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📚 分岐記事A | 治療系
放射線治療の治療技師が最初に読むべき
AAPM TGレポート 厳選5選
(TG-51からTG-100まで)

現場で「これだけは読んでおけ」と言われるTGレポートを5本厳選。何が書いてあって、なぜ重要で、どう使うか。実務視点で整理します。次に読むべき6本も収録。

📅 2026年3月 🕐 読了約30分 🎯 対象:放射線技師(治療)・医学物理士

この記事は「ICRP・AAPM・ICRU…放射線防護の組織と文献が多すぎてパニックになる人へ」からの分岐記事です。AAPMとTGレポートの全体像は親記事からご確認ください。

AAPM(米国医学物理士協会)のTask Groupレポートは100本以上ある。全部読もうとすると、何年あっても足りない。

でも実際に臨床で頻繁に参照されるのは、ある程度絞られている。「これだけは読んでおけ」と上の世代から言われ続けてきたTGレポートが存在する。

この記事では、放射線治療現場で実務上必須の5本を厳選した。「何が書いてあるか」「なぜ重要か」「実務での使い方のコツ」「無料で読める場所」まで整理する。

Lina

TGレポートって全部で何本あるんですか?「TG-51読め」「TG-142読め」って言われるんですが、どこから読めばいいか…。

Yun

発行済みだけで300本以上あるんだ。でも「まず読むべき5本」に絞ると明確で、まずはTG-51とTG-142さえ押さえれば、放射線治療の線量測定とQAの骨格が掴めるよ。

📋 厳選5本:概要一覧
  • TG-51:高エネルギー光子・電子線の基準線量測定プロトコル(臨床の線量校正の根拠)
  • TG-142:医療用リニアックのQA(装置管理の手順書)
  • TG-100:リスク分析手法(FMEA)を使った放射線治療QM(次世代のQA設計)
  • TG-218:IMRT検証QAの許容限度と手法(γ解析の基準を定めた)
  • TG-101:SBRT(定位体放射線治療)の実施ガイドライン
⚠️ ご利用上の注意

この記事の解説は各TGレポートの内容紹介を目的としており、各文献の要約・概要に基づいています。臨床での実施・判断・手順書への引用にあたっては、必ず原文(英語原典またはJSMP和訳)と照合・確認してください。許容限度の数値・手順の細部は刊行年・改訂版によって異なる場合があります。


① TG-51:基準線量測定の”聖典”

AAPM TG-51 | 最重要
高エネルギー光子・電子線の基準線量測定プロトコル
Med. Phys. 26(9):1847–70, 1999 | 改訂版 Med. Phys. 41(4):041501, 2014
線量測定 電離箱 基準校正 最重要 難易度:中〜高

電離箱(イオンチェンバー)を使って、リニアックの光子線・電子線の吸収線量を測定するための標準手順。水吸収線量を基準とする「TRS-398プロトコル(IAEA版)」と並ぶ、世界の2大標準プロトコルの一つ。校正定数の取り扱い、温度気圧補正、イオン再結合補正など、正確な線量校正に必要な計算が詰め込まれている。

これが「放射線治療の線量の根拠」。患者に当てる線量は、TG-51(またはTRS-398)に従って校正された機器で計測した値が基準になる。TG-51を理解していないと、自施設の校正値がどこから来ているのか説明できない。国際的な線量の整合性の根幹。

まず「Appendix(付録)」に収録されている測定用の手順シートから入るのがおすすめ。計算の流れを一通りトレースしてから本文に戻ると理解が深まる。2014年改訂版(Addendum)も合わせて確認。Sectionの流れ(1→5)を追ってから数式の細部に入ると理解が深まります。

  • kQファクター(ビーム品質補正係数)の概念と計算法
  • 基準条件(深さ・フィールドサイズ・SSD)の設定理由
  • 電離箱の選定基準(Farmer型 vs. 平行板型)
  • 不確かさの評価方法(Type A / Type B)
  • TG-51 Addendum(2014年)による更新点

AAPM会員はaapm.orgから無料ダウンロード可能。非会員はPubMed等で検索すると一部取得できる。

⚠️
TG-51を知らないと何が困るか 基準線量測定の根拠を説明できない → 施設認定審査・第三者評価で詰められる。また治療計画システムのコミッショニングで「なぜこの値を使うのか」が説明できない。
Lina

