STANDARD DOSIMETRY 12 · PART 3 · 技術と精度

標準計測法12 第3部・電子線編|R50・平行平板形・相互校正と不確かさ評価

電子線は、測る深さも使う電離箱も光子線と違います。線質指標 R50 から校正深を決め、平行平板形電離箱で測り、必要なら相互校正で校正定数を移します。最後に、その測定がどれだけ確かかを不確かさで表します。標準計測法12の原典の例題と、執筆委員長の解説の表で数字を確かめる、シリーズ最終章です。

リニアック操作室でタブレットを手に線量計測の記録を確認するLINA
測った値には、必ず「どれだけ確かか」が付いてくる。
CALIBRATION DEPTH 0.6R50−0.1 電子線の校正深 dc(g/cm²)。原典の例題では9 MeV(R50 3.59)で2.05 g/cm²
CHAMBER R50 ≥ 4 この高エネルギー側に限り、例外的にファーマ形が認められる。基本は平行平板形
EXPANDED · k=2 3.4% 標準計測法12で、⁶⁰Co校正の平行平板形で電子線を測るときの拡張不確かさ(医学物理44(4)の比較)
CONTENTS

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01 · WHY ELECTRONS DIFFER

電子線は何が光子線と違うのか

第1部で水吸収線量校正定数 ND,w の意味を、第2部で光子線の補正係数とDMUの出し方を見てきました。最終章は電子線と、測定の確かさの表し方です。

TALK

電子線の出力校正を任されたLINAの疑問に、ラッコ先輩が対話形式で答えていきます。

LINA
LINA

ラッコ先輩、電子線も光子線と同じように測ればいいんですよね。読み値に補正を掛けて、ND,w と kQ を掛ける。式の形は同じですし。

ラッコ先輩
ラッコ先輩

式の骨格は同じだよ。でも電子線は「測る深さ」「使う電離箱」「kQ の引き方」の3つが違う。電子線は浅い所で線量がピークになって、その先で急に落ちる。この形に合わせて、深さも電離箱も選び直すんだ。後半では、その測定がどれだけ確かかを数字で表す不確かさまでやるよ。

01 測る深さ 光子線は10 g/cm²で固定。電子線は R50 から dc = 0.6R50 − 0.1 で、エネルギーごとに変わる
02 使う電離箱 平行平板形が推奨。ファーマ形は R50 ≥ 4 g/cm² の高エネルギー側で例外的に認められる
03 kQ の引き方 線質指標は R50。⁶⁰Coからの kQ のほか、媒介線質を使う kQ,Qint の表もある
02 · BEAM QUALITY & DEPTH

線質指標 R50 と校正深 dc

電子線の線質は、水中での到達深さで表します。深部量百分率が50%になる深さ、線量半価深 R50 です。

電離箱が直接測るのは電離量なので、まず電離量の深部曲線で半価の深さ I50 を読み、次の式で R50 に換算します。測定は SSD 一定、照射野は10 cm × 10 cm(高エネルギーでは20 cm × 20 cm)で行います。

I50 ≤ 10 g/cm² のとき:R50 = 1.029 I50 − 0.06
I50 > 10 g/cm² のとき:R50 = 1.059 I50 − 0.37
校正深:dc = 0.6 R50 − 0.1(単位はすべて g/cm²)

I50 と R50 の差は小さく、9 MeV 程度では0.04 g/cm²ほどです。ただしエネルギーが上がるほど開き、10 g/cm²を超えると式が切り替わります。

電離量半価深 I50 から線量半価深 R50 への換算で生じる差

R50 − I50 を、I50 ≤ 10 g/cm² では 1.029 I50 − 0.06、それより深いと 1.059 I50 − 0.37 で計算した。点は原典の例題1(I50 3.55)と例題2(I50 6.36)。

原典の例題で追う(9 MeV と 15 MeV)

