治療技師が最初に読むAAPM TGレポート厳選5選|TG-51・142・218・101・100の要点と読む順番
-1280x720.jpg)
AAPM TASK GROUP REPORTS · 技術と精度
治療技師が最初に読むAAPM TGレポート厳選5選|TG-51・142・218・101・100の要点と読む順番
この記事の地図
TGレポートとは何か
AAPM(米国医学物理学会)は、課題ごとに作業部会(Task Group)を立てて報告書をまとめます。番号は作業部会の番号で、内容の新しさや重要度の順ではありません。
治療部門に来て2年目のLINAの疑問に、ラッコ先輩が対話形式で答えていきます。
報告書は年々増えている
AAPMの報告書一覧を年代ごとに数えると、2010年代が最も多く、2020年代も前半だけで57件に達しています。新しい装置や技術が出るたびに作業部会が立つので、「昔読んだ版が最新」とは限りません。TG-51やTG-142のように、後から補遺や実装ガイドが追加された報告もあります。
aapm.org の報告書一覧(Reports)に掲載された253件を、一覧の刊行年で数えた。治療以外(画像診断・核医学・教育・職業倫理など)も含む。2020年代は2020〜2025年の6年分。2026年10月10日確認。
日本の文書とどうつながるか
国内の施設は、線量の校正を日本医学物理学会の標準計測法で行い、部門のQAは日本放射線腫瘍学会(JASTRO)などの指針で組み立てます。TGレポートはそれらの「元になった考え方」や「数値の出どころ」として登場します。5本と国内の文書の対応は次のとおりです。
| TGレポート | 受け持つ範囲 | 国内で対応する文書 |
|---|---|---|
| TG-51 1999年・補遺2014年 | 水吸収線量の基準となる計測(出力校正) | 標準計測法12(2012年)・リニアック標準計測法24(2024年) |
| TG-142 2009年 | リニアックの毎日・毎月・毎年の点検と許容値 | JASTRO『外部放射線治療におけるQAシステムガイドライン2016年版』 |
| TG-218 2018年 | 患者ごとのIMRT検証の手法と許容値 | 『強度変調放射線治療における物理・技術的ガイドライン2026』(JSMP・JSRT・JASTRO) |
| TG-101 2010年 | 体幹部定位放射線治療(SBRT)の体制・装置・QA・記録 | JASTROの体幹部定位放射線治療ガイドラインなど |
| TG-100 2016年 | リスク分析にもとづく品質管理の設計 | 国内に対応する単独の指針はなく、各ガイドラインがTG-100の考え方を参照 |
国内の指針がTGレポートの基準を取り入れる関係は、TG-142とJASTRO 2016で特に分かりやすく現れています。2冊の読み分けはTG-142とJASTRO QAガイドラインの違いで詳しく比べました。主要な国内指針の原文PDFは部門ガイドライン書庫から開けます。
治療の流れとTGの対応図
5本は、治療の流れの別々の場所を守っています。どの工程で何を確かめる文書かを先に地図にしておくと、読む順番を自分の担当から決められます。
左が治療の工程、右がTGレポート(スマホでは行が工程・列がTGの表で、「主」と「関」で示す)。帯の太さは「主に受け持つ」を2、「関わる」を1とした目安で、文書の分量や重要度ではない。TG-100だけは特定の工程ではなく、全工程の品質管理の組み方を扱う。
TG-51:線量の物差しを決める計測法
Almond PR ほか、Med Phys 1999;26(9):1847-70。⁶⁰Coから50 MVの光子線と、4〜50 MeVの電子線の基準線量計測の手順です。2014年に光子線の補遺、2022年に実施の手引き、2024年に電子線の補遺が出ています。

あるよ。どちらも水吸収線量で校正した電離箱を使い、線質変換係数 kQ を掛けて線量を出すという同じ骨組みなんだ。海外の論文や装置メーカーの資料はTG-51の記号で書かれることが多いから、骨組みが同じだと分かっていれば読み替えられる。それに、2014年の補遺に載っている不確かさの内訳の表は、施設の測り方で結果がどれだけ変わるかを数字で示していて、計測法の国を問わず役に立つよ。
式の骨組み