TG-51って数式だらけで読むのが辛いんですが…

Yun

最初はAppendixよりSectionの流れ(1→5)だけ追うのがコツ。「何を測って、何を補正して、最終的に何を出すか」の大枠を掴んでから、数式の細部に入ると理解が深まるよ。年1回の基準線量測定(アニュアルキャリブレーション)時に手順を確認しながら読むのが一番身になる。


② TG-142:リニアックQAの現代標準

AAPM TG-142
医療用リニアックの品質保証(QA)
Med. Phys. 36(9):4197–212, 2009
装置QA リニアック 許容限度 日常点検 難易度:初〜中級

医療用リニアックを安全に臨床使用するための品質保証(QA)手順と許容限度(tolerance/action levels)の完全マニュアル。日常点検・月次点検・年次点検それぞれの項目と基準値が一覧化されている。IMRT・SRS/SBRT対応の記述もあり、通常照射より厳しい基準値が定められている。

「この装置は今日患者さんに使って安全か?」という判断の根拠がここにある。日常QAの「OK/NG」の判断基準、月次・年次での詳細確認項目が網羅されており、施設独自のQAプロトコル作成の出発点になる。現場で「TG-142を参考に」というのはほぼ必ず出てくる。

最初はTable 1〜3(日常・月次・年次の許容限度一覧表)だけ把握すれば十分。個別機器の状況に応じて、関係するセクションに飛んで読む使い方が実務的。全文通読より「辞書的に使う」文献。

  • IMRT対応リニアック用の追加QA項目(Table V)
  • SRS/SBRTモード向けの厳格な許容誤差設定
  • 各QA項目の「Tolerance」と「Action level」の違いの理解

AAPM会員はaapm.orgから無料。日本語訳は日本医学物理学会(JSMP)より公開: TG-142 和訳 PDF(jsmp.org)

📊 TG-142 頻度別 QA 概要
頻度主なQA項目代表的な許容誤差
日次線量出力・X線/電子線ポジションの確認±3%
月次アイソセンター精度・MLCポジション確認1mm / 2mm
年次基準線量測定・PDD/プロファイル再測定±1〜2%
Lina

TG-142って許容限度の項目がすごく多いですよね。現場では実際どう使えばいいんですか?

Yun

全部一気に把握しようとしなくていいよ。まずTable 1〜3の許容限度一覧を手元に置いて、判定に迷ったとき辞書みたいに確認するのが現実的な使い方。次に読むTG-100を合わせると「なぜそのQA項目が必要なのか」という理由まで掘れるから、TG-142とセットで理解できると理想的だね。

読むべきポイント まずTable II〜VIの許容誤差表を把握する。自施設のQAプログラムと照らし合わせて「何が足りていないか」を確認するのが最も実践的な活用法です。

③ TG-100:リスク管理の思想を変えたレポート

AAPM TG-100
リスク分析手法(FMEA)を用いた放射線治療品質管理
Med. Phys. 43(7):4209, 2016
リスク管理 FMEA QM設計 次世代QA 難易度:中〜上級

FMEA(Failure Mode and Effects Analysis:故障モード影響解析)を放射線治療の品質管理(QM)に適用する方法論を提示。「何が失敗しうるか(Failure Mode)」「その影響は何か」「なぜ起きるか」を系統的に洗い出し、リスクの高いプロセスに重点的にQAリソースを配分する考え方。

TG-142が「何をいつ測るか」を規定したのに対し、TG-100は「なぜそのQAが必要か」を示した文献。「項目ごとに同じ頻度で測る」という従来のQAから、「リスクが高い工程に集中するプロセス駆動型QA」への転換点となった。新しいQMプログラム設計の理論的支柱。

FMEAの概念(Failure Mode・Severity・Occurrence・Detectability・Risk Priority Number)を先に抑えると読みやすい。まずSection 3(FMEAの概念)とFigure 1〜4だけ読んでください。Appendixのプロセスマップ例が実践的。付録のIMRT FMEAの実例が特に参考になります。

「エラーが起きてから対処」から「エラーを予防する」へ

❌ 従来のアプローチ
  • インシデントが起きてから対処
  • QAは「義務」として機械的に実施
  • リスクの優先順位付けが曖昧
✅ TG-100のアプローチ
  • プロセス全体のリスクを事前に特定
  • RPNスコアで優先順位を定量化
  • QAリソースを高リスク部分に集中

FMEAの3軸を理解する

O
Occurrence
発生頻度(1-10)
S
Severity
影響の深刻さ(1-10)
D
Detectability
検出困難度(1-10)