標準計測法12の第4章には、実際の装置での例題が載っています。数字をそのまま並べます。

項目例題1:9 MeV例題2:15 MeV
電離箱平行平板形(IBA PPC40)ファーマ形(Exradin A12)
I503.55 g/cm²6.36 g/cm²
R503.59 g/cm² 1.029 × 3.55 − 0.066.48 g/cm² 1.029 × 6.36 − 0.06
dc2.05 g/cm² 0.6 × 3.59 − 0.13.79 g/cm² 0.6 × 6.48 − 0.1
dmax と dc の PDDdmax 2.10 cm、PDDc 100.0%dmax 3.38 cm、PDDc 99.4%
⁶⁰Coでの ND,w8.89×10⁻² Gy/nC4.749×10⁻² Gy/nC

どちらも医用原子力技術研究振興財団で⁶⁰Coの ND,w を受けた電離箱です。平行平板形の空洞はファーマ形より小さいので、同じ線量で集まる電荷が少なく、ND,w(Gy/nC)は大きくなります。原典は例題1について「およそ R50 < 4 g/cm² では dmax と dc は一致する」と添えています。

線質指標 R50 と校正深 dc

d_c = 0.6R50 − 0.1(g/cm²)。網かけは平行平板形しか使えない R50 < 4 g/cm² の範囲。点は原典の例題1(9 MeV)と例題2(15 MeV)。

LINA
LINA

校正深が線量最大深より深い所になるのは、光子線と同じ考え方ですか?

ラッコ先輩
ラッコ先輩

電子線の深部量百分率曲線は、ピークの先で急に落ちるよね。dc の式は、水と空気の阻止能比を R50 だけで精度よく決められる深さとして選ばれたものなんだ。低いエネルギーではほぼピークの位置、高いエネルギーではピークより少し深い位置になる。例題2の PDDc が99.4%なのは、そのためだよ。

03 · CHAMBER SELECTION

平行平板形と円筒形の使い分け

標準計測法12は、電子線の校正深の計測に平行平板形を推奨し、高エネルギー電子線(R50 ≥ 4 g/cm²、平均エネルギー Ē0 ≥ 10 MeV)に限って例外的にファーマ形を認めています(第4章 例題2)。

ラッコ先輩
ラッコ先輩

低いエネルギーの電子線は、浅い所で線量が急に変わる。ファーマ形は空洞が長さ2 cmあまりの円筒で、その空洞の中で線量が大きく変わってしまうから、測定の点がはっきりしない。空洞があることによる電子の流れの乱れ(擾乱)も大きくなるんだ。

LINA
LINA

薄い円盤の平行平板形なら、測定の点を空洞の前面にはっきり決められる。だから R50 が小さいほど平行平板形しか使えなくなるんですね。

項目円筒形(ファーマ形)平行平板形
R50 < 4 g/cm²使わない平行平板形だけ(固体ファントムを使えるのもこの範囲で、平行平板形との組み合わせのみ)
R50 ≥ 4 g/cm²例外的に認められる推奨
基準点(計測法12)幾何学的中心から線源側へ 0.5 rcyl(半径変位法)電離空洞内の前面
空洞体積の例約0.6 cm³Roos 0.35 cm³ / NACP-02 0.16 cm³ 電極間隔はどちらも2 mm(メーカー資料)
⁶⁰Coでの校正受けられる受けられる(解説論文の表3には5型式・計264本の実績)。ただし kQ の不確かさが大きい

校正深 dc に「電離箱のどこを」合わせるかは、電離箱の形と計測法で違います。電子線の基準条件は SSD 100 cm、照射野は水面で10 cm × 10 cm です。その水中の dc 付近を、原典の例題の数字で拡大して描きます。

校正深 dc への電離箱の置き方(dc 付近を拡大)

