾する。

📋 この記事でわかること

  1. OXRAYとは何か(装置の位置づけとコンセプト)
  2. O-リングガントリーとジンバル機構の仕組み
  3. 画像誘導(IGRT)とリアルタイム動体追尾
  4. 「10分治療」の意義と患者・病院へのメリット
  5. 京都大学での世界初臨床実施(肝がん)
  6. 科学的根拠と論文エビデンス
  7. サブミリ精度の実力:定量データ
  8. OXRAY関連論文一覧(2024〜2025年)
  9. 導入時の検討事項と今後の課題
  10. SNSの反響:X(旧Twitter)での評価
  11. 研究開発の最前線と今後の展望
1. OXRAYとは何か

OXRAY(オクスレイ)は、日立製作所・日立ハイテクが開発した画像誘導型高精度X線治療装置です。正式にはリニアック(線形加速器システム)に分類され、2023年7月に国内販売が開始されました。その後、愛知県豊橋市の成田記念病院をはじめとする施設で臨床運用が始まっています。

OXRAYを特徴づける4つの技術要素は次のとおりです。

O-リング型ガントリー 従来のC字型ではなく、閉じた環状(O字型)ガントリーを採用。高剛性で多軸回転が可能。
🎯
ジンバル機構(追尾照射) 照射ヘッドがパン・チルト2軸で動き、呼吸に伴い動く腫瘍を「先回りして」追尾。
📷
直交kVイメージャ内蔵 O-リング内に2対のkVイメージャを搭載。正面・側面2方向のX線を同時取得してリアルタイム位置確認。
🔗
オールインワン・プラットフォーム ガントリー・照射ヘッド・画像誘導装置を一体化。従来機より少ないスペースで高度IGRT・追尾照射を実現。
YUN YUN

「OXRAY」ってよく聞くけど、普通のリニアックと何が違うの?名前の由来も気になる…

LINA LINA

「OXRAY」は O-ring × X-ray から来た造語みたい。最大の違いは、照射ヘッド自体がジンバルで動いて腫瘍を追いかけること。従来機が「寝台や患者の呼吸を管理して照射」するのに対して、OXRAYは「装置が動いて腫瘍に合わせる」という発想の転換なんです。

2. 技術コア:O-リング+ジンバル機構
OXRAY ジンバル機構の概念図

▲ OXRAY ジンバル機構の概念図:O-リング内で照射ヘッドがパン・チルト方向に動き、腫瘍を追尾する様子

Mechanical Precision vs Daily Objects
1円玉 (Φ 20 mm) シャーペンの芯 (直径 0.5 mm)
幾何学的精度:二軸回転照射(BROAD-RT)における isocenter deviation は最大 0.4 mm,kV-CBCT による residual setup error は 0.5 mm / 0.5° 単位に収束する。これは一般的なシャープペンシルの芯(0.5 mm)の短軸方向(直径)以下の範囲でビーム制御および位置合わせが完結していることを意味する。
2-1. O-リング型ガントリーの特徴

一般的なリニアックはC字型(C-アーム)ガントリーを採用していますが、OXRAYは高剛性のO字型リング構造を採用しています。

  • ガントリー回転に加え、土台部分のリングを水平方向に旋回させる「リング旋回」が可能
  • ガントリー回転(Y軸)×リング旋回(Z軸)の2軸回転運動照射(BROAD-RT)を実現
  • 患者寝台を動かさずに多方向・非同一平面(非共面)から連続照射が可能
  • 正常組織への線量低減とターゲットへの線量集中性の向上が期待される
🔄 OXRAYの多軸照射メカニズム
1
ガントリー回転(通常回転)

リニアック本体が360°回転。従来のリニアックと同様の動作。

2
リング旋回(水平旋回)

O-リングの土台が水平方向に回転。非同一平面の照射方向を生成。

3
ジンバル追尾(照射ヘッド)

パン・チルト2軸でMLCごと照射ヘッドが微動。腫瘍の位置に追従。

2-2. ジンバル機構による追尾照射

OXRAYのコアとなる独自技術がジンバル機構(Gimbal mechanism)です。超小型加速管と照射野成形用マルチリーフコリメータ(MLC)がジンバルに搭載されており、パン軸・チルト軸を回転させることで照射方向を変えられます。