RPN(Risk Priority Number)= O × S × D でリスクを数値化し、高スコア順に対策を優先する。

👁 TG-100 のポイント

TG-100はTG-142より読み込みが必要だが、「QAの目的は何か」を根本から問い直す文献。「なぜこの項目を測るのか説明できるか?」という問いに答えるための視点を与えてくれる。管理職や施設のQMリーダーになる人には特に重要。全施設に即導入は難しいが、QM設計の思想として理解しておく価値が高い。

Lina

TG-100は読むのが難しそうで敬遠していました…

Yun

まずSection 3(FMEAの概念)とFigure 1〜4だけ読んでみて。「どのプロセスで何が壊れうるか」を絵で理解するのが最初のステップ。付録のIMRT FMEAの実例が特に参考になるよ。


④ TG-218:IMRT患者QAの新基準

AAPM TG-218
IMRT測定ベース検証QAの許容限度と手法
Med. Phys. 45(4):e53–e83, 2018
IMRT QA γ解析 許容限度 患者QA 難易度:中級

IMRTの患者固有QA(Patient-Specific QA)で使用する測定ベース検証の手法と、γ(ガンマ)解析の許容限度を定めた。3%/3mm, 2%/2mm といった許容基準、通過率の解釈(Universal/Developmental Action Level)が明示されている。各種測定システム(フィルム、2D/3Dアレイ、EPID等)への適用方法も記載。

IMRT QAの「合格・不合格」の判断基準を定義した文献。「γ解析で90%通過したから合格」という判断に根拠を与える。施設ごとにバラバラだったIMRT QAの基準を標準化するための文書であり、新たにIMRT QAシステムを導入する際の基準設定に直結する。

「Normal Tolerance Level」と「Action Level」の区別を最初に把握する。測定システムのcommissioning(立ち上げ)手順が詳しく書かれており、新規システム導入時には必ず参照する。γ解析ツールの設定値を見直すきっかけになる。

📊 TG-218の推奨ガンマ基準
基準Tolerance LimitAction Limit
3%/3mm(グローバル)≥95%≥90%
2%/2mm(ローカル)施設依存施設依存
⚠️
よくある誤解 「95%通過したからOK」は必ずしも正しくありません。TG-218はガンマ解析の限界も明示しており、合格率が高くても臨床的問題が見逃されうる「合格率のパラドックス」も議論しています。ガンマ解析だけでQAを完結させるべきでないと強調しています。
Lina

日本の施設は3%/3mm・95%を使っているところが多いですが、これはTG-218が根拠なんですか?

Yun

そのとおり。日本の施設多数が3%/3mm・95%の基準を採用しているのはTG-218がベースになっているよ。ただTG-218は「ガンマ解析の限界」も明示していて、ガンマ解析だけで患者QAを完結させるべきでないとも強調している。それを知らずに使うと危険だから、原文を一度読んでおいてほしいな。


⑤ TG-101:SBRTの実務バイブル

AAPM TG-101
定位体放射線治療(SBRT)のガイドライン
Med. Phys. 37(8):4078–101, 2010
SBRT SABR 定位照射 小照射野 難易度:中〜上級

SBRT(Stereotactic Body Radiation Therapy)の適応・計画・実施・QAの包括的ガイドライン。小照射野の線量測定の注意点、処方線量の記録・報告方法、動体管理、患者固定など、SBRT特有の要件が体系的に整理されている。TG-101後にSBRTが急速に普及した。

現在、肺・肝・脊椎・前立腺などへのSBRTは多くの施設で標準治療の一つになっている。TG-101はその実施基準として参照され続けている。特に「小照射野での線量測定の落とし穴」は、SBRT実施施設では必ず押さえておく必要がある。

SBRT担当ではない場合も、SBRTと通常照射の違いを理解するために重要。まず「Summary and Recommendations」セクションを読んで概要を掴み、自施設でSBRTを実施または計画している場合は計画・QAセクションを詳読する。Section 4〜5(QA/commissioning)を重点的に。

SBRTプログラムの主要実施ステップ

  • 1
    患者固定システムの選定と精度評価
    体幹固定具・真空マット等の再現性検証。呼吸管理(息止め・腹部圧迫・DIBH)の適応判断基準を提示。
  • 2
    画像誘導(IGRT)の要件
    CBCT・ExacTrac等を用いた位置照合の精度基準。骨マッチングvs.ソフトティッシュマッチングの使い分け。
  • 3
    小照射野線量測定の注意事項
    小照射野特有の体積平均化効果・検出器の選定基準(ダイオード・マイクロ電離箱)。
  • 4
    SBRTプログラム立ち上げ前の包括的QA
    エンド・トゥ・エンドテストの実施手順。コミッショニング段階での必須チェック項目リスト。
Lina

SBRT以外の施設でもTG-101は必要ですか?