TG-51の中心は2本の式です。線量計の読み値を補正して M を作り、⁶⁰Coで受けた校正定数と kQ を掛けると、基準条件での水吸収線量になります。旧来のTG-21で必要だった阻止能比や質量エネルギー吸収係数の大きな表を、利用者が引かなくて済むようにしたのが、原典が強調している簡略化です。
| 条件 | 光子線 | 電子線 |
|---|---|---|
| 線質の指標 | %dd(10)x | R50(I50 から換算) |
| 基準深 | 10 cm | 0.6R50 − 0.1 cm |
| 照射野 | 10×10 cm²(SSD法はファントム表面、SAD法は検出器の深さで定義) | 10×10 cm²以上(R50 が8.5 cmを超えるときは20×20 cm²以上) |
| 距離 | SSD法・SAD法のどちらでもよい | SSD 90〜110 cm |
| 原典の範囲 | ⁶⁰Co〜50 MV | 4〜50 MeV(2024年の補遺は4〜22 MeV) |
2014年の補遺:不確かさの内訳
McEwen M ほかの補遺(Med Phys 2014;41(4):041501)は、モンテカルロ計算による新しい kQ、基準級の電離箱(reference-class)の性能条件、不確かさの内訳を示しました。内訳の表は2つの状況を並べています。(i) すべての要素を評価し基準級の機器を使う場合と、(ii) 時間に追われて「いつもの値」を仮定し、機器の性能も確かめていない場合です。後者は最悪ではなく、現実にありうる状況として置かれています。
TG-51補遺(2014)の表IIの値。原典は「例示であり、実際の校正を代表するものではない」と注記している。合成値は各要素を無相関として合成した値で、(i) 0.9%・(ii) 2.1%。
差のほとんどは利用者に依存する部分から生まれます。校正機関が付ける ND,w の不確かさ(0.75%)はどちらの状況でも同じです。一方、照射履歴(プレ照射)の扱いは0.10%と1.0%、kQ の当てはめ方は0.10%と0.6%と、測り方で大きく変わります。原典は「臨床の物理担当者が合成不確かさに大きな影響を持つ」と結んでいます。日本のリニアック標準計測法24で合成不確かさがどう見積もられているかはリニアック標準計測法24の解説で確かめられます。
TG-51のその後
日本で標準計測法12が水吸収線量の校正定数に切り替わったのは2012年です。TG-51(1999年)やIAEA TRS-398と同じ流れに、国内の線量標準が整って追いついた形になります。電子線の計測とクロスキャリブレーションは第3部・電子線編が詳しく扱っています。
TG-142:リニアックの定期点検の表
Klein EE ほか、Med Phys 2009;36(9):4197-212。1994年のTG-40の点検表を更新し、非対称ジョー・MLC・ダイナミックウェッジ、さらにリニアックに載った画像装置の項目を加えた報告です。日本医学物理学会が和訳を公開しています。
本文は6つの表で組み立てられています。表Iが毎日、表IIが毎月、表IIIが毎年、表IVがウェッジ、表VがMLC、表VIが画像です。装置を「通常治療(非IMRT)」「IMRT」「SRS/SBRT」のどれに使うかで許容値が変わる点が、TG-40との大きな違いです。
TG-142和訳(日本医学物理学会)の表I・II・IIIから。毎日のレーザー位置、毎日のコリメータサイズ表示、毎月のレーザー位置(±表記)、毎年の放射線アイソセンタと機械的アイソセンタの一致(基準値からの変化)。SRS/SBRTの毎月のレーザーは「±1 mm未満」。
線量の項目は、頻度が下がるほど許容値が厳しくなります。毎日の出力の不変性は3%、毎月は2%、年1回のTG-51にもとづく出力校正は絶対線量で±1%です。毎日の点検は「大きな狂いがないか」を素早く見る、年1回は「物差しそのもの」を合わせる、と役割が違うからです。
許容値を超えたら何をするか:3段階
TG-142の許容値は「これを超えたら装置を直す」介入の目安です。そのうえで、行動を3段階に分けて考えることを勧めています。
後継の文書:TG-198とMPPG 8.b
TG-142は「何を、どの頻度で、どの許容値で」までを書き、測り方の手順はほとんど書いていません。そこを埋めたのが2021年のTG-198で、項目ごとの手順、所要時間と担当者の目安、記録様式の例を示し、TG-142が扱っていないVMATの試験も加えました。2023年の実務指針MPPG 8.bは、リニアックの点検項目を臨床での使い方とリスクに合わせて選ぶよう求め、「TG-100の考え方にならい、各施設が自分の診療のリスクを分析して必要な試験を決める」と書いています。