  • 呼吸などで動く腫瘍に対して追尾照射(トラッキング照射)を実現
  • 動体ターゲットへの線量集中を維持しつつ周辺臓器の被ばく低減
  • 腫瘍の「未来位置」を予測するモデルを使い、遅延なく追尾
💡 ジンバル追尾のポイント:「先回り」する照射

リアルタイムで腫瘍を追いかけるだけでなく、呼吸モデルに基づいて腫瘍がいる「未来の位置」を予測し、照射ヘッドをあらかじめそこに向けることで、システムの遅延時間を補正します。ガイアの夜明け的に言えば、「腫瘍が向かう先に、照射を先回りさせる」装置です。

🔍 物理士Check:ビーム軸の「ステアリング」制御

OXRAYの追尾は,MLCのリーフを動かす「DMLCトラッキング」ではなく,照射ヘッド(加速管+MLC)全体をジンバルで物理的に傾ける「ビーム・ステアリング(指向制御)」です。

  • 焦点(Focus)から標的(Target)へのベクトルを直接制御: パン・チルトの2軸可動により,ビームの中心軸を最大 ±2.5° 程度スイングさせます。
  • 幾何学的メリット: ビームの主軸が常に腫瘍中心を貫くため,オフセンター移動に伴うフラットネスの崩れやペナンブラの影響を最小限に抑え,計画 Isocenter と同等の線量品質を移動標的に配信可能です。
  • 高効率配信: 寝台移動を伴わないため,患者の体感的な振動がなく,ガントリー回転(VMAT)との完全な同期走行が可能になります。
【深掘り】従来機のGating(迎撃照射)とDTT(動体追尾)の決定的な違い

汎用機にも「追尾」と名のつく機能はありますが、OXRAYが実現しているDTT(Dynamic Tumor Tracking:動体追尾)は、それらとは根本的にアプローチが異なります。

💡 用語解説:DTT(Dynamic Tumor Tracking)とは?
腫瘍が呼吸などで移動するのを装置が直接かつ連続的に追尾しながら照射する技術の略称です。「自由呼吸下での追尾照射」の標準用語としてDTT-IMRT等の形で論文に頻出します。

1. 汎用リニアックやTomoTherapyでの限界(Gating寄り)

Varian社のTrueBeamをはじめとする汎用機では、サードパーティ製システム(RPMやOSMS)を用いて動体対策を行います。しかし、これらは「特定の呼吸位相に腫瘍が来た(ゲート内に入った)タイミングだけビームをONにする」というGating(迎撃照射)や、位置修正(Triggered imaging)が中心です。
TomoTherapy(ヘリカル配信機)を含め、多くの従来機はビーム軸自体を腫瘍の動きに合わせてリアルタイムに機械的に振り向ける機能を持っていません。Gatingは「腫瘍の動きを待つ」ため、治療効率(Duty cycle)が30〜50%に低下し、治療時間が通常の2〜3倍に延長する構造的な課題があります。

2. OXRAYの優位性と「DTT-IMRT/VMAT」の世界初

ハードウェアベースのDTT自体は、前世代機のVero4DRTにおいて2013年から臨床実施(DTT-IMRT)されていました。しかし、これは「Step-and-shoot(固定多門)」のIMRTに限定され、VMAT(強度変調回転照射)には非対応でした。
OXRAYは、このGimbal機構によるDTTを、回転照射であるVMATと初めて統合させた専用機です。そのため、2024年の成田記念病院や、2025年の京都大学における「動体追尾IMRT/VMAT」の臨床実施が、真の意味での世界初の事例として報告されています。