Yun

必要だよ。SBRTを実施していなくても、小照射野の概念や高精度治療のQA思想は汎用的に使えます。また、いずれSBRTを導入する際の「設計図」としても価値があるし、SBRTと通常照射の違いを理解するためにも読む価値は十分あるよ。

⚠️ 注意点

TGレポートは発行当時の技術・機器を前提に書かれているため、新技術(例:MR-Linac、FLASH照射等)への適用については追加のガイダンスが必要。最新の補遺(Addendum)や後続文書も合わせて確認すること。TG-51については2014年の改訂版Addendumが重要。


5本の優先度と読む順番

レポートテーマ対象者読む優先度難易度
TG-51基準線量測定線量測定に関わる全員★★★ 最優先中〜高
TG-142装置QA装置管理担当者★★★ 最優先中(辞書的に使用)
TG-100リスク管理・QM設計QMリーダー・管理者★★ 重要高(概念的)
TG-218IMRT患者QAIMRT担当者★★ IMRT実施施設は必須
TG-101SBRT実施ガイドSBRT担当者★★ SBRT実施施設は必須

推奨する読む順番:TG-51 → TG-142 → TG-218(IMRT実施の場合)→ TG-101(SBRT実施の場合)→ TG-100。線量測定と装置QAの基礎を押さえてから、手法論的なTG-100に進むのが理解しやすい。


読み方・活用法のコツ

初学者の読む順番(ステップ式)

  • 1st
    TG-142(全体像を掴む)
    日常業務に最も直結。「自分の施設のQAがなぜこの頻度・許容誤差なのか」が分かる。
  • 2nd
    TG-51(線量測定の基礎固め)
    年次基準線量測定に参加するなら必読。最初はフローチャート(Appendix)だけでも可。
  • 3rd
    TG-218(患者QAの根拠を理解)
    IMRT患者QAに関わるなら早期に読む。ガンマ解析の「なぜ」が分かる。
  • 4th
    TG-101(SBRT業務に携わる場合)
    SBRTチームに入ったら最初に読む。Section 4〜5(QA/commissioning)を重点的に。
  • 5th
    TG-100(QMシステムを設計・見直すとき)
    施設のQMプログラムを構築・改善したいとき。FMEA概念の理解後に通読する。
💡
効率的な読み方のコツ TGレポートは「最初から最後まで読む」必要はありません。Abstract → Introduction → Recommendations(推奨事項のセクション)→ Tables/Figures の順で読むと、短時間でエッセンスを掴めます。

参照を記録する習慣をつける

自施設のSOPや手順書を書くとき、「TG-XXX Section Yに準拠」と出典を明記する習慣が重要です。根拠のある手順書は、施設認定・第三者評価・インシデント対応のすべてで強みになります。


次に読むべきTGレポート:現場で役立つ6本

📚 JSMP 和訳について:日本医学物理学会(JSMP)が主要TGレポートの和訳を公開しています。以下の解説中に「📄 JSMP和訳 PDF」リンクを示しているものは日本語で読めます。一覧は jsmp.org/guidline/ から確認してください。

TG-53(1998年)— 治療計画システムの QA

AAPM TG-53 | 治療計画 QA
放射線治療計画システムの品質保証
Med. Phys. 25(10):1773–1829, 1998 | 📄 JSMP 和訳 PDF
TPS QA コミッショニング 線量計算検証 JSMP 和訳あり

治療計画システム(TPS)の導入時コミッショニングから日常QAまで網羅した包括的ガイドライン。ビームデータのモデリング検証、アルゴリズムの精度確認、特殊照射(IMRT・電子線・非均質体補正)の検証手順が体系的に整理されている。

TG-53はTPSを「箱として受け入れる」のではなく、「どこまで信頼できるかを自分で検証する」姿勢を叩き込む文献だ。新しいTPSを導入する際、まず本書のフレームワークでコミッショニング計画を立てる。1998年刊行と古いが、思考の骨格は今でも通用する。コミッショニング責任者になる前に一度は通読しておきたい。

TG-106(2009年)— 加速器ビームデータ収集

AAPM TG-106 | コミッショニング
加速器ビームデータ収集の機器と手順
Med. Phys. 35(9):4186–4215, 2008 | 📄 JSMP 和訳 PDF
ビームコミッショニング 水ファントム PDD / TMR JSMP 和訳あり

