【標準計測法12】補正係数と実測手順を完全攻略|kTP・ks・kpolの計算から DMU 算出まで【第2部・実践編】
STANDARD DOSIMETRY 12 · PART 2 · 技術と精度
標準計測法12 第2部・実践編|4つの補正係数と、読み値から cGy/MU まで

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水吸収線量の式 ─ 全体像
第1部で見たとおり、標準計測法12の校正定数 ND,w は⁶⁰Coガンマ線の基準条件で決まった値です。治療の光子線で使うには、読み値を基準条件に戻し、線質の違いを補正する必要があります。
初めて出力校正に立ち会うLINAの疑問に、ラッコ先輩が対話形式で答えていきます。
高エネルギー光子線の校正深の水吸収線量は、次の2本の式で求めます(標準計測法12の要点解説 式(13)(14))。
MQ = Mraw × kTP × kelec × kpol × ks
| 記号 | 意味 | どう決めるか |
|---|---|---|
| Dw,Q | 線質 Q の校正深での水吸収線量 [Gy] | 求めたい値 |
| Mraw | 電位計の表示値の平均 [nC など] | 同じ条件で3回以上読んで平均する |
| kTP | 温度気圧補正係数 | 水温と気圧を測って計算(02章) |
| kelec | 電位計校正定数 | 電離箱と電位計を分けて校正したときに証明書から。一体校正なら1 |
| kpol | 極性効果補正係数 | 正負の電圧で測って計算(04章) |
| ks | イオン再結合補正係数 | 2つの電圧で測って計算(03章) |
| ND,w | ⁶⁰Coでの水吸収線量校正定数 [Gy/C] | SSDLの校正証明書 |
| kQ,Q0 | 線質変換係数 | 電離箱の型番と線質指標で、標準計測法12の表から引く(05章) |
温度気圧補正係数 kTP
通気形の電離箱は、空洞の空気が外気とつながっています。温度が上がれば空気は膨らんで空洞の空気が減り、気圧が上がれば押し込まれて増えます。
式は気体の状態方程式から出ます。標準計測法12の基準条件は 22.0 ℃・101.33 kPa です。
T:測定時の水温 [℃] P:測定時の気圧 [kPa]
標準計測法12の式 (273.2+T)/295.2 × 101.33/P で計算。白が1.000(22 ℃・101.33 kPa 付近)、琥珀色ほど読み値を大きく戻し、緑ほど小さく戻す。スマホでは2 ℃おきに表示し、値は触れると出ます。
計算例:22.5 ℃・100.50 kPa
水温 22.5 ℃、気圧 100.50 kPa(1005.0 hPa)で測ったとします。
| 項 | 計算 | 値 |
|---|---|---|
| 温度の項 | (273.2 + 22.5) / (273.2 + 22.0) = 295.7 / 295.2 | 1.00169 |
| 気圧の項 | 101.33 / 100.50 | 1.00826 |
| kTP | 1.00169 × 1.00826 | 1.0100 約1.0%の補正。2 Gy なら約20 mGy |
温度より気圧の効きが大きい例です。標高が数百mある施設では気圧が低いぶん kTP が大きくなり、1.03〜1.05になることもあります。ここを1.000のまま計算すると、数%の誤りになります。
標高ごとの気圧は国際標準大気の近似式で計算した平均的な値(実際の気圧は天気で数 kPa 動く)。点は標高0・300・500・1000 m。高い所ほど空洞の空気が薄く、補正は大きくなる。
測り方の勘所
- 温度は水温で測る:空洞の中の温度は直接測れないので、熱平衡にある水温を使います。室温と水温に差があるときは、電離箱を水中に置いてから十分に待ち、読みが落ち着いたことを確かめてから測ります。熱平衡前の読みは系統誤差になります。
- 気圧は治療室の現地気圧:天気予報の気圧は海面の高さに換算した海面更正気圧です。施設の高さの現地気圧を、校正された気圧計で読みます。
- 水温は22 ℃±4 ℃:計測法24は、電離箱の応答の温度変化を避けるため水温をこの範囲に保つよう新たに書き込みました(表4.1)。
- 湿度:TRS-398は、校正定数が相対湿度50%を基準にしていて、相対湿度20〜80%で使うなら湿度の補正は要らないとしています。
温度気圧の記録を間違えたときに、線量がどれだけずれるかを並べます。読み違いの1目盛より、基準の取り違えや海面更正気圧の使用のほうがはるかに大きく効きます。
1 ℃は100/295、1 hPa は100/1013.3(計測法24 付録A.6の感度係数)。20 ℃基準の取り違えは295.2/293.2。海面の気圧(101.33 kPa)を入れた場合のずれは、標高ごとの気圧を国際標準大気の近似式で求めて計算した。
