【OXRAY】日立の次世代リニアック|O-リング+ジンバル追尾で「10分がん治療」を実現する放射線治療装置


▲ 日立の次世代リニアック「OXRAY」
O-リング型ガントリー+ジンバル機構で動く腫瘍を「先回りして追尾」する。
10分で完結する高精度がん治療の仕組みを徹底解説。
呼吸をするたびに、肺や肝臓の腫瘍は数センチも動く。
従来の放射線治療では、その「動き」を見越してマージン(余白)を大きく取るか、呼吸を止めながら照射するか、という選択を迫られてきた。どちらも患者の負担は大きく、正常組織への線量も課題だった。
OXRAYは、その問いに対して「装置側が腫瘍を追いかける」という答えを出した次世代リニアックだ。日立グループが開発したこの装置は、O-リング型ガントリーとジンバル機構を組み合わせ、動く腫瘍の未来位置を予測しながら、ミリメートル精度で照射を追尾する。
📋 この記事でわかること
- OXRAYとは何か(装置の位置づけとコンセプト)
- O-リングガントリーとジンバル機構の仕組み
- 画像誘導(IGRT)とリアルタイム動体追尾
- 「10分治療」の意義と患者・病院へのメリット
- 京都大学での世界初臨床実施(肝がん)
- 科学的根拠と論文エビデンス
- サブミリ精度の実力:定量データ
- OXRAY関連論文一覧(2024〜2025年)
- 導入時の検討事項と今後の課題
- SNSの反響:X(旧Twitter)での評価
- 研究開発の最前線と今後の展望
OXRAY(オクスレイ)は、日立製作所・日立ハイテクが開発した画像誘導型高精度X線治療装置です。正式にはリニアック(線形加速器システム)に分類され、2023年7月に国内販売が開始されました。その後、愛知県豊橋市の成田記念病院をはじめとする施設で臨床運用が始まっています。
OXRAYを特徴づける4つの技術要素は次のとおりです。
「OXRAY」ってよく聞くけど、普通のリニアックと何が違うの?名前の由来も気になる…
「OXRAY」は O-ring × X-ray から来た造語みたい。最大の違いは、照射ヘッド自体がジンバルで動いて腫瘍を追いかけること。従来機が「寝台や患者の呼吸を管理して照射」するのに対して、OXRAYは「装置が動いて腫瘍に合わせる」という発想の転換なんです。

▲ OXRAY ジンバル機構の概念図:O-リング内で照射ヘッドがパン・チルト方向に動き、腫瘍を追尾する様子
一般的なリニアックはC字型(C-アーム)ガントリーを採用していますが、OXRAYは高剛性のO字型リング構造を採用しています。
- ガントリー回転に加え、土台部分のリングを水平方向に旋回させる「リング旋回」が可能
- ガントリー回転(Y軸)×リング旋回(Z軸)の2軸回転運動照射(BROAD-RT)を実現
- 患者寝台を動かさずに多方向・非同一平面(非共面)から連続照射が可能
- 正常組織への線量低減とターゲットへの線量集中性の向上が期待される
リニアック本体が360°回転。従来のリニアックと同様の動作。
O-リングの土台が水平方向に回転。非同一平面の照射方向を生成。
パン・チルト2軸でMLCごと照射ヘッドが微動。腫瘍の位置に追従。
OXRAYのコアとなる独自技術がジンバル機構(Gimbal mechanism)です。超小型加速管と照射野成形用マルチリーフコリメータ(MLC)がジンバルに搭載されており、パン軸・チルト軸を回転させることで照射方向を変えられます。
- 呼吸などで動く腫瘍に対して追尾照射(トラッキング照射)を実現
- 動体ターゲットへの線量集中を維持しつつ周辺臓器の被ばく低減
- 腫瘍の「未来位置」を予測するモデルを使い、遅延なく追尾