新規リニアック導入・既存機のビームデータ再取得時に使う測定機器と手順を詳細に規定。水ファントムのセットアップ、電離箱の選択、PDD・TPR・OAR・OCRの測定ポイント数・精度・検証方法まで網羅している。TPSへのビームデータ入力前に「どのデータをどの精度で取るか」の基準となる文書。

「ビームデータをどうやって取るか」は意外と誰も教えてくれない。TG-106が出る前は施設ごとのやり方でバラバラだった。新入りに「とりあえずこれを読め」と渡す文献の一つがこれだ。特に小照射野(SBRT用)の測定に関するセクションは、TG-101の実施を検討する施設では合わせて参照する価値がある。

TG-119(2009年)— IMRT コミッショニング

AAPM TG-119 | IMRT 導入検証
IMRT コミッショニング:多施設計画・線量比較
Med. Phys. 36(11):5359–5373, 2009
IMRT コミッショニング 多施設比較 受入検査

新規IMRTシステムを導入する際の受入検査・コミッショニングテストの標準ケースと合格基準を、複数施設のデータをもとに定めた文書。MUの直線性、MLCの精度、DMLC(ダイナミックMLC)デリバリーの検証、全施設共通のファントムプランを使った多施設比較の結果を含む。

TG-218が「患者ごとのQA基準」を定めたのに対し、TG-119は「システム全体が正しく動いているか」の検証文書だ。新しいIMRTデリバリーシステムを受け入れた時、TG-119のテストケースを実施することで「このシステムは多施設基準に照らして合格か」が判断できる。TG-218とセットで手元に置いておく必要がある。

TG-132(2017年)— 画像レジストレーション

AAPM TG-132 | 画像処理
放射線治療における画像レジストレーション・フュージョンの活用
Med. Phys. 44(7):e43–e76, 2017 | 📄 JSMP 和訳 PDF
画像レジストレーション DIR adaptive RT JSMP 和訳あり

剛体(rigid)・変形(deformable)の両画像レジストレーションの原理、臨床応用(治療計画・アダプティブRT・線量追跡)、検証・QA手順を体系化。DIRアルゴリズムの誤差特性、Contour propagationの信頼性評価、施設でのvalidation手法まで含む。

アダプティブRTが普及するにつれて、DIRの誤差を「知らずに使う」リスクが顕在化している。TG-132は「DIRを使う前に何をvalidateすべきか」を示した文書で、MR-LinacやTomoTherapyでの適応照射を本格運用する施設では避けて通れない。現時点でDIRのQAが確立できていない施設が多く、今後最も重要性が増す分野の一つだ。

TG-148(2010年)— ヘリカルトモセラピー専用 QA

AAPM TG-148 | トモセラピー
ヘリカルトモセラピーの品質保証
Med. Phys. 37(9):4817–4853, 2010 | 📄 JSMP 和訳 PDF
TomoTherapy ヘリカル照射 バイナリ MLC JSMP 和訳あり

ヘリカルトモセラピー専用のQA手順と許容限度。日常・週次・月次・年次の項目と基準値が、バイナリMLC・ガントリー回転・コリメータジョー・MVCT等のトモセラピー固有の構造に即して記載されている。線量測定方法(ファームチャンバーの使い方等)も含む。

トモセラピーはリニアックと構造が根本的に異なるため、TG-142をそのまま適用できない。バイナリMLCの開閉タイミング誤差の影響、ガントリーの回転速度精度、ピッチ設定の問題など、固有のQA項目がある。保有施設であれば必読。TG-148の許容限度をベースに施設の手順書を作るのが現実的なアプローチだ。

TG-263(2018年)— 命名規則の標準化

AAPM TG-263 | 命名規則
放射線腫瘍学における構造命名規則の標準化
Int J Radiat Oncol Biol Phys. 100(4):1057–1066, 2018
命名規則 構造名標準化 施設間連携 AI 対応

放射線治療計画における標的体積・リスク臓器の名称を部位別に標準化した規約。「LUNG_L」「PTV_60」「SpinalCord」のような命名ルールを統一することで、施設間のデータ共有・レジストリ登録・AI学習データの整合性を担保する。部位別命名リストと推奨・非推奨の例が一覧化されている。