イオン再結合補正係数 ks
放射線がつくった正負のイオンの一部は、電極に届く前に再び結びついて消えます。消えた分は電荷として数えられません。

そう。だから ks は必ず1より大きくなって、消えた分を戻す向きに働く。リニアックはパルス状のビームで、パルスの瞬間にイオンが密集するから、⁶⁰Coのような連続ビームとは別の式を使うんだ。
2点電圧法で求める
いつもの電圧 V1 と、それより低い電圧 V2 で同じ照射を測り、読み値の比 M1/M2 から求めます。これを2点電圧法と呼びます。パルス放射線では次の二次式を使います(Weinhous と Meli の式)。
M1:いつもの電圧 V1 での読み値 M2:低い電圧 V2 での読み値
| 電圧比 V1/V2 | a0 | a1 | a2 | 感度係数 |
|---|---|---|---|---|
| 2.0 | 2.337 | −3.636 | 2.299 | 0.962 |
| 2.5 | 1.474 | −1.587 | 1.114 | 0.641 |
| 3.0 | 1.198 | −0.875 | 0.677 | 0.479 |
係数はパルス放射線用(TRS-398 表9)、感度係数は M1/M2 の読みの誤差が ks にどれだけ響くかの目安です(計測法24 表A.1)。たとえば V1/V2 = 2.0 で M1/M2 = 1.0048 なら、ks = 2.337 − 3.636 × 1.0048 + 2.299 × 1.0048² ≒ 1.0047 です。リニアックの通常の条件では、ks は1.001〜1.005程度に収まることが多い値です。
TRS-398 表9のパルス放射線の係数で計算。点は本文の例(V₁/V₂ = 2.0、M₁/M₂ = 1.0048)。V₁/V₂ = 2.5 の式は M₁/M₂ = 1(再結合なし)でも k_s が1.001になる。計測法24 付録A.7が指摘する近似式の誤差がこれ。
計測法24 表A.1。電圧比を2.0から3.0にすると、読み値の比の誤差が k_s に響く割合は半分になる。常用電圧の範囲でとれる最大の電圧比を選ぶ理由。
極性効果補正係数 kpol
印加電圧の極性を入れ替えると、読み値がわずかに変わることがあります。電離箱の構造やケーブルに生じる電流が原因で、空洞の電離とは別の信号です。
分母の Mraw は、ふだん使う極性での読み値です。
計測法24の付録A.8は、この式を整理すると、どちらの極性を基準にしても kpol は正負の電圧での指示値の比の関数になる、と示しています。光子線のファーマ形では1.000にごく近い値になることが多く、例えば |M+| = 31.36 nC、|M−| = 31.31 nC(M+ がふだんの極性)なら kpol = 62.67 / 62.72 ≒ 0.9992 です。
どの補正も、読み値は3回以上繰り返して平均を使います。ばらつきが大きいときは、セットアップ・ケーブル・電離箱の状態を見直してから測り直します。読みのばらつきは、不確かさの中で「モニタ設定値に対する表示値」の項になります。
線質変換係数 kQ,Q0
ND,w は⁶⁰Coで決まった値です。患者さんに使うのは 6 MV や 10 MV の光子線で、電離箱の応答は線質によって少しずつ違います。
光子線の線質指標は組織ファントム線量比 TPR20,10です。線源と検出器の距離を一定にして、深さ20 g/cm²と10 g/cm²の線量比をとります。決め方は標準計測法12 第3章「3.3 線質の決定」にあり、計測法24もそれを参照しています。kQ は計測法12の表3.3にあります。
縦横の縮尺はそろえていない模式図。TPR20,10 = D(20) ÷ D(10)。線源〜電離箱の距離(SCD)を100 cmに固定し、電離箱の面で照射野10 cm × 10 cm にして、深さ20 g/cm²と10 g/cm²で測った線量の比(IAEA TRS-398 の定義。標準計測法12の3.3節も同じ量を使う)。距離が同じなので逆二乗の影響を受けず、線量最大深の手前の混入電子の影響も受けない。
| 線質 | 線質指標 | kQ の大きさ(ファーマ形の目安) | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 光子線(6〜10 MV) | TPR20,10 | 0.99前後 計測法24の例では6 MVで0.993 | ⁶⁰Coに近く、補正量は小さい |
| 電子線 | R50(線量半価深) | 0.9台 | 阻止能比の違いが大きく、補正量が大きい |