表の数値をJASTRO 2016とどう組み合わせて院内の手順書にするかは、TG-142とJASTRO QAガイドラインの違いで手順書の組み立て方まで扱いました。出力校正と患者ごとの検証を含む日々の流れは線量測定とQA/QCの実践ガイドが入口です。
TG-218:患者ごとのIMRT検証の基準
Miften M ほか、Med Phys 2018;45(4):e53-e83。施設ごとにばらばらだった患者ごとのIMRT検証(patient-specific QA)の手法と許容値をそろえるための報告です。

そこはよく混ざるところなんだ。TG-218が全施設共通の基準として示したのは3%/2mm、線量しきい値10%で、パス率95%以上が許容、90%未満が介入だよ。3%/3mmは、TG-218より前に広く使われていた基準なんだ。2009年のTG-119も多施設比較を3%/3mmで行っている。3%/3mmのまま運用している施設は、TG-218より甘い条件で判定していることになるね。

線量勾配が急なところでは、位置の許容幅の差がパス率にそのまま出るからね。もう一つ大事なのは、TG-218がγ解析のパス率だけで検証を終わらせないよう求めていることだよ。正規化のしかた、しきい値、空間分解能で同じ測定でもパス率は変わるし、パス率が高くても臨床的に大事なずれが隠れることがある。どこで落ちたのかを分布で見て、Gyの差や線量体積ヒストグラムも確かめるのが本来の使い方なんだ。
基準の一覧:TG-218と国内ガイドライン2026
日本医学物理学会・日本放射線技術学会・日本放射線腫瘍学会の『強度変調放射線治療における物理・技術的ガイドライン2026』(2026年6月26日改訂)は、γ解析の基準・正規化・しきい値をTG-218と同じにしました。点線量の線量差だけは、実務の観点から過度に厳しい基準は望ましくないとして、JASTRO 2011年版やESTROと同じ3%・5%を採用しています。
| 指標 | TG-218(2018) | IMRT物理技術ガイドライン2026 |
|---|---|---|
| γ解析の基準 | 3%/2mm・しきい値10% | 3%/2mm・しきい値10%(同じ) |
| パス率 許容レベル | 95%以上 | 95%以上 |
| パス率 介入レベル | 90%(下回る計画は臨床に使うべきでない) | 90%(反証材料がそろわない限り臨床に使わない) |
| 点線量(電離箱)の線量差 | 許容 2%・介入 3% | 許容 3%・介入 5% JASTRO 2011・ESTROと同じ |
| 線量差の正規化 | Gyで差をとってから最大線量などで割る | 同じ(%の線量差はGyの差を最大線量や処方線量で正規化) |
| より厳しい基準 | 施設の実績から統計的に決める方法を示す | 計画装置のコミッショニングで2%/2mm、セットアップマージンの小さい定位照射で3%/1mmも検討 |
ガイドライン2026は、検証の結果が許容レベルと介入レベルの間にあるときの手順も書いています。原因を調べて再検証し、それでも許容レベルを満たさなければ、品質管理の担当者と放射線腫瘍医が治療への影響を協議します。臨床で使うなら、その理由を検証結果やカルテに残します。このガイドラインは診療報酬で「関連学会の定めるガイドライン」に当たり、令和8年度改定でIMRTの施設基準が改められたことも改訂の理由に挙げられています。改定の内容は診療報酬改定2026 放射線部門ガイドを参照してください。
国内の施設は実際にどう判定しているか
日本医学物理学会QA/QC委員会は2021年2〜3月に、IMRT・VMAT・定位照射を行う施設へ患者ごとの検証の実態を尋ねました。回答は206施設、うちIMRTを実施していたのが148施設です。線量分布で評価している140施設の回答を並べると、TG-218の条件にそろっている施設と、そうでない施設が混在していることが分かります。
日本医学物理学会QA/QC委員会「IMRTにおける患者QA 実態調査アンケート」(2021年度版)のQ35・Q36・Q38のうち、線量分布で評価する施設の回答割合。濃い色がTG-218と同じ設定。パス率の行は選択肢「85%」「98%」が0%で、合計が100%にならないのは原資料のまま。