一見地味だが、施設を跨いだデータ活用(多施設臨床試験・AI学習データ)が増える現代では非常に重要だ。自施設のTPSテンプレートをTG-263準拠に整備しておくだけで、将来のシステム移行やデータ移植の手間が大幅に減る。AI自動輪郭描出が普及するにつれて、入出力の命名規則が統一されていないと処理が正しく動かないケースが出てくる。今すぐでなくとも、QM整備の優先事項に入れておく価値がある。

IAEA TRS-398(2000年) はTG-51と並ぶ外部放射線治療の基準線量測定プロトコル(IAEA版)。TG-51未導入施設またはIAEAプロトコル採用施設では必読。IAEA公式サイトから無料ダウンロード可能


まとめ:何から手をつけるか

✅ まとめ

放射線治療の治療技師・医学物理士にとって、AAPMのTGレポートは「実務の法典」に近い存在だ。全部読む必要はないが、TG-51とTG-142は「なぜそうするのか」の根拠として必ず知っておく必要がある。

まずTG-51・TG-142から読み始め、担当業務に応じてTG-218・TG-101・TG-53・TG-106へと広げていこう。日本語で読めるJSMP和訳を活用しながら、英語原文と対照して読み進めるのが理解を深める近道だ。

🎯
今日のアクション TG-142のTable II(日次QA項目表)を開いて、自施設のQA記録票と照らし合わせる。違いがあれば、それがあなたの最初の「学びのタネ」になります。

参考文献

[ 1 ] Almond PR, et al. “AAPM’s TG-51 Protocol for Clinical Reference Dosimetry of High-Energy Photon and Electron Beams.” Med Phys. 1999;26(9):1847-70. DOI: 10.1118/1.598691

[ 2 ] McEwen M, et al. “Addendum to the AAPM’s TG-51 Protocol for Clinical Reference Dosimetry of High-Energy Photon Beams.” Med Phys. 2014;41(4):041501. DOI: 10.1118/1.4866223

[ 3 ] Klein EE, et al. “Task Group 142 Report: Quality Assurance of Medical Accelerators.” Med Phys. 2009;36(9):4197-212. DOI: 10.1118/1.3190392

[ 4 ] Huq MS, et al. “The Report of Task Group 100 of the AAPM: Application of Risk Analysis Methods to Radiation Therapy Quality Management.” Med Phys. 2016;43(7):4209. DOI: 10.1118/1.4947547

[ 5 ] Miften M, et al. “Tolerance Limits and Methodologies for IMRT Measurement-Based Verification QA: Recommendations of AAPM Task Group No. 218.” Med Phys. 2018;45(4):e53-e83. DOI: 10.1002/mp.12810

[ 6 ] Benedict SH, et al. “Stereotactic Body Radiation Therapy: The Report of AAPM Task Group 101.” Med Phys. 2010;37(8):4078-101. DOI: 10.1118/1.3438081

[ 7 ] IAEA. “Absorbed Dose Determination in External Beam Radiotherapy.” Technical Reports Series No. 398. 2000. iaea.org

[ 8 ] Fraass B, et al. “AAPM Radiation Therapy Committee Task Group 53: Quality assurance for clinical radiotherapy treatment planning.” Med Phys. 1998;25(10):1773-1829. DOI: 10.1118/1.598373

[ 9 ] Das IJ, et al. “Accelerator beam data commissioning equipment and procedures: Report of the TG-106.” Med Phys. 2008;35(9):4186-4215. DOI: 10.1118/1.2969070

[ 10 ] Ezzell GA, et al. “IMRT commissioning: Multiple institution planning and dosimetry comparisons, a report from AAPM Task Group 119.” Med Phys. 2009;36(11):5359-5373. DOI: 10.1118/1.3238104

[ 11 ] Brock KK, et al. “Use of image registration and fusion algorithms and techniques in radiotherapy: Report of the AAPM Task Group No. 132.” Med Phys. 2017;44(7):e43-e76. DOI: 10.1002/mp.12256

[ 12 ] Langen KM, et al. “QA for helical tomotherapy: Report of the AAPM Task Group 148.” Med Phys. 2010;37(9):4817-4853. DOI: 10.1118/1.3462971

[ 13 ] Mayo CS, et al. “AAPM Task Group 263: Standardizing Nomenclatures in Radiation Oncology.” Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2018;100(4):1057-1066. DOI: 10.1016/j.ijrobp.2017.12.013

[ 14 ] 日本医学物理学会(JSMP). “AAPMタスクグループレポート 和訳一覧.” jsmp.org/guidline/

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技師歴15年。副業歴5年。投資歴5年。 資格、転職・副業などのキャリア情報と、患者さん向け情報を発信しています。