電離箱の応答が線質でどれだけ変わるかは、リニアックで直接校正した値を見ると実感できます。計測法24が例として示した1本の電離箱の校正定数を、⁶⁰Coの値で割ってみます。
計測法24 表4.2の例示値(⁶⁰Co 48.38、6 MV 47.82、10 MV 47.39、15 MV 46.98 mGy/nC)から計算。原典自身が「参考値であり、実際の計測には用いてはならない」とする値で、1本の電離箱の例。この比が、その電離箱の kQ にあたる。標準計測法12では同じ量を計算で与えている。例示値どうしなので、標準計測法12の表の値とは直接比べないこと。
基準条件と、校正深10 cmの理由
光子線の校正深は 10 g/cm² です。計測法24は「基準条件は標準計測法12から大きな変更はない」としていて、表4.1に一覧があります。
| 項目 | 基準値・基準条件 |
|---|---|
| ファントム | 水。深さは水等価厚(g/cm²)で表す |
| 校正深 dc | 10 g/cm² |
| 照射野 | 10 cm × 10 cm |
| SSD または SCD | 100 cm 臨床で使っているセットアップに合わせる |
| 電離箱 | 円筒形。空洞の幾何学的中心を校正深に置く |
「SSD または SCD 100 cm」は、どこまでの距離を100 cmにそろえるかで2通りあります。SSD配置は線源から水面まで、SAD(SCD)配置は線源から電離箱、つまりアイソセンタまでを100 cmにします。照射野10 cm × 10 cm を決める面も違い、SSD配置では水面、SAD配置では校正深です(計測法24 表4.1の注)。どちらで測るかは、臨床で使っているセットアップに合わせます。
縦横の縮尺はそろえていない模式図。数値は基準条件の値(計測法24 表4.1、計測法12から大きな変更なし)。SSD配置では電離箱は線源から110 cm、SAD配置では水面が線源から90 cmになる。茶色の線が照射野10 cm × 10 cm を決める面。ビームは線源から広がるので、同じ10 cm × 10 cm でも、決める面がどこかで水中の照射野の大きさが変わる。
水ファントムの大きさにも決まりがあります。計測法24の3.2節は、水槽の横幅を最大照射野より各辺5 cm以上、深さを光子線では測定深より10 g/cm²以上深くとるよう求めています。水平ビームで測るときは入射窓をプラスチック(厚さ0.3〜0.5 cm を推奨)とし、その厚さを水等価厚(密度×厚さ。PMMAは1.19 g/cm³)に換算して深さに足します。垂直ビームでは、水が蒸発して水面が下がり、SSDが変わることにも注意します。
10 cmで測り、基準点の線量に直す
モニタ線量計を何cGy/MUに合わせるかは、施設が決めた基準点で考えます。基準点を線量最大深 dmax に置き、そこで 1 MU = 1 cGy に合わせる施設が多くあります。10 cm深の測定値を基準点の線量へ直すのに、SAD配置ならTMR、SSD配置ならPDDを使います。この手続きは標準計測法12 第3章「3.4.3 線量最大深と基準深の水吸収線量」にあります。TMRは分母(dmax)と分子(10 cm)を同じ線源距離で測った比なので逆二乗の補正を含みません。PDDはSSDを一定にして深さを変えるので、深さとともに線源からの距離も変わり、その逆二乗の効果を含みます。上の模式図のどちらの配置で測ったかで、使う関数が決まります。
これを照射したMUで割ると、基準点での1 MUあたりの線量(DMU, cGy/MU)が出ます。1.000 cGy/MU から外れていれば、モニタ線量計の感度を調整します。
実測からDMUまでと、シミュレーター
ここまでの内容を、出力校正の当日に踏む手順として並べ直します。
計算例:100 MUで校正深を測った場合
下のシミュレーターの初期値と同じ数字で、STEP 06〜08を通しで計算します。校正定数と kQ は計測法24が例として示した値(原典が「参考値であり、実際の計測には用いてはならない」とする値)で、読み値は計算を確かめるための仮の値です。
| 手順 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| kTP | (273.2 + 23.0) / 295.2 × 101.33 / 100.80 | 1.0087 |
| MQ | 16.35 nC × 1.0087 × kpol 1.0010 × ks 1.0020(kelec = 1) | 16.541 nC |
| Dw(10) | 16.541 nC × 48.38 mGy/nC × kQ 0.993 | 0.7947 Gy |