リアルタイムで腫瘍を追いかけるだけでなく、呼吸モデルに基づいて腫瘍がいる「未来の位置」を予測し、照射ヘッドをあらかじめそこに向けることで、システムの遅延時間を補正します。ガイアの夜明け的に言えば、「腫瘍が向かう先に、照射を先回りさせる」装置です。
OXRAYの追尾は,MLCのリーフを動かす「DMLCトラッキング」ではなく,照射ヘッド(加速管+MLC)全体をジンバルで物理的に傾ける「ビーム・ステアリング(指向制御)」です。
- 焦点(Focus)から標的(Target)へのベクトルを直接制御: パン・チルトの2軸可動により,ビームの中心軸を最大 ±2.5° 程度スイングさせます。
- 幾何学的メリット: ビームの主軸が常に腫瘍中心を貫くため,オフセンター移動に伴うフラットネスの崩れやペナンブラの影響を最小限に抑え,計画 Isocenter と同等の線量品質を移動標的に配信可能です。
- 高効率配信: 寝台移動を伴わないため,患者の体感的な振動がなく,ガントリー回転(VMAT)との完全な同期走行が可能になります。
汎用機にも「追尾」と名のつく機能はありますが、OXRAYが実現しているDTT(Dynamic Tumor Tracking:動体追尾)は、それらとは根本的にアプローチが異なります。
💡 用語解説:DTT(Dynamic Tumor Tracking)とは?
腫瘍が呼吸などで移動するのを装置が直接かつ連続的に追尾しながら照射する技術の略称です。「自由呼吸下での追尾照射」の標準用語としてDTT-IMRT等の形で論文に頻出します。
Varian社のTrueBeamをはじめとする汎用機では、サードパーティ製システム(RPMやOSMS)を用いて動体対策を行います。しかし、これらは「特定の呼吸位相に腫瘍が来た(ゲート内に入った)タイミングだけビームをONにする」というGating(迎撃照射)や、位置修正(Triggered
imaging)が中心です。
TomoTherapy(ヘリカル配信機)を含め、多くの従来機はビーム軸自体を腫瘍の動きに合わせてリアルタイムに機械的に振り向ける機能を持っていません。Gatingは「腫瘍の動きを待つ」ため、治療効率(Duty
cycle)が30〜50%に低下し、治療時間が通常の2〜3倍に延長する構造的な課題があります。
ハードウェアベースのDTT自体は、前世代機のVero4DRTにおいて2013年から臨床実施(DTT-IMRT)されていました。しかし、これは「Step-and-shoot(固定多門)」のIMRTに限定され、VMAT(強度変調回転照射)には非対応でした。
OXRAYは、このGimbal機構によるDTTを、回転照射であるVMATと初めて統合させた専用機です。そのため、2024年の成田記念病院や、2025年の京都大学における「動体追尾IMRT/VMAT」の臨床実施が、真の意味での世界初の事例として報告されています。
| アプローチ | 主なシステム | 仕組み | 課題・特徴 |
|---|---|---|---|
| Gating (迎撃・同期照射) | TrueBeam (RPM/OSMS) TomoTherapy 等 | 腫瘍が「ゲート」内に入った時だけ照射(オン/オフ制御で待ち伏せ) | 治療時間の大幅な延長(Duty Cycle 30~50%)。ベースラインシフトによる誤差。 |
| DTT (動体追尾照射) | OXRAY(本機) Vero4DRT(旧世代機) | 腫瘍の動きに合わせてビーム軸(Gimbal)を物理的にスイングさせて直接追尾 | 自由呼吸下でほぼ100%連続照射可能。OXRAYにより待望のVMAT対応が実現。 |
Q:動体追尾IMRTはサイバーナイフ(CyberKnife)でも可能では?