アプローチ主なシステム仕組み課題・特徴
Gating
(迎撃・同期照射)
TrueBeam (RPM/OSMS)
TomoTherapy 等
腫瘍が「ゲート」内に入った時だけ照射(オン/オフ制御で待ち伏せ)治療時間の大幅な延長(Duty Cycle 30~50%)。ベースラインシフトによる誤差。
DTT
(動体追尾照射)
OXRAY(本機)
Vero4DRT(旧世代機)
腫瘍の動きに合わせてビーム軸(Gimbal)を物理的にスイングさせて直接追尾自由呼吸下でほぼ100%連続照射可能。OXRAYにより待望のVMAT対応が実現。
Real-time tracking error during biaxially rotational IMRT
Time during arc delivery [s] 3D tracking error [mm] +1.0 0.0 -1.0
3D Error
Tolerance (±1.0 mm)
物理評価結果:OXRAYのジンバル追尾ユニットは,ガントリーとOリングの同期回転照射(BROAD-RT)においても clinical tolerance(±1.0 mm)を逸脱することなく,安定した動体追尾精度を維持する。MoriらのMed Phys報告(2025)では,複雑な軌道下でもサブミリ精度に収束することが実証されている。
💡 医学物理学的 Q&A:サイバーナイフとの違いは?

Q:動体追尾IMRTはサイバーナイフ(CyberKnife)でも可能では?
A:はい,サイバーナイフでも Synchrony システムを用いた動体追尾照射(SBRT/IMRT)は以前から行われています。しかし,OXRAY およびその前身機(Vero4DRT)が「世界初」として注目される理由は,「ガントリー回転照射(Arc照射・VMAT)」と「高精度追尾」の完全な統合にあります。

比較項目CyberKnife (Accuray)OXRAY (Hitachi/京大)
駆動方式6軸ロボットアームOリング旋回+ジンバルヘッド
照射配信Non-coplanar 静止ビーム群VMAT (Arc) / BROAD-RT (2軸)
追尾手法ロボットアーム全体の移動ジンバルによるビーム軸偏向
IMRTの特徴Step-and-shoot的多方向照射連続的な線量変調 (VMAT連携)

医学物理上の意義は,「非常に高い線量配信効率(Arc照射)」を維持したまま,MLCごとジンバルが微細に動き,呼吸性移動をリアルタイムに相殺する点にあります。京都大学が2013年に「世界初」として報告した DTT-IMRT は,まさにこの「VMAT 等の複雑な Arc 配信と高精度ジンバル追尾の融合」を指しています。

3. 画像誘導(IGRT)と位置決め精度

OXRAYはO-リング内に直交する2対のkVイメージャ装置を内蔵しており、正面・側面2方向のX線画像を同時取得できます。

機能OXRAYの実装臨床的意義
kV X線画像(2方向同時)直交2対のkVイメージャで正面・側面同時撮影3D位置誤差をリアルタイム把握
デュアルソースCBCT2つのkVソースでコーンビームCTを高速取得位置決め所要時間の大幅短縮
照射中リアルタイム追跡照射しながらkV画像でターゲット位置を監視照射中の位置ずれを即時検知・補正
ロボティックカウチ+6軸補正リング回転+カウチで6自由度の位置補正セットアップ誤差の高精度補正
自動画像レジストレーションAIベースの自動位置合わせ再現性0.5 mm以内の位置決め

📌 ポイント肺・肝臓など呼吸性移動の大きい腫瘍では、従来は腫瘍を包む治療領域(PTV)に大きなマージンが必要でした。OXRAYのIGRT機能+追尾照射を組み合わせることで、このマージンを縮小しつつ線量集中を高める「両立」が期待されています。

Patient-specific QA: Gamma Pass Rate (3%/2mm)
Treatment Site / Patient Case 100% 95% 90% 0% Lung Liver Pancreas H&N Prostate Brain
線量再構成精度:3%/2 mm 基準(local dose)に対し,OXRAY VMATプランの patient-specific QA における Gamma pass rate は全評価症例で 95% 以上を記録。AAPM TG-218 の推奨基準(Action limit: 90%)を大幅にクリアし,装置の幾何学的・線量的整合性が高度に保たれていることを示す。
4. 「10分治療」の意義
YUN YUN

ガイアの夜明けで「10分で治療が終わる」って言ってたけど、普通はどれくらいかかるの?