γの基準を3%/2mmにしていたのは55.0%、3%/3mmが23.6%、より厳しい2%/2mmが16.4%でした。しきい値10%は63.6%、パス率の基準95%は62.1%です。TG-218の公表から3年たった調査の時点で、どの項目もTG-218と同じ設定の施設は5〜6割にとどまっていました。2026年のガイドラインで基準が国内でも明文化されたので、施設の手順書を見直すきっかけになります。
同じ調査で「施設の基準を決めるときに参考にした文献」を複数回答で聞くと、TG-218は148施設中96施設が挙げ、国内のIMRT物理技術ガイドライン(124施設)に次ぐ位置でした。
TG-100を参考にした施設は22施設にとどまります。リスクから点検を組み立てる考え方は、患者ごとの検証の基準づくりにはまだ浸透していなかったことがうかがえます。γ解析の仕組みそのもの(線量差と距離の許容幅を合わせた指標)はγ解析の原理で確かめられます。
測らずに確かめる:TG-219
2021年のTG-219は、測定ではなく独立した計算でMUと線量を検証する方法の報告です。国内ガイドライン2026によると、TG-219は独立計算による点線量の検証の介入レベルを5%とし、線量分布の検証はTG-218に準じるよう推奨しています。測定による検証と組み合わせる場合も、計算プログラム自体のコミッショニングが前提になります。
TG-101:体幹部定位放射線治療の設計図
Benedict SH ほか、Med Phys 2010;37(8):4078-101。医学物理士・医師・技師を読み手に、SBRTの最良の実践をまとめた報告です。2012年と2023年に正誤表が出ています。
原典の要旨によると、TG-101は3つの柱でできています。臨床成績の文献レビュー、SBRTプログラムを立ち上げるための情報(プロトコール・装置・人員などの資源・QA手順)、そして処方・報告・記録の書き方をそろえるための提案です。少ない分割で大線量を当てるため、通常の分割照射なら許容できる小さなずれが、そのまま腫瘍の線量不足や正常組織の過線量になります。
小照射野の線量計測は別の報告で
SBRTで使う小さな照射野は、側方の荷電粒子平衡が崩れ、線源が部分的に隠れ、検出器の大きさが測定値に響きます。この問題は2021年のTG-155が扱い、報告の要旨は「小照射野の方法を理解していなかったことによる重大な事故」が起きたことに触れています。IAEAとAAPMの共同の実務規範であるTRS-483(2017年)とあわせて読むのが定番です。CT値と電子密度の関係など、計画装置側の精度の話はCT値と電子密度の関係で扱っています。
SBRTの考え方は体幹部以外にも広がっています。不整脈を標的にする心臓の定位照射の標的設計は心臓CTで不整脈を撃つ(STAR)で紹介しました。
TG-100:リスクから考える品質管理
Huq MS ほか、Med Phys 2016;43(7):4209。装置の性能を許容値と比べる従来型の指針だけでは、工程や手順で起きる誤りを防ぎきれない、という問題意識から書かれた報告です。
3つの道具
FMEAでは、O(発生頻度)・S(重大さ)・D(見逃しやすさ)を掛けた RPN(リスク優先数)で手順に順位を付けます。3つとも1〜10なので RPN は1〜1000の範囲です。原典は、各尺度が直線ではなく対数に近い刻みだと注意しています。たとえばOの5は発生頻度0.2%未満、9は5%未満です。
| 点 | O:発生頻度 | S:重大さ | D:見逃される確率 |
|---|---|---|---|
| 1 | 起こりそうにない(0.01%) | 影響なし | 0.01% |
| 4 | 0.1% | 軽い線量の誤差・最適でない計画 | 1.0% |
| 5 | 0.2%未満 | 限られた毒性か腫瘍の線量不足・線量や位置や体積の誤り | 2.0% |
| 7 | 1%未満 | 重い毒性か腫瘍の線量不足のおそれ | 10% |
| 9 | 5%未満 | 非常に重い毒性か腫瘍の線量不足のおそれ・大きく誤った線量や位置 | 20% |
| 10 | 避けられない(5%超) | 破局的 | 20%超 |
TG-100の表IIから主な段を抜粋。2・3・6・8の段は原典を参照。
IMRTの例:216個の故障モード