A:はい,サイバーナイフでも Synchrony システムを用いた動体追尾照射(SBRT/IMRT)は以前から行われています。しかし,OXRAY
およびその前身機(Vero4DRT)が「世界初」として注目される理由は,「ガントリー回転照射(Arc照射・VMAT)」と「高精度追尾」の完全な統合にあります。
| 比較項目 | CyberKnife (Accuray) | OXRAY (Hitachi/京大) |
|---|---|---|
| 駆動方式 | 6軸ロボットアーム | Oリング旋回+ジンバルヘッド |
| 照射配信 | Non-coplanar 静止ビーム群 | VMAT (Arc) / BROAD-RT (2軸) |
| 追尾手法 | ロボットアーム全体の移動 | ジンバルによるビーム軸偏向 |
| IMRTの特徴 | Step-and-shoot的多方向照射 | 連続的な線量変調 (VMAT連携) |
医学物理上の意義は,「非常に高い線量配信効率(Arc照射)」を維持したまま,MLCごとジンバルが微細に動き,呼吸性移動をリアルタイムに相殺する点にあります。京都大学が2013年に「世界初」として報告した DTT-IMRT は,まさにこの「VMAT 等の複雑な Arc 配信と高精度ジンバル追尾の融合」を指しています。
OXRAYはO-リング内に直交する2対のkVイメージャ装置を内蔵しており、正面・側面2方向のX線画像を同時取得できます。
| 機能 | OXRAYの実装 | 臨床的意義 |
|---|---|---|
| kV X線画像(2方向同時) | 直交2対のkVイメージャで正面・側面同時撮影 | 3D位置誤差をリアルタイム把握 |
| デュアルソースCBCT | 2つのkVソースでコーンビームCTを高速取得 | 位置決め所要時間の大幅短縮 |
| 照射中リアルタイム追跡 | 照射しながらkV画像でターゲット位置を監視 | 照射中の位置ずれを即時検知・補正 |
| ロボティックカウチ+6軸補正 | リング回転+カウチで6自由度の位置補正 | セットアップ誤差の高精度補正 |
| 自動画像レジストレーション | AIベースの自動位置合わせ | 再現性0.5 mm以内の位置決め |
📌 ポイント肺・肝臓など呼吸性移動の大きい腫瘍では、従来は腫瘍を包む治療領域(PTV)に大きなマージンが必要でした。OXRAYのIGRT機能+追尾照射を組み合わせることで、このマージンを縮小しつつ線量集中を高める「両立」が期待されています。
ガイアの夜明けで「10分で治療が終わる」って言ってたけど、普通はどれくらいかかるの?
呼吸管理下照射(例えばABCやRPM使用の息止め照射)だと、位置合わせ〜照射完了まで30分以上かかることも珍しくないんです。OXRAYは京都大学の報告で「位置合わせから照射完了まで約10分」と示されました。患者さんの負担は大きく変わります。

▲ OXRAYが導入された最新の治療室:患者に圧迫感を与えないO-リング構造と落ち着いた室内デザイン
日立ハイテクが第二世代Oリング型リニアック「OXRAY」として国内販売を開始。
国内初期導入施設として臨床実績を積み始める。後にガイアの夜明けで紹介。
日立ハイテクとの共同開発により、呼吸に伴う腫瘍の未来位置を予測するモデルを構築。動体追尾+IMRT/VMATを組み合わせた「動体追尾強度変調回転放射線治療」を世界で初めて臨床実施。位置合わせから照射完了まで10分足らずで完了。
世界2施設目の動体追尾IMRT/VMATを実施。Dynamic Swing Arc(DSA)との組み合わせは世界初。
肺がん・肝がん・膵がんに対する動体追尾IMRT/VMATおよびDynamic Swing Arcの多施設実施可能性試験が計画・進行中。
主な対象:肺がん・肝がん・膵がんなど 呼吸性移動の大きい胸腹部腫瘍
治療法:体幹部定位放射線治療(SBRT/SRT)、強度変調放射線治療(IMRT/VMAT)
正常組織への線量低減が期待できることから、高線量・少分割の治療プロトコルを安全に適用しやすくなる可能性があります。
OXRAYの科学的根拠は、「①装置本体の性能評価」と「②前世代ジンバル型リニアック(Vero4DRT)からの蓄積」の2本立てで整理できます。
Medical Physics (2025) — DOI: 10.1002/acm2.70329 ↗