LINA LINA

呼吸管理下照射(例えばABCやRPM使用の息止め照射)だと、位置合わせ〜照射完了まで30分以上かかることも珍しくないんです。OXRAYは京都大学の報告で「位置合わせから照射完了まで約10分」と示されました。患者さんの負担は大きく変わります。

😌
患者負担の軽減 息止め不要・治療台に静かに寝ているだけ。高齢者・呼吸機能低下患者にも対応しやすい。
🏥
スループット向上 1台あたりの患者数増が見込める。短時間化はそのまま病院の収益性向上につながる。
🎯
精度維持 短時間=患者の体位変化が少ない。静止状態を維持しやすく、照射精度への好循環。
🔬
少分割・高線量化への対応 SBRT/SRTで重要な「1回線量を高く、回数を少なく」するプロトコルを安全に適用しやすい。
Optimization of Patient On-table Time
Traditional DTT / Gating OXRAY (Dynamic tracking + Arc) 30 – 45 min < 10 min 0 10 20 30 40 [min]
スループット改善:従来の呼吸管理照射(Gating / Breath-hold)では,呼吸波形の安定待ちにより寝台拘束時間が 30〜45 分に及ぶことが一般的であった。OXRAY では自律的な動体追尾により,IGRT 開始から 10 分以内に終了可能。これは物理的な配信効率だけでなく,Intra-fractional motion(術中移動)のリスク低減にも直結する。
5. 京都大学での世界初臨床実施
OXRAY 導入施設の治療室

▲ OXRAYが導入された最新の治療室:患者に圧迫感を与えないO-リング構造と落ち着いた室内デザイン

2023年7月
OXRAY 国内販売開始(日立ハイテク)

日立ハイテクが第二世代Oリング型リニアック「OXRAY」として国内販売を開始。

2024年〜
成田記念病院(愛知県豊橋市)で臨床運用開始

国内初期導入施設として臨床実績を積み始める。後にガイアの夜明けで紹介。

2025年3月26日〜4月1日
🏆 世界初:京都大学附属病院で肝がん患者に動体追尾IMRT/VMAT実施

日立ハイテクとの共同開発により、呼吸に伴う腫瘍の未来位置を予測するモデルを構築。動体追尾+IMRT/VMATを組み合わせた「動体追尾強度変調回転放射線治療」を世界で初めて臨床実施。位置合わせから照射完了まで10分足らずで完了。

2025年1月
北野病院(大阪)がOXRAY導入

世界2施設目の動体追尾IMRT/VMATを実施。Dynamic Swing Arc(DSA)との組み合わせは世界初。

2025年〜
多施設での臨床試験・研究が進行中

肺がん・肝がん・膵がんに対する動体追尾IMRT/VMATおよびDynamic Swing Arcの多施設実施可能性試験が計画・進行中。

🏥 国内主要病院における最新の臨床報告(2024-2025)
施設名主な臨床的成果 / アウトカム
京都大学医学部附属病院 2025年3月:世界初の動体追尾VMAT実施例(肝がん)
位置予測モデルを統合した追尾照射により,位置合わせから完了まで10分以内という劇的な時間短縮と高精度化を実現。
北野病院 2025年11月:DSA(複合回転)と動体追尾の同時適用で世界初
呼吸移動に伴う高次な線量計算が必要な肝腫瘍に対し,良好な線量分布を維持しつつ照射時間を短縮。従来困難であった症例への適用が期待。
国立がん研究センター東病院 頭頸部(咽頭)がんへの初適用例
正常組織(舌,神経,味覚受容体など)への被ばくを最小化。手術を回避しつつ,治療後も味覚が残存するなど高いQOL維持が報告されている。
愛知県がんセンター 耳下腺(唾液腺)線量を従来の半分以下に低減
DSAによる最適軌道選択により,視神経や脳の保護だけでなく,QOLに直結する唾液腺機能の温存(口渇の改善)において顕著な dosimetric な優位性が報告。
ポイント:2024年以降,商用化に伴い「線量分布の改善」だけでなく「味覚維持」「唾液腺温存」といった患者QOLに直結する具体的なアウトカムが各施設から報告され始めています。
✅ 適応が期待される疾患

主な対象:肺がん・肝がん・膵がんなど 呼吸性移動の大きい胸腹部腫瘍

治療法:体幹部定位放射線治療(SBRT/SRT)、強度変調放射線治療(IMRT/VMAT)