深さは原典の例題1(9 MeV、dc 2.05 g/cm²)と例題2(15 MeV、dc 3.79 g/cm²)。平行平板形は空洞の前面の中心を dc に置く。寸法は Roos 形の値(窓 PMMA 118 mg/cm²・電極間隔2 mm・集電極の直径16 mm・保護電極の幅4 mm、IAEA TRS-398 表4)で、保護電極の幅は空洞の厚さの1.5倍以上という計測法24の条件を満たす。ファーマ形は計測法12では幾何学的中心から線源側へ0.5 rcylの点(測定の実効点)を dc に置くので、中心は0.5 rcyl深くなる。rcyl は例題2の Exradin A12 の空洞半径3.1 mm(TRS-398 表3)。計測法24では電子線でも幾何学的中心を dc に置く。オレンジの点が基準点。

R50 で決まる、電離箱・ファントム・相互校正の範囲

標準計測法12の第4章(例題2・例題3)と、相互校正の線質を「R50 7 g/cm²以上」とする計測法24 6.2節・TRS-398による。右端の10.5 g/cm²は、計測法12が k_Q の範囲とした上限(付録3)。

試験のひっかけ:R50 = 4.0 ちょうど。線引きは「4未満は平行平板形だけ、4以上はファーマ形も可」です。R50 = 4.0 g/cm² ならファーマ形も使える側に入ります(推奨は平行平板形のまま)。国際規範のIAEA TRS-398も同じ線引きです。出題者は3.8や4.2のような値で、不等号の向きを問うてきます。
平行平板形の条件と、計測法24での変更。リニアック標準計測法24は電子線に使う平行平板形の条件を「電離空洞の厚さが2 mm以内で、保護電極の幅が空洞の厚さの1.5倍以上」と明記しました。円筒形は、計測法12の半径変位法をやめ、電子線でも幾何学的中心を校正深に合わせます。そのため計測法24では、円筒形の校正定数を証明書の R50 の範囲の外へ外挿して使えません。
04 · CROSS CALIBRATION

相互校正 ─ ファーマ形から平行平板形へ

施設の水ファントムの中で、校正を受けたリファレンス線量計と別の線量計(フィールド線量計)を同じ点に交互に置いて測り、校正定数を移す方法を相互校正と呼びます。

LINA
LINA

平行平板形も⁶⁰Coで校正を受けられるなら、相互校正はいらないのでは?

ラッコ先輩
ラッコ先輩

受けられる。でも⁶⁰Coから電子線への kQ は、平行平板形だと計算の不確かさが大きいんだ。原典の付録3では、平行平板形の kQ の標準不確かさが1.2%。一方、高エネルギー電子線で相互校正して、そこからの kQ,Qint を使うと0.6%に下がる。kQ が与えられていない型式の平行平板形も、この方法なら使えるよ。

ある線質 Q で両方の線量計を測れば、校正点の水吸収線量は同じはずです。この関係から、フィールド線量計の⁶⁰Coでの校正定数が求まります(解説論文 式(10))。

ND,w,Q0field = MQref × ND,w,Q0ref × kQ,Q0ref / (MQfield × kQ,Q0field)
ref:⁶⁰Coで校正を受けたリファレンス線量計(ファーマ形など) field:校正定数を移したい線量計 M:補正後の表示値
STEP 01 線質を選ぶ 施設で最も高いエネルギーの電子線を使う。R50 7 g/cm²以上が強く推奨される(計測法24 6.2、TRS-398)
STEP 02 交互に置いて測る 基準条件の校正深に、リファレンスとフィールドを交互に設置して読む
STEP 03 装置の揺らぎを消す 外部モニタ電離箱との比をとると、出力の変動と kTP が相殺される
STEP 04 繰り返して平均 複数回くり返し、その標準偏差を Type A の不確かさとして記録する