位置づけ:OXRAYを「第二世代Oリング型リニアック」として位置づけ、線量特性・動体追尾精度・画像誘導精度を総合評価した物理・工学系の中核検証論文。
主な結論:
- 線量計算と実測の差はESTRO / AAPM国際ガイドラインの許容範囲内
- VMATプランのガンマ解析(3%/2mm):GPR中央値 95%超(AAPM TG-218基準を満たす)
- BROAD-RT(2軸回転照射):複雑な軌道でも 0.4 mm以内 の精度
- 回転照射中の動体追尾精度:1 mm以内を維持
- 自動画像レジストレーションによる位置決め:0.5 mm・0.5°以内で再現可能
J Appl Clin Med Phys 17(5) (2016) — DOI: 10.1120/jacmp.v17i5.6376 ↗
Vero4DRTのジンバル機構を対象に動体追尾QA法を提案。光照射野(30×30 mm²、ガントリー90°)を用いた簡便なQA法で追尾精度を評価し有用と報告(PMID: 27685142)。追尾誤差は呼吸周期に依存するが、標準的な周期では臨床的に実用可能な精度を実証。OXRAYにも同原理のジンバルQAが引き継がれている。
Oncotarget 9(34):23628–23635 (2018) — DOI: 10.18632/oncotarget.25310 ↗
局所進行膵がん11例へのDTT-IMRT(Vero4DRT使用、中央線量48 Gy/15分割)を評価。2年全生存率48.0%、MST 23.6か月、重篤な晩期GI毒性1例のみ。リアルタイム動体監視+ジンバル追尾により良好な局所制御・低毒性で臨床的に実行可能と結論。OXRAYにおける膵がん追尾IMRTの直接的エビデンス基盤となっている。
記事で科学的根拠を示すなら、「OXRAYは国際ガイドラインの物理精度基準を満たし、回転中でも1 mm以内の追尾精度・0.5 mm以内の位置決め精度が性能評価論文(Moriら 2025年)で確認されている」と書けます。ジンバル追尾の臨床有効性は、前世代機での膵がん・肺がん研究で「低毒性・実行可能」として実証済みです。
「精度が高い」という言葉は多くの装置で謳われますが、OXRAYの精度は論文に裏付けられた具体的な数値で示されています。以下は性能評価論文(Moriら、Med Phys 2025)および関連研究から得られた定量データです。
ビーム位置精度
(複雑な2軸回転軌道)
動体追尾精度
(ジンバル+Oリング)
画像誘導位置決め精度
(0.5°以内)
(3%/2mm gamma)
AAPM TG-218基準適合
平均中心位置誤差
(dual-panel kV)
追尾誤差範囲
(標準呼吸周期4-8秒)
えっ、0.4mmって…人間の髪の毛より細いですよね…?そんな精度で動きながら照射できるの、すごすぎます……
エミちゃんの驚きは正しいよ! 人の髪の毛が約0.06〜0.1mmだから、0.4mmは太い髪の毛4本分くらい。それを回転しながらリアルタイムで維持するのが凄いポイントなの。しかも呼吸で動く腫瘍を追いながら、ね。
ちなみに呼吸周期が短い(2秒以下)と追尾誤差が増えることも論文で示されているよ。標準的な呼吸(4〜8秒周期)では1〜2mm以内に収まる。だから「呼吸が穏やかな患者ほど恩恵が大きい」という側面もある、実臨床ではそこも考慮が必要だね。
OXRAYに関する学術論文は2024〜2025年に集中して発表されています。主な論文を以下にまとめます。
| 論文タイトル / 著者・年 | 分類 | 主な結果・結論 |
|---|---|---|
| OXRAY性能評価 Performance evaluation of a second-generation O-ring-shaped IGRT system with gimbal-mounted linac Kawata et al. / Mori et al., J Appl Clin Med Phys (2025)
— DOI ↗ | 物理評価 | ビーム品質は臨床基準適合、線量配信誤差1%以内。BROAD-RT軌道で0.4 mm以内のビーム位置精度。動体追尾誤差1 mm以内(回転中)。CBCT位置決め0.5 mm・0.5°以内。GPR中央値95%超(AAPM TG-218適合)。 |