正常組織への線量低減が期待できることから、高線量・少分割の治療プロトコルを安全に適用しやすくなる可能性があります。

6. 科学的根拠:論文エビデンス
Target coverage preservation by DTT (Conceptual DVH)
Relative Dose [%] Volume [%] 100% 100 OXRAY (DTT-VMAT) No tracking (Motion blurred)
線量分布への影響:呼吸性移動を伴う標的に対し,DTT を用いない場合(No tracking),標的縁辺部での線量欠損(Under-dose)が生じ DVH の shoulder が顕著に劣化する。OXRAY の動体追尾を適用した場合,計画線量分布に極めて近い急峻な DVH 特性が維持され,PTVマージンの縮小と正常組織の不要被ばく低減を物理的に両立できる。

OXRAYの科学的根拠は、「①装置本体の性能評価」と「②前世代ジンバル型リニアック(Vero4DRT)からの蓄積」の2本立てで整理できます。

①OXRAY本体の性能評価論文
中核論文 2025年
Mori et al., “Performance evaluation of a second-generation O-ring-shaped image-guided radiotherapy system with a gimbal-mounted linear accelerator and real-time tracking capabilities”
Medical Physics (2025) — DOI: 10.1002/acm2.70329 ↗

位置づけ:OXRAYを「第二世代Oリング型リニアック」として位置づけ、線量特性・動体追尾精度・画像誘導精度を総合評価した物理・工学系の中核検証論文。


主な結論:

  • 線量計算と実測の差はESTRO / AAPM国際ガイドラインの許容範囲内
  • VMATプランのガンマ解析(3%/2mm):GPR中央値 95%超(AAPM TG-218基準を満たす)
  • BROAD-RT(2軸回転照射):複雑な軌道でも 0.4 mm以内 の精度
  • 回転照射中の動体追尾精度:1 mm以内を維持
  • 自動画像レジストレーションによる位置決め:0.5 mm・0.5°以内で再現可能
②前世代機(Vero4DRT)の蓄積エビデンス
QA・物理研究
Miura H et al., “Simple quality assurance method of dynamic tumor tracking with the gimbaled linac system using a light field”
J Appl Clin Med Phys 17(5) (2016) — DOI: 10.1120/jacmp.v17i5.6376 ↗

Vero4DRTのジンバル機構を対象に動体追尾QA法を提案。光照射野(30×30 mm²、ガントリー90°)を用いた簡便なQA法で追尾精度を評価し有用と報告(PMID: 27685142)。追尾誤差は呼吸周期に依存するが、標準的な周期では臨床的に実用可能な精度を実証。OXRAYにも同原理のジンバルQAが引き継がれている。

※ 記事内「Komori et al.」と表記されることがあるが、正確な筆頭著者は Miura H(広島高精度放射線治療がんセンター)
膵がん臨床
Goto Y, Ashida R, Nakamura A et al., “Clinical results of dynamic tumor tracking intensity-modulated radiotherapy with real-time monitoring for pancreatic cancers using a gimbal mounted linac”
Oncotarget 9(34):23628–23635 (2018) — DOI: 10.18632/oncotarget.25310 ↗

局所進行膵がん11例へのDTT-IMRT(Vero4DRT使用、中央線量48 Gy/15分割)を評価。2年全生存率48.0%、MST 23.6か月、重篤な晩期GI毒性1例のみ。リアルタイム動体監視+ジンバル追尾により良好な局所制御・低毒性で臨床的に実行可能と結論。OXRAYにおける膵がん追尾IMRTの直接的エビデンス基盤となっている。

※ 筆頭著者はGoto Y(京都大学)。Nakamuraは中著者(Akira Nakamura、Mitsuhiro Nakamura)。記事中「Nakamura et al.」表記は慣習的略称。
LINA LINA

記事で科学的根拠を示すなら、「OXRAYは国際ガイドラインの物理精度基準を満たし、回転中でも1 mm以内の追尾精度・0.5 mm以内の位置決め精度が性能評価論文(Moriら 2025年)で確認されている」と書けます。ジンバル追尾の臨床有効性は、前世代機での膵がん・肺がん研究で「低毒性・実行可能」として実証済みです。

7. サブミリ精度の実力:定量データで見るOXRAY

「精度が高い」という言葉は多くの装置で謳われますが、OXRAYの精度は論文に裏付けられた具体的な数値で示されています。以下は性能評価論文(Moriら、Med Phys 2025)および関連研究から得られた定量データです。