| Dw(dmax) | 0.7947 Gy ÷ TMR 0.790 | 1.0059 Gy |
| DMU | 100.59 cGy ÷ 100 MU | 1.006 cGy/MU 基準の1.000より0.6%高い |
上の表の計算例。k_TP(23.0 ℃・100.80 kPa)が+0.87%で最も大きく、k_Q(0.993)が−0.70%で逆向きに効く。k_elec = 1。最後の行は、こうして出た DMU 1.006 cGy/MU と基準の1.000の差。
シミュレーターの「生データから kpol・ks を計算する」を開くと、両極性の読み値や2つの電圧での読み値から係数を出せます。「夏の測定室」(28 ℃・99.50 kPa)を押すと kTP は約1.039。温度と気圧の記録を取り違えると、出力が4%近くずれて見えるということです。測定後に値がおかしいと感じたら、まず kTP の入力から疑うのが近道です。日々の出力の点検はTG-142とJASTRO QAガイドライン、測定の準備から患者QAまでの全体は線量測定とQA/QC 実践ガイドにまとめています。
一問一答
品質管理士試験や認定試験で問われやすい点を確認します。
Q1 標準計測法12の温度気圧補正の基準条件は?(20 ℃・101.325 kPa/22.0 ℃・101.33 kPa/0 ℃・101.33 kPa)
正解は22.0 ℃・101.33 kPa。温度が高いほど、気圧が低いほど kTP は大きくなります。
Q2 2点電圧法で電圧比 V1/V2 を大きくとると、ks の不確かさはどうなるか。上限は何で決まるか。
感度係数が小さくなり、不確かさは小さくなります(V1/V2 = 2.0 で0.962、3.0 で0.479)。ただし常用電圧を超えると電離箱や電位計を壊すおそれがあるので、取扱説明書の常用電圧の範囲でとれる最大の値にします。
Q3 6 MV の光子線と電子線で、kQ が1から大きく離れるのはどちらか。
正解は電子線。6 MV 光子線の kQ は0.99前後で⁶⁰Coに近く、電子線は阻止能比の違いから0.9台になります。
Q4 ⁶⁰Co校正のファーマ形で光子線を測るとき、不確かさの最大の要因は?(kTP/読み値のばらつき/kQ/ND,w)
正解はkQ(計算値)で相対標準不確かさ1.0%。標準機関側(ND,w を含むステップ1)の合成は0.52%でした(解説論文 表1)。
Q5 光子線の校正深と、電離箱を置く位置は?
校正深は10 g/cm²で、円筒形電離箱の空洞の幾何学的中心をそこに置きます。照射野は10 cm × 10 cm、SSDまたはSCDは100 cmが基準条件です。
Q6 電離箱と電位計を別々に校正に出した。MQ の計算で忘れやすい係数は?
正解は電位計校正定数 kelec。分離校正では電離箱の ND,w とは別に、電位計の kelec が与えられます。一体で校正したときは kelec = 1 として扱います。
第2部のまとめ
- 式:Dw,Q = MQ × ND,w × kQ,Q0。MQ は読み値に kTP・kelec・kpol・ks を掛けた値。
- kTP:基準は22.0 ℃・101.33 kPa。温度が分子、気圧が分母。1 ℃で約0.34%、1 hPaで約0.1%。
- ks:2点電圧法。電圧比は常用電圧の範囲でとれる最大の値に。
- kpol:1.000に近くても必ず測る。反転したら安定するまで待つ。
- kQ:型番と TPR20,10 で表から引く。光子線の不確かさの最大要因(1.0%)。
- DMU:10 cm深で測り、TMRやPDDで施設の基準点へ直してMUで割る。
シリーズと関連記事
参考文献
- [1]日本医学物理学会:外部放射線治療における水吸収線量の標準計測法(標準計測法12),通商産業研究社,2012年(第3章 高エネルギー光子線)
- [2]齋藤秀敏:〈要点解説:標準計測法12〉外部放射線治療のための水吸収線量標準計測法の概略.医学物理 33(4): 171–178, 2013(式(13)(14)、表1 光子線の不確かさ、図5 kQ の差)
- [3]日本医学物理学会:リニアック標準計測法24,2024年3月(3.1節、表4.1 基準条件、付録A.6 温度気圧補正/A.7 イオン再結合補正/A.8 極性効果補正)
- [4]IAEA:Absorbed Dose Determination in External Beam Radiotherapy(Technical Reports Series No. 398),2000(4.4.3.1 湿度、表9 2点電圧法の係数)
確認日:2026年10月9日。計算例の校正定数・kQ は計測法24が示した例示値で、読み値は仮の値です。臨床の測定は原典と自施設の校正証明書に従ってください。