| BROAD-RT Determination of patient-specific trajectory for biaxially rotational dynamic-radiation therapy (BROAD-RT) Hirashima et al., Phys Imaging Radiat Oncol (2025)
— DOI ↗ | 軌道最適化 | Dijkstraアルゴリズムで膵臓がん10例の最適軌道を自動抽出。MCS_v(変調複雑度スコア):coplanar 0.3±0.0 vs BROAD-RT 0.4±0.1(p=5×10⁻⁴)。BROAD-RTで胃・十二指腸の中間線量を有意に低減。商業TPS(RayStation)での実装を実証。 |
| BROAD-RT Integration test of BROAD-RT for nasopharyngeal carcinoma: Efficacy and dosimetric analysis Hiraoka et al., Radiother Oncol (2025) — DOI ↗ | 鼻咽頭がん | 鼻咽頭がん対象の統合テスト全例合格。GPR(3%/2mm)平均>95%。配信時間中央値209秒(約3.5分)。BROAD-RTが従来VMATより脳幹・耳下腺・口腔Dmeanを有意に低減(p<0.05)。 |
| Dynamic Swing Arc Dosimetric Comparison of Noncoplanar VMAT with Dynamic Swing Arc for Head and Neck Cancer Hirotaki et al., Adv Radiat Oncol (2025) — DOI ↗ | 頭頸部がん | 初のDSA報告。PTVカバレッジを維持しつつ耳下腺Dmeanを低減(口腔も低減傾向)。患者寝台回転ゼロで非共面照射を実現。配信時間は増加(要検討)。DSAは頭頸部がん治療の線量分布改善に有望。 |
| 前立腺がん Dosimetric evaluation of BROAD-RT and swing-fixed non-coplanar VMAT in prostate cancer Tomizawa et al., J Radiat Res (2025) — Google Scholar ↗ | 前立腺がん | BROAD-RTが従来非共面VMATと比較して直腸・膀胱線量を有意に低減。2軸回転機能が前立腺がんの正常組織保護に有効。臨床実装の可能性を示す。 |
| Vero4DRT基礎研究 Dosimetric and robustness evaluation of BROAD-RT with robust optimization(頭頸部がん) Radiother Oncol (2025) — Google Scholar ↗ | ロバスト性評価 | 頭頸部がん10例でRobust-BROAD-RT vs Robust-VMAT比較。対側耳下腺Dmean:15.4±4.3 Gy vs 23.5±2.5 Gy(p<0.001)、口腔:3.03 Gy低減(p=0.002)。3mmセットアップ誤差下でも利益維持。CTV劣化なし。 |
OXRAYは革新的な装置ですが,高精度照射を実現するための「トレードオフ」として,導入・運用時に考慮すべき課題も存在します。医学物理士や技師,経営層が知っておくべきポイントを整理します。
フィールドサイズの限界:最大20×20
cmとなっており,広範囲のターゲット(一部の進行頭頸部がんや広範な転移症例)ではPTV全体を1門でカバーしきれないケースがあります。
空間的制約:Oリング型ガントリーの構造上,内径(ボア)に限りがあり,「両腕を頭上に挙げる」等の大きなポジショニングがリングと干渉し制限されるリスクがあります。
配信時間の延長:BROAD-RT(2軸回転)やDSAモードでの照射は,高品質な線量分布を実現する一方,標準的なVMATよりも1門あたりの照射時間が長くなる(例:200秒超)傾向があります。スループット向上のためには症例選定が鍵となります。
初期・保守コスト:国産リニアックの復活という意義は大きいものの,装置価格は数億円規模の投資が必要です。また,最新の技術を支えるための物理士・技師の高度なトレーニングコストや,RayStation等の周辺システムとの密な連携コストも考慮する必要があります。