0.4mm
BROAD-RT
ビーム位置精度
(複雑な2軸回転軌道)
Mori et al., JACMP (2025)
<1mm
回転照射中
動体追尾精度
(ジンバル+Oリング)
Mori et al., JACMP (2025)
0.5mm
kV-CBCT
画像誘導位置決め精度
(0.5°以内)
Mori et al., JACMP (2025)
>95%
VMATプランGPR
(3%/2mm gamma)
AAPM TG-218基準適合
Mori et al., JACMP (2025)
0.54mm
マーカーレス追尾
平均中心位置誤差
(dual-panel kV)
画像ベース追尾アルゴリズム研究
1–2mm
Vero4DRT実臨床
追尾誤差範囲
(標準呼吸周期4-8秒)
Miura H et al. (JACMP 2016), 肝腫瘍GTT報告
Residual setup errors after kV-CBCT auto-registration
+ΔX / AP [mm] +ΔY / SI [mm] 0.5 mm tolerance 0 Center: Planning Isocenter
IGRT精度:kVイメージャによるCBCT自動レジストレーションにおいて,平行移動 3 軸の残差誤差は 0.5 mm 以内にクラスタリングされる。これは定位放射線治療(SBRT)に求められる高精度なサブミリ位置合わせが,自律制御レベルで達成されていることを示唆する。
EMI EMI

えっ、0.4mmって…人間の髪の毛より細いですよね…?そんな精度で動きながら照射できるの、すごすぎます……

LINA LINA

エミちゃんの驚きは正しいよ! 人の髪の毛が約0.06〜0.1mmだから、0.4mmは太い髪の毛4本分くらい。それを回転しながらリアルタイムで維持するのが凄いポイントなの。しかも呼吸で動く腫瘍を追いながら、ね。

YUN YUN

ちなみに呼吸周期が短い(2秒以下)と追尾誤差が増えることも論文で示されているよ。標準的な呼吸(4〜8秒周期)では1〜2mm以内に収まる。だから「呼吸が穏やかな患者ほど恩恵が大きい」という側面もある、実臨床ではそこも考慮が必要だね。

8. OXRAY関連論文一覧(2024〜2025年)

OXRAYに関する学術論文は2024〜2025年に集中して発表されています。主な論文を以下にまとめます。

論文タイトル / 著者・年分類主な結果・結論
OXRAY性能評価
Performance evaluation of a second-generation O-ring-shaped IGRT system with gimbal-mounted linac
Kawata et al. / Mori et al., J Appl Clin Med Phys (2025) — DOI ↗
物理評価 ビーム品質は臨床基準適合、線量配信誤差1%以内。BROAD-RT軌道で0.4 mm以内のビーム位置精度。動体追尾誤差1 mm以内(回転中)。CBCT位置決め0.5 mm・0.5°以内。GPR中央値95%超(AAPM TG-218適合)。
BROAD-RT
Determination of patient-specific trajectory for biaxially rotational dynamic-radiation therapy (BROAD-RT)
Hirashima et al., Phys Imaging Radiat Oncol (2025) — DOI ↗
軌道最適化 Dijkstraアルゴリズムで膵臓がん10例の最適軌道を自動抽出。MCS_v(変調複雑度スコア):coplanar 0.3±0.0 vs BROAD-RT 0.4±0.1(p=5×10⁻⁴)。BROAD-RTで胃・十二指腸の中間線量を有意に低減。商業TPS(RayStation)での実装を実証。
BROAD-RT
Integration test of BROAD-RT for nasopharyngeal carcinoma: Efficacy and dosimetric analysis
Hiraoka et al., Radiother Oncol (2025) — DOI ↗
鼻咽頭がん 鼻咽頭がん対象の統合テスト全例合格。GPR(3%/2mm)平均>95%。配信時間中央値209秒(約3.5分)。BROAD-RTが従来VMATより脳幹・耳下腺・口腔Dmean有意に低減(p<0.05)。
Dynamic Swing Arc
Dosimetric Comparison of Noncoplanar VMAT with Dynamic Swing Arc for Head and Neck Cancer
Hirotaki et al., Adv Radiat Oncol (2025) — DOI ↗
頭頸部がん 初のDSA報告。PTVカバレッジを維持しつつ耳下腺Dmeanを低減(口腔も低減傾向)。患者寝台回転ゼロで非共面照射を実現。配信時間は増加(要検討)。DSAは頭頸部がん治療の線量分布改善に有望。
前立腺がん
Dosimetric evaluation of BROAD-RT and swing-fixed non-coplanar VMAT in prostate cancer
Tomizawa et al., J Radiat Res (2025) — Google Scholar ↗
前立腺がん BROAD-RTが従来非共面VMATと比較して直腸・膀胱線量を有意に低減。2軸回転機能が前立腺がんの正常組織保護に有効。臨床実装の可能性を示す。
Vero4DRT基礎研究
Dosimetric and robustness evaluation of BROAD-RT with robust optimization(頭頸部がん)
Radiother Oncol (2025) — Google Scholar ↗
ロバスト性評価 頭頸部がん10例でRobust-BROAD-RT vs Robust-VMAT比較。対側耳下腺Dmean15.4±4.3 Gy vs 23.5±2.5 Gy(p<0.001)、口腔:3.03 Gy低減(p=0.002)。3mmセットアップ誤差下でも利益維持。CTV劣化なし。
9. 導入時の検討事項と今後の課題