配置を描くと次のようになります。外部モニタ電離箱は動かさずに置いたまま、中央の位置にリファレンス線量計とフィールド線量計を交互に入れ替えて測ります。

相互校正の配置:中央の電離箱だけを入れ替え、外部モニタは動かさない

模式図(縮尺は目安)。深さ4.4 g/cm² は媒介線質 R50 7.5 g/cm²(計測法12 付録3)の dc = 0.6 × 7.5 − 0.1 で計算した例。医学物理44(4)の解説は、外部モニタにはファーマ形を使い、校正深付近に、校正する電離箱から2.5 cm以上離して置き、一連の測定中は絶対に動かさないとしている。モニタとの比をとるので、装置の出力の揺らぎと kTP が打ち消し合う。

なぜ高エネルギー電子線で移すのか。リファレンス線量計のファーマ形は、空洞の影響(Pcav)が小さい高エネルギー側でないと正確に測れません。低エネルギーの電子線ではファーマ形そのものが使えないので、校正定数を移す相手を置けません。「困る低エネルギー側のために、測れる高エネルギー側で移しておく」という順序です。計測法12の付録3は、媒介線質 Qint を R50 = 7.5 g/cm² として kQ,Qint を与えています。

頻度の決まりは一律ではなく、施設の品質管理計画で決めます。リファレンス線量計の校正を受け直したとき、フィールド線量計を新しく入れたときや修理・部品交換をしたときは、取り直すのが基本です。リニアックの電子線で平行平板形を校正するサービスもあり(東洋メディック。リニアックによるJCSS校正は2025年4月から)、その校正を受けた平行平板形は施設での相互校正が要りません(医学物理44(4)。計測法24の記事)。

05 · ABSORBED DOSE TO WATER

電子線の水吸収線量

式の骨格は光子線とまったく同じです。Dw,Q = MQ × ND,w × kQ,Q0。MQ は第2部と同じく、読み値に kTP(22.0 ℃・101.33 kPa 基準)・kelec・kpol・ks を掛けた値です。

違うのは「dc の深さで測る」「電離箱の種類と基準点」「kQ の表が電子線用で、線質指標が R50」の3点だけです。kQ は線質変換係数と呼ばれ、電離箱の型式と R50 の組み合わせで表から引きます。電子線では kQ が1から大きく離れるので、掛け忘れは大きな誤りになります。

kQ の表が使えるエネルギーの範囲。標準計測法12の付録3(4.5節)は、kQ と kQ,Qint の不確かさを抑えるため、電子線の範囲を4〜25 MeV(1 g/cm² ≤ R50 ≤ 10.5 g/cm²)に限ったと説明しています。実験とモンテカルロ計算のデータのほとんどが、実際の装置があるこの範囲で評価されているためです。範囲の外の電子線では、表の値をそのまま当てはめられません。平行平板形の全擾乱補正係数は、媒介線質を基準にすると4 MeVを除いてほぼ1.0±0.4%に収まり、計測法12は保護電極の幅が足りない一部の型式を除いて、これを1.0として扱っています。

計算の流れ(例題1の電離箱で)

原典の例題1の電離箱(ND,w = 8.89×10⁻² Gy/nC)を使い、読み値と kQ に仮の値を入れて計算の形だけ追います。kQ の実際の値は、原典の表で型式と R50 から引いてください。

手順計算結果
校正深0.6 × 3.59 − 0.12.05 g/cm² 原典の値
MQ読み値に kTP・kelec・kpol・ks を掛ける11.26 nC 仮の値
Dw,Q11.26 nC × 8.89×10⁻² Gy/nC × kQ 0.93(仮)0.931 Gy
基準点へ電子線は一般に線量最大深を基準にする。PDDc で割り戻す0.931 Gy PDDc 100.0%
ラッコ先輩
ラッコ先輩

計算の構造は光子線と同じだね。電子線で覚えるのは「dc の深さ」「電離箱の種類と基準点」「kQ の表」の差分だけ。この3つを答えられれば、試験でも現場でも迷わないよ。

LINA
LINA

丸暗記ではなく、光子線との差分で覚える。これなら測定の当日にも思い出せそうです。

06 · UNCERTAINTY TYPES

不確かさ評価 ─ Type A と Type B

標準計測法12も計測法24も、不確かさをGUM(測定における不確かさの表現のガイド)の考え方で見積もっています。

LINA
LINA

「誤差」と「不確かさ」は同じ意味ではないんですか?