TG-100は、著者の一人の施設で行っていたIMRTの流れを例に、12の工程で216個の故障モードを洗い出しました。この解析は意図的なQAを何もしていない状態を前提にしています。TG-142のような点検がなくても、下流の業務の中で自然に気づける分だけを見逃しにくさ(D)に数えた、ということです。
TG-100の表IX。12工程の合計216個。棒に触れると工程内の手順の数も出る。多いのは治療計画(53)、輪郭入力(31)、照射の準備(30)で、装置を直接扱う工程より、人が判断し入力する工程に集まっている。
原典は、RPNの上位20〜25%に入る手順を工程図に印で示し、さらにRPNにかかわらず重大さSが8以上の手順にも印を付けることを勧めています。めったに起きず見つけやすい失敗でも、起きたときの害が大きければ対策が要るからです。
対策の効き目には順位がある
危ない手順が見つかったら、対策を選びます。TG-100は米国の医療安全の機関(ISMP)の提案に沿って、品質管理の道具を効き目の順に並べました。番号が小さいほど強い道具です。
「もっと注意する」「勉強会を開く」は表の最下段です。原典は教育の大切さを認めたうえで、最良の研修を受けても人は失敗するので、教育だけで全部の失敗を防ごうとするのは上位の道具より効きにくいと書いています。
原因を洗い出す:フィッシュボーン図
故障の木を描く前に、まず原因の候補を漏れなく並べます。この段階に向くのがフィッシュボーン図(特性要因図)です。TG-100もFMEAの手順3(失敗モードごとに原因を挙げる段階)で、フィッシュボーン図や親和図のような根本原因分析の道具が役立つと書いています。右の頭に結果を置き、背骨から分類の大骨を、大骨から個々の原因の小骨を生やします。ゲートはなく、論理ではなく分類で束ねるのが故障の木との違いです。
次の図は、後で故障の木として描くTG-100の図3と同じ場面「治療前画像によるCTV位置決めの失敗」の原因を、6本の大骨に並べ替えたものです。原因の中身はTG-100の図3のものだけを使い、大骨の分類は本記事で付けました。各原因の〔 〕は、その原因がつながる失敗モードの番号です。
スマホでは図を横にスクロールできます。失敗モードの番号は、(1) 検査の時期が使い方に合わない、(2) 患者への特別な指示の誤り(FDG-PET前の絶食など)、(3) 撮影時の体位の誤り、(4a) 違う部位を撮影、(4b) 正しい部位を違うプロトコルで撮影、(5) 画像が計画に間に合わない、(6) 画像の読み違い。原因はTG-100の図3、分類は本記事による。
並べ替えると、故障の木だけでは見えにくかった偏りが分かります。連絡の大骨だけが、6つの失敗モードすべてにつながっています。訓練と説明が3つ、手順と人員・体制が2つずつで、設備(ハードウェアの故障)と人の不注意は画像が間に合わない場面の1つだけです。装置の点検を増やすより、部門間・職種間の連絡の仕組みを整えるほうが多くの失敗モードに効く、という見当がこの段階で付きます。
故障の木を読む:ORは誤りを通し、ANDは止める
原因が出そろったら、伝わり方を調べます。FMEAが「手順ごとの失敗の一覧表」なら、故障の木(FTA)は「失敗がどこから流れ込んでくるか」の地図です。TG-100の木は左端に望まない結果を置き、右へ向かって「何がこれを直接起こすか」を問い続けます。部門や施設の手が届かない原因まで来たら、その枝は止めます。
枝のつなぎ目には2種類の門(ゲート)があります。ORは「どれか1つでも失敗すれば上へ伝わる」、ANDは「全部が同時に失敗したときだけ上へ伝わる」です。原典は「ANDの門は守りを与え、ORの門は誤りが広がる機会を開く」と書いています。誤りに確認(QC・QA)を組み合わせると、誤りと確認の失敗が同時に起きない限り伝わらないので、ORがANDに変わります。
ボタンで切り替えると、同じ計算の流れから確認を外したときの木に変わります。スマホでは図を横にスクロールできます。赤の「OR」と緑の「AND」は、その箱の右につながる原因の結び方です。
TG-100の図1を日本語にして描き直した。4つの入力のどれが誤っても計算は誤るのでORでつながる。各入力にQC(その工程の中の確認)、出力にQA(結果の確認)を並べると、すべてANDの門になる。確認を外すと、木はORだけになり、どの入力の誤りも素通りで患者に届く。