OXRAYは革新的な装置ですが,高精度照射を実現するための「トレードオフ」として,導入・運用時に考慮すべき課題も存在します。医学物理士や技師,経営層が知っておくべきポイントを整理します。

📐
物理・技術面の制約

フィールドサイズの限界:最大20×20 cmとなっており,広範囲のターゲット(一部の進行頭頸部がんや広範な転移症例)ではPTV全体を1門でカバーしきれないケースがあります。
空間的制約:Oリング型ガントリーの構造上,内径(ボア)に限りがあり,「両腕を頭上に挙げる」等の大きなポジショニングがリングと干渉し制限されるリスクがあります。

⏱️
運用・効率面の課題

配信時間の延長:BROAD-RT(2軸回転)やDSAモードでの照射は,高品質な線量分布を実現する一方,標準的なVMATよりも1門あたりの照射時間が長くなる(例:200秒超)傾向があります。スループット向上のためには症例選定が鍵となります。

💰
経営・コスト面のハードル

初期・保守コスト:国産リニアックの復活という意義は大きいものの,装置価格は数億円規模の投資が必要です。また,最新の技術を支えるための物理士・技師の高度なトレーニングコストや,RayStation等の周辺システムとの密な連携コストも考慮する必要があります。

💡 現場スタッフへのアドバイス

OXRAYは「万能リニアック」ではなく,「動く標的」や「複雑な正常組織保護」に特化したスペシャリストな装置として捉えるのが正解です。特に,味覚を維持したい頭頸部がん患者や,息止めが困難な高齢の肝がん患者など,高いQOLが求められる症例において圧倒的な付加価値を発揮します。

📝 論文を読む際のポイント2024〜2025年のOXRAY関連論文は主に「計画・物理評価研究」が中心で、患者長期アウトカム(生存率・QOL)の報告はこれからです。京都大学での臨床実施を起点に、今後は多施設での前向き試験・臨床研究が蓄積されていく段階です。

10. SNSの反響:X(旧Twitter)での評価

「ガイアの夜明け」放送(2026年2月)後、OXRAYに関するXポストが急増した。医療従事者・研究者のみならず一般視聴者からも広く言及され、医療機器としては異例の社会的注目を集めた。代表的な投稿を以下に掲載する。