ラッコ先輩
ラッコ先輩

誤差は「真の値との差」で、真の値が分からなければ求まらない。不確かさは「測定値がどの範囲にありそうか」のばらつきの大きさで、手元の情報から計算できる。臨床で真の値は分からないから、どれだけ確かかを数字で示す不確かさの枠組みが要るんだ。

分類Type AType B
評価の方法統計的な方法(くり返し測定)統計以外の方法(証明書・仕様・文献など)
例読み値をくり返したときの標準偏差校正証明書の値、温度計の器差、kQ の計算の不確かさ
求め方平均値の標準不確かさは s / √n「±a の範囲」なら矩形分布として a / √3 など
測定回数との関係回数を増やすと小さくなる回数では変わらない
試験のひっかけ:Type A = 偶然、Type B = 系統、ではない。分け方の基準は評価の方法で、不確かさの性質ではありません。系統的な要因でも、くり返し測定で評価すれば Type A です。
矩形分布で √3 で割る、とは。仕様に「±a の範囲」とだけあるとき、その範囲で値が一様に分布すると仮定します(矩形分布)。標準偏差は a / √3 です。計測法24の付録A.6では、電気式温度計の器差 ±0.5 ℃ を 0.5 / √3 = 0.29 ℃ とし、温度の感度0.34%/℃を掛けて温度補正の相対標準不確かさ0.1%を出しています。
同じ標準偏差をもつ正規分布と矩形分布

どちらも標準偏差 σ = 1 にそろえた。矩形分布は ±a の中で値が一様に出る分布で、a = √3 σ のとき標準偏差が σ になる。だから「±a」とだけ書かれた仕様は a / √3 で標準不確かさに直す。

07 · UNCERTAINTY BUDGET

不確かさの合成と、シミュレーター

要因ごとの標準不確かさを二乗和の平方根で合成し(合成標準不確かさ uc)、包含係数 k を掛けて拡張不確かさ U を出します。

uc = √(Σ ui²)  U = k × uc
k = 2 で信頼の水準約95%(k = 1 で約68%、k = 3 で約99.7%)。足し算ではなく二乗和で合成するのは、独立な要因が同じ向きに最大に振れることはまずないからです。
包含係数 k と、真の値が入っていると期待できる範囲

正規分布を仮定したときの割合。k = 1 で約68.3%、k = 2 で約95.4%、k = 3 で約99.7%。線量計測では k = 2(約95%)で拡張不確かさを書くのが標準。

原典の表で見る:⁶⁰Co校正のファーマ形・光子線

電子線の内訳を見る前に、要因の並び方がはっきり分かる光子線の表を見ます。標準計測法12の執筆委員長による解説論文の表1です。

要因相対標準不確かさ誰が決めるか
ステップ1:線量標準機関の合成0.52% 特定二次標準器の校正0.40・基準場0.18・施設の線量計の測定0.27標準機関
ユーザー線量計の長期安定性0.3%施設
基準条件の設定0.4%施設
モニタ設定値に対する表示値 Mraw0.6%施設
補正係数 ki0.4%施設
線質変換係数 kQ(計算値)1.0% 最大の要因計測法(計算)
Dw,Q の合成標準不確かさ1.5%
拡張不確かさ(k = 2)2.9%

表の値は丸めてあるので、表から手で計算すると √(0.52² + 0.3² + 0.4² + 0.6² + 0.4² + 1.0²) = √2.04 ≒ 1.43% になり、拡張不確かさは2.86%です。表の合成1.5%・拡張2.9%と小数点以下で少し食い違うのは丸めのためです。