実際の木はもっと枝分かれします。次の図はTG-100の図3で、治療前のPETなどの画像を使ってCTVの位置を決める工程の一部です。6つの失敗モードがすべてORでつながり、さらにその右の原因も多くがORです。右端に並ぶ「連絡不足」「手順が標準化されていない」「訓練不足」が何度も現れることに気づくと、対策をどこに打てばよいかが見えてきます。
スマホでは図を横にスクロールして右端の原因まで見られます。TG-100の図3を日本語にして描き直した(番号は原典のまま)。この木にはQAの門がまだ入っていない。原典は、左の失敗モードと右端の原因のあいだに必ず品質管理の手立てを置き、さらに工程の最後に標的とリスク臓器の輪郭のピアレビューを置くよう述べている。
輪郭入力の工程について、TG-100はさらに踏み込んだ分析を載せています。「標準偏差の3倍を超える輪郭の誤り」という失敗モード(RPN 366)の木をたどると、見逃されたまま輪郭の誤りにつながる原因は156個ありました。そのうち133個は、訓練、連絡手段(書式やチェックリスト)、手順と方針の整備、設備や人員の手当て、十分なコミッショニングで少なくとも一部は手当てできます。残る23個は主に使う人の誤りで、工程の最後の輪郭のピアレビューで拾うしかありません。
RPNの計算例
数字の動きを見るための架空の例です。「計画装置へ取り込む画像の取り違え」を、O=4、S=8、D=7と採点したとします。RPNは4×8×7=224です。ここで、計画開始前に患者IDと撮影日を照合する手順を入れて見逃しにくさをD=3に、取り込み時に照合を求める画面を設けて発生をO=2に下げると、RPNは2×8×3=48になります。重大さSは対策では下がらないので、S≥8の手順は点数が下がっても監視を続けます。
本記事で作った説明用の例で、TG-100の採点値ではない。O・S・Dは施設の条件で変わり、原典も「グループの平均値を地域の条件を考えずに当てはめるべきではない」と注意している。
FMEAの採点は施設ごとに行うものです。TG-100でも、離れた場所にいる9人の委員がそれぞれ採点してから、全体で議論して平均をとっています。リスク分析は、2020年のTG-275(計画と治療記録の確認)でも、どの確認項目を優先するかの根拠として使われました。
次に読む10本
5本で骨組みを作ったら、担当する工程に合わせて広げます。日本医学物理学会が和訳を公開しているのは、TG-53・TG-106・TG-132・TG-142・TG-148の5本です(2026年10月10日確認)。
点に触れると正式名が出る。上段が厳選5本とその補遺、下段が次に読む10本と、近年の後継報告。年はAAPMの報告書一覧と各誌の刊行年による。
2024〜2025年にも、治療の計測とQAに関わる報告が続いています。MR画像誘導放射線治療の基準線量計測のプロトコル(TG-351、2025年)や、メーカーが提供するデータ・道具・試験手順を利用者がどう検証するか(TG-332、2025年)です。ブラックボックス化した装置をどう確かめるかは、国内でも基準ビームデータの導入ガイドラインのような指針で議論されています。最近の論文の動きは論文ピックアップ(QAと線量計測)で紹介しています。
担当別の読む順番
5本を全員が同じ順番で読む必要はありません。今の担当で毎日触れる文書から始めると、読んだ内容をすぐ現場で確かめられます。
「最初に読む」「早めに読む」「必要になったら」の3段階で、本記事の筆者が付けた目安。施設の体制や装置で変わる。
短い時間で読むコツ
- 要旨→推奨→表と図の順に読む:TGレポートは最初から通読する文書ではない。推奨(recommendations)の節と表を先に読み、根拠の本文は必要な所だけ戻る。
- 和訳と原文を並べる:和訳がある5本は日本語で全体をつかみ、数値と定義は英語の原文で確かめる。和訳は刊行当時の版なので、補遺や正誤表は原文側で追う。
- 自施設の記録と突き合わせる:表の数値を読んだら、施設の点検記録や検証記録の設定と比べる。違いがあれば、それが施設の判断なのか見落としなのかを確かめる。
- 出典を手順書に書く:手順書には「TG-142 表II」「TG-218 第○節」のように出典を書いておく。改訂のときに、どこを読み直せばよいかが分かる。
よくある誤解
現場や古い資料で見かける言い回しを、原典に当てて確かめました。旧版の本記事にも含まれていた誤りがあり、ここで改めています。
Q1 TG-218の基準は3%/3mmで95%?