日立ハイテク
@Hitachi_ht_jp
OXRAYのポイントをご紹介します。①多方向ピンポイント照射、②照射時間短縮(約10分)、③動体追尾機能、④幅広い疾患対応(90%以上)、⑤ART機能——これらにより患者さんの身体的・精神的負担を軽減します。

hitachi-hightech.com/jp/ja/…/oxray
2026年1月7日 · 18:00 JST
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73
638
北野病院
@kitano_koho
先日、当院放射線治療センターに放射線治療機器(リニアック)「OXRAY(オクスレイ)」を新たに導入し、同機器による放射線治療を開始しました!
2025年1月22日 · 17:10 JST
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なすゆうや🫠💙
@DSLR_yuya
国産の高精度放射線治療装置OXRAY。がんにピンポイントで照射できる。
2026年2月27日 · 22:10 JST
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反響の規模:日立ハイテク公式ポストは約88,000 impressions・638いいね・73リポストを記録(2026年1月7日時点)。「ガイアの夜明け」放送直後(2026年2月27日)は一般視聴者投稿が集中した。「国産装置の復活」「副作用軽減・短時間治療」を評価する声が多く、OXRAYへの社会的認知度の高さを示す。

11. 研究開発の最前線と今後の展望

OXRAYは、日立グループが長年培ってきた照射技術(加速管・MLC・ガントリー機構)と画像技術(X線イメージャ・CBCT)を統合した「次世代プラットフォーム」として位置づけられています。現在も多数の臨床・物理研究が進行中です。

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AI動体予測モデルの高度化 機械学習を使った呼吸モデルにより、腫瘍の未来位置予測精度をさらに向上。個別化されたモデル構築が研究される。
自動位置決め・照射計画の最適化 セットアップから照射計画・QA・照射まで自動化の流れ。患者スループット向上と精度の両立へ。
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他モダリティとの連携 PET・4D-CTとの統合により、機能的画像に基づいたブースト照射など「個別化放射線治療」の基盤に。
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多施設展開と適応疾患の拡大 肺・肝・膵を中心に、新たな疾患や複雑な照射軌道(Dynamic Swing Arc等)への適応拡大が進む。
🗺️ OXRAYが目指す放射線治療の将来像

OXRAYが示すのは、「装置側が患者の動きに適応する」という新しいパラダイムです。従来の「患者が装置に合わせる(息止め・体位固定)」から、「装置が患者に合わせる」へのシフトは、高齢者・呼吸機能低下患者への治療適応を広げるとともに、より多くの患者が高精度・短時間の治療を受けられる社会につながります。

「ガイアの夜明け」が伝えた通り、OXRAYは日本の放射線治療技術の最前線に立つ装置であり、私たち放射線技師にとっても、その技術・物理基盤を深く理解することが今後ますます重要になるでしょう。

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参考情報・出典

  • 日立ハイテク OXRAY製品ページ(hitachi-hightech.com)
  • 日立ハイテク ニュースリリース「OXRAY初号機が成田記念病院で治療開始」(2024年7月9日)(hitachi-hightech.com)
  • テレビ東京「ガイアの夜明け」特集記事(2026年2月)
  • 京都大学医学部附属病院プレスリリース「世界初!OXRAY®による動体追尾強度変調回転放射線治療の臨床実施」(2025年4月2日)(kuhp.kyoto-u.ac.jp)
  • 北野病院 ニュース「高精度放射線治療機器『OXRAY』による新たな放射線療法を世界で初めて実施」(2025年11月25日)(kitano-hp.or.jp)
  • Kawata et al. / Mori et al., J Appl Clin Med Phys (2025) — DOI: 10.1002/acm2.70329 ↗
  • Hirashima et al. – BROAD-RT軌道最適化 — DOI ↗
  • Hiraoka et al. – 鼻咽頭がんBROAD-RT統合テスト — DOI ↗
  • Hirotaki et al. – Dynamic Swing Arc・頭頸部がん — DOI ↗
  • Tomizawa et al. – 前立腺がんBROAD-RT線量評価 (2025)
  • Goto Y, Ashida R, Nakamura A et al., Oncotarget 9(34):23628–23635 (2018) — DOI: 10.18632/oncotarget.25310 ↗
  • Miura H et al., J Appl Clin Med Phys 17(5) (2016) — DOI: 10.1120/jacmp.v17i5.6376 ↗
  • X(Twitter)ポスト:@Hitachi_ht_jp, @kitano_koho 他(2025〜2026年)

※本記事は公開情報・論文・プレスリリースをもとに作成した解説記事です。臨床的判断は必ず専門医にご確認ください。

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ゆん
技師歴15年。副業歴5年。投資歴5年。 資格、転職・副業などのキャリア情報と、患者さん向け情報を発信しています。