OXRAYは「万能リニアック」ではなく,「動く標的」や「複雑な正常組織保護」に特化したスペシャリストな装置として捉えるのが正解です。特に,味覚を維持したい頭頸部がん患者や,息止めが困難な高齢の肝がん患者など,高いQOLが求められる症例において圧倒的な付加価値を発揮します。
📝 論文を読む際のポイント2024〜2025年のOXRAY関連論文は主に「計画・物理評価研究」が中心で、患者長期アウトカム(生存率・QOL)の報告はこれからです。京都大学での臨床実施を起点に、今後は多施設での前向き試験・臨床研究が蓄積されていく段階です。
「ガイアの夜明け」放送(2026年2月)後、OXRAYに関するXポストが急増した。医療従事者・研究者のみならず一般視聴者からも広く言及され、医療機器としては異例の社会的注目を集めた。代表的な投稿を以下に掲載する。
hitachi-hightech.com/jp/ja/…/oxray
反響の規模:日立ハイテク公式ポストは約88,000 impressions・638いいね・73リポストを記録(2026年1月7日時点)。「ガイアの夜明け」放送直後(2026年2月27日)は一般視聴者投稿が集中した。「国産装置の復活」「副作用軽減・短時間治療」を評価する声が多く、OXRAYへの社会的認知度の高さを示す。
OXRAYは、日立グループが長年培ってきた照射技術(加速管・MLC・ガントリー機構)と画像技術(X線イメージャ・CBCT)を統合した「次世代プラットフォーム」として位置づけられています。現在も多数の臨床・物理研究が進行中です。
OXRAYが示すのは、「装置側が患者の動きに適応する」という新しいパラダイムです。従来の「患者が装置に合わせる(息止め・体位固定)」から、「装置が患者に合わせる」へのシフトは、高齢者・呼吸機能低下患者への治療適応を広げるとともに、より多くの患者が高精度・短時間の治療を受けられる社会につながります。
「ガイアの夜明け」が伝えた通り、OXRAYは日本の放射線治療技術の最前線に立つ装置であり、私たち放射線技師にとっても、その技術・物理基盤を深く理解することが今後ますます重要になるでしょう。
参考情報・出典
- 日立ハイテク OXRAY製品ページ(hitachi-hightech.com)
- 日立ハイテク ニュースリリース「OXRAY初号機が成田記念病院で治療開始」(2024年7月9日)(hitachi-hightech.com)
- テレビ東京「ガイアの夜明け」特集記事(2026年2月)
- 京都大学医学部附属病院プレスリリース「世界初!OXRAY®による動体追尾強度変調回転放射線治療の臨床実施」(2025年4月2日)(kuhp.kyoto-u.ac.jp)
- 北野病院 ニュース「高精度放射線治療機器『OXRAY』による新たな放射線療法を世界で初めて実施」(2025年11月25日)(kitano-hp.or.jp)
- Kawata et al. / Mori et al., J Appl Clin Med Phys (2025) — DOI: 10.1002/acm2.70329 ↗
- Hirashima et al. – BROAD-RT軌道最適化 — DOI ↗
- Hiraoka et al. – 鼻咽頭がんBROAD-RT統合テスト — DOI ↗
- Hirotaki et al. – Dynamic Swing Arc・頭頸部がん — DOI ↗
- Tomizawa et al. – 前立腺がんBROAD-RT線量評価 (2025)
- Goto Y, Ashida R, Nakamura A et al., Oncotarget 9(34):23628–23635 (2018) — DOI: 10.18632/oncotarget.25310 ↗
- Miura H et al., J Appl Clin Med Phys 17(5) (2016) — DOI: 10.1120/jacmp.v17i5.6376 ↗
- X(Twitter)ポスト:@Hitachi_ht_jp, @kitano_koho 他(2025〜2026年)
※本記事は公開情報・論文・プレスリリースをもとに作成した解説記事です。臨床的判断は必ず専門医にご確認ください。
















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