TG-218が全施設共通の値として示したのは3%/2mm・しきい値10%で、パス率95%以上が許容レベル、90%が介入レベルです。3%/3mmはTG-119(2009年)の多施設比較などで使われていた、それ以前の基準です。
Q2 TG-142の毎日の点検はTable II?
TG-142の表は、表Iが毎日、表IIが毎月、表IIIが毎年です。表IVがウェッジ、表VがMLC、表VIが画像です。TG-142の要旨にある「Table II」はTG-40の表IIのことで、TG-142が更新の対象にした表を指しています。
Q3 パス率が95%を超えていれば安心?
パス率は正規化・しきい値・空間分解能で変わり、落ちた場所の臨床的な意味は評価しません。国内ガイドライン2026も、不合格の領域がPTVやリスク臓器と重なるときは放射線腫瘍医と影響を考察し、Gyの差やDVHも確かめるよう求めています。
Q4 TGレポートは何本ある?
AAPMの報告書一覧に載っているのは253件で、うち204件がTG(Task Group)の番号付きです(2026年10月10日確認)。報告書の番号は420番まで進んでいますが、欠番や一覧にない報告もあるため、番号と件数は一致しません。
Q5 TG-100を入れればTG-142の点検はやめてよい?
TG-100は点検の重点の置き方を考える方法で、装置の点検を不要にするものではありません。MPPG 8.bもTG-100の考え方にならって試験を選ぶよう求めつつ、最終的な責任は資格のある医学物理士にあるとしています。点検を減らすなら、その根拠となる分析と記録が必要です。
あわせて読みたい記事
NEXT 01 TG-142とJASTRO QAガイドラインの違い 毎日・毎月・毎年の点検表を、国内の部門QAの枠組みにどう組み込むか 解説を読む →
NEXT 02 線量測定とQA/QCの実践ガイド 出力校正・患者ごとの検証・定期点検を、日々の流れとして並べる 解説を読む → 本記事のまとめ
- AAPMの報告書は一覧に253件。治療の流れのどこを守る文書かで読み分ける。まずはTG-51・TG-142・TG-218・TG-101・TG-100の5本。
- TG-51は水吸収線量の物差し。補遺の不確かさの表では、測り方しだいで合成不確かさが0.9%から2.1%まで変わる。
- TG-142は表Iが毎日・表IIが毎月・表IIIが毎年。装置の用途で許容値が変わり、許容値の内側でも急な変化には動く。
- TG-218は3%/2mm・しきい値10%で95%と90%。国内のIMRT物理技術ガイドライン2026も同じ基準を採り、点線量だけ3%と5%にした。
- TG-101は正誤表を反映した版で使う。小照射野の計測はTG-155とTRS-483で補う。
- TG-100は工程図とFMEAで危ない手順を見つけ、効き目の強い対策から選ぶ。教育だけに頼る対策は最も弱い。
参考文献
- [1]Almond PR, et al. AAPM’s TG-51 protocol for clinical reference dosimetry of high-energy photon and electron beams. Med Phys. 1999;26(9):1847-70.
- [2]McEwen M, et al. Addendum to the AAPM’s TG-51 protocol for clinical reference dosimetry of high-energy photon beams. Med Phys. 2014;41(4):041501.