合成への寄与の割合:どの要因の二乗が大きいか(光子線・表1)

解説論文の表1の値を二乗して割合にした。k_Q 1本で約半分を占める。施設が動かせるのは表示値・基準条件・補正係数・長期安定性の4項目。

電子線では何が変わるか

電子線の線質変換係数の不確かさ:要因ごとの内訳(原典 付録3 表A3.6)

相対標準不確かさ(%)。k_Q は⁶⁰Coに対する値、k_Q,Qint は媒介線質 Qint(R50 = 7.5 g/cm²)に対する値。平行平板形には中心電極が無いので P_cel の行は無い。平行平板形の k_Q は P_wall(0.8%)が大きく、合成1.2%と最も大きい。相互校正して k_Q,Qint を使うと0.6%まで下がる。

電子線でも、不確かさを支配するのは kQ です。平行平板形の⁶⁰Co校正から直接 kQ を使うと1.2%で、光子線より大きくなります。医学物理44巻4号の比較では、標準計測法12の電子線の拡張不確かさ(k = 2)は平行平板形で3.4%、ファーマ形で2.9%でした。リニアックの電子線で校正する計測法24では、内挿で2.0%、外挿で2.3%です。

SIMULATOR 不確かさ合成シミュレーター 要因ごとの値を変えて、二乗和・合成・拡張不確かさと、どの要因が効いているかを見る

「kQ の行を 0 にしたら」を押すと、合成は1.43%から約1.0%へ下がります。kQ 1本が全体の半分ほどを占めていることが分かります。「手技を詰めたら」は、施設が動かせる4項目をそれぞれ0.2%にした場合で、それでも kQ が残るかぎり拡張不確かさは2%台にとどまります。計測法24が治療の線質で直接校正する方式に移った理由が、この数字から見えてきます。

試験のひっかけ:支配的な要因。「光子線では校正証明書の ND,w が最大の要因」は誤りです。⁶⁰Co校正の標準計測法12では、光子線でも電子線でも最大の要因は kQ です。標準機関側(ステップ1)の合成は0.52%でした。
08 · CLINICAL QA

臨床のQAとのつながり

年に1度の出力校正で決めた値は、毎日・毎月の点検の物差しになります。

LINA
LINA

毎朝の出力確認の許容値と、ここで計算した不確かさは、どうつながるんですか?

ラッコ先輩
ラッコ先輩

解説論文の冒頭には、放射線治療では線量の変化で腫瘍の制御率も正常組織の障害も急に変わるから、投与線量の合成不確かさに5%あるいは3.5%という目標が置かれてきた、とある。AAPM Report 13は、それを実現するためにファントムでの線量計測に2.5%を求めた。計測法24はさらに、AAPM Report 85の「基準条件の水吸収線量計測を相対標準不確かさ1%以下に」という目標を引いているよ。出力校正の不確かさは、この大きな予算の一部なんだ。

LAYER 01 年1回の出力校正 水ファントムで計測法に沿って絶対線量を決める。AAPM TG-142では年次の校正の許容値±1%
LAYER 02 毎月の点検 校正の値からの変化を見る。TG-142のX線出力の不変性は2%
LAYER 03 毎日の点検 簡易な測定器で基準からの変化を見る。TG-142では3%
LAYER 04 患者ごとのQA 強度変調の計画を実測で確かめる。TG-218は3%/2 mmのガンマ解析で通過率95%以上を許容限度に推奨
点検の許容値と、出力校正の拡張不確かさ(k=2)を並べると

左3本は AAPM TG-142 の X線出力の許容値(毎日3%・毎月2%・年次の校正±1%)、右3本は水吸収線量計測の拡張不確かさ(解説論文・医学物理44(4)・計測法24 表4.3)。性格の違う数字なので大小を直接比べるものではなく、年次の校正の不確かさと日々の許容値が同じ桁にあることを見るための図。

毎日・毎月の点検は、校正の値そのものではなく「校正した日からの変化」を見る相対的な比較です。同じ装置・同じ配置で測るので、校正定数や kQ に由来する不確かさは比べる両方に共通に入り、差をとると消えます。拡張不確かさ2.9%の測定で決めた値を、3%の許容値で毎日見ても矛盾しないのはこのためです。点検表の組み方はTG-142とJASTRO QAガイドラインの違いに、出力校正から患者QAまでの全体は線量測定とQA/QC 実践ガイドとRT-QA MAPにまとめています。

09 · QUIZ & FAQ

腕試しとよくある質問

品質管理士・認定試験で問われやすい点です。選択肢を考えてから開いてください。

Q1 電子線の R50 が3.8 g/cm²だった。校正深の計測に使える電離箱は?(平行平板形だけ/ファーマ形だけ/どちらでもよい)
よくある誤解:4に近いのでファーマ形も使える

正解は平行平板形だけ。R50 < 4 g/cm² では平行平板形しか使えません。R50 = 4.0 以上ならファーマ形も例外的に使えます。

Q2 I50 = 3.55 g/cm²。R50 と校正深 dc は?

R50 = 1.029 × 3.55 − 0.06 = 3.59 g/cm²、dc = 0.6 × 3.59 − 0.1 = 2.05 g/cm²(原典の例題1)。

Q3 くり返し測定の標準偏差から評価した不確かさは、Type A と Type B のどちらか。
よくある誤解:系統的な要因なら Type B

正解はType A。分類の基準は評価の方法で、統計的に評価したものが Type A です。

Q4 合成標準不確かさが1.5%のとき、k = 2 の拡張不確かさは?(0.75%/1.5%/3.0%/4.5%)

正解は3.0%。U = k × uc = 2 × 1.5%。1.5%は k = 1、4.5%は k = 3 の値です。

Q5 電子線の相互校正は、低エネルギーと高エネルギーのどちらの電子線で行うか。理由は?

施設で最も高いエネルギーの電子線(R50 7 g/cm²以上が強く推奨)。リファレンスのファーマ形が空洞の影響を受けにくく、正確に測れるのが高エネルギー側だからです。

Q6 電子線でも kTP や ks は光子線と同じように使うのか。

考え方と式は同じで、値は測定のたびに求め直します。平行平板形は電圧をかけてから安定するまで時間がかかる型式があり、kpol は特に丁寧に測ります(計測法24 付録A.8)。求め方は第2部・実践編で扱いました。

Q7 固体ファントムで電子線の線量を測ってよいのはどんな場合か。

標準計測法12では R50 < 4 g/cm² の低エネルギー電子線に限り、しかも平行平板形との組み合わせだけが認められています。固体ファントムと円筒形の組み合わせは推奨されません。深さは面積質量(g/cm²)で表し、水との違いはスケーリング係数で補正します。

SUMMARY

第3部のまとめ

  • 線質指標は R50:I50 から R50 = 1.029 I50 − 0.06(I50 ≤ 10 g/cm²)で換算する。
  • 校正深 dc = 0.6 R50 − 0.1:エネルギーごとに測る深さが変わる。
  • 電離箱:平行平板形が推奨。R50 < 4 g/cm² は平行平板形だけ、4以上ならファーマ形も例外的に可。
  • 相互校正:施設で最も高いエネルギーの電子線で、ファーマ形の校正定数を平行平板形へ移す。kQ の不確かさが1.2%から0.6%へ下がる。
  • 不確かさ:Type A/B は評価の方法で分ける。uc = √(Σui²)、U = k × uc(k = 2 で約95%)。
  • 支配的な要因は kQ:光子線でも電子線でも。だから計測法24は治療の線質で直接校正する方式に移った。
SERIES

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