- [3]AAPM WGTG51 Report 374: Guidance for TG-51 reference dosimetry (2022).
- [4]AAPM WGTG51 Report 385: Addendum to the AAPM’s TG-51 protocol for clinical reference dosimetry of high-energy electron beams (2024).
- [5]Klein EE, et al. Task Group 142 report: Quality assurance of medical accelerators. Med Phys. 2009;36(9):4197-212.
- [6]日本医学物理学会『米国医学物理学会 タスクグループ142レポート:医療用加速器の品質保証 日本語訳』(PDF)
- [7]Hanley J, et al. AAPM Task Group 198 Report: An implementation guide for TG 142 quality assurance of medical accelerators. Med Phys. 2021;48(10):e830-e885.
- [8]Krauss RF, et al. AAPM Medical Physics Practice Guideline 8.b: Linear accelerator performance tests. J Appl Clin Med Phys. 2023;24(11):e14160.
- [9]Miften M, et al. Tolerance limits and methodologies for IMRT measurement-based verification QA: Recommendations of AAPM Task Group No. 218. Med Phys. 2018;45(4):e53-e83.
- [10]日本医学物理学会・日本放射線技術学会・日本放射線腫瘍学会『強度変調放射線治療における物理・技術的ガイドライン2026』(2026年6月26日改訂・PDF)
- [11]日本医学物理学会QA/QC委員会『IMRTにおける患者QA 実態調査アンケート』(2021年度版・PDF)
- [12]Zhu TC, et al. Report of AAPM Task Group 219 on independent calculation-based dose/MU verification for IMRT. Med Phys. 2021;48(10):e808-e829.
- [13]Benedict SH, et al. Stereotactic body radiation therapy: the report of AAPM Task Group 101. Med Phys. 2010;37(8):4078-101.(正誤表 2012;39(1):563・2023;50(6):3885)
- [14]Report of AAPM Task Group 155: Megavoltage photon beam dosimetry in small fields and non-equilibrium conditions (2021).
- [15]Huq MS, et al. The report of Task Group 100 of the AAPM: Application of risk analysis methods to radiation therapy quality management. Med Phys. 2016;43(7):4209.
- [16]Ford E, et al. Strategies for effective physics plan and chart review in radiation therapy: Report of AAPM Task Group 275. Med Phys. 2020;47(6):e236-e272.
- [17]Fraass B, et al. AAPM Radiation Therapy Committee Task Group 53: Quality assurance for clinical radiotherapy treatment planning. Med Phys. 1998;25(10):1773-829.
- [18]Das IJ, et al. Accelerator beam data commissioning equipment and procedures: report of the TG-106. Med Phys. 2008;35(9):4186-215.
- [19]Ezzell GA, et al. IMRT commissioning: multiple institution planning and dosimetry comparisons, a report from AAPM Task Group 119. Med Phys. 2009;36(11):5359-73.
- [20]Brock KK, et al. Use of image registration and fusion algorithms and techniques in radiotherapy: Report of the AAPM Task Group No. 132. Med Phys. 2017;44(7):e43-e76.
- [21]Langen KM, et al. QA for helical tomotherapy: report of the AAPM Task Group 148. Med Phys. 2010;37(9):4817-53.
- [22]Mayo CS, et al. American Association of Physicists in Medicine Task Group 263: Standardizing nomenclatures in radiation oncology. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2018;100(4):1057-1066.
- [23]AAPM. Reports(報告書一覧)
- [24]日本医学物理学会 ガイドライン(AAPM報告の和訳を含む一覧)
AAPMの報告書は各報告書ページ(aapm.org)から本文へ進めます。数値はTG-142がJSMP和訳の表I〜VI、TG-51補遺・TG-100・TG-263がPubMed Centralの全文、TG-218・TG-219が国内のIMRT物理技術ガイドライン2026の記述とPubMedの要旨、件数がAAPMの報告書一覧によります(いずれも2026年10月10日確認)。施設の許容値や計画基準をこの記事だけで決めず、手順書に引用するときは必ず原文の表と注記、正誤表で確かめてください。旧版(2026年3月)にあったTG-218の基準・TG-142の表番号・報告書の件数の誤りを、この版で改めました。




