放射線取扱主任者・代理者の設定と届出|30日ルールと現場が回る体制

免状を取っただけでは主任者ではない
「辞令は出た。で、何を出す?」「長期休暇の代理、誰に頼む?」「前任が急に異動した」——現場が止まるのは、だいたいこの三場面です。
この記事は、主任者実務ガイドのTOPIC 02として、誰を・いつ・どの様式で・どこへ届けるかに全集中します。予防規程の書き方はTOPIC 01、日常の点検ルーティンはハブへ送ります。
いまの体制を5分で診断する
読み進める前に、紙でも共有フォルダでもよいので「誰が主任者か」が書いてあるものを手元に置いてください。辞令、組織図、様式第41の控え、予防規程の1号・2号——どれか一つあれば十分です。

ゆんさん、きのう主任者に選任されたみたいなんですけど…。辞令はもらったのに、届を出した記憶がなくて。このままで大丈夫ですか。

まず焦らなくていい。確認するのは三点だけ。誰が・いつから・届は出たか。下のリストをタップしながら、自施設の実態と突き合わせてみよう。
欠けが0〜1なら、この記事の後半(引き継ぎ・講習)を重点に。2〜3なら選任届と代理の章を先に。4以上なら、まず様式第41の提出状況と免状の突合から。日常の点検・測定の回し方は実務ガイドのタイムラインへ。
誰を主任者にできるか — 免状・施設・特例

選任の前に必ずやるのが、免状の種類と施設の種類の突合です。ここを取り違えると、届を出しても体制として不十分になります。試験でも頻出なので、主任者ドリル No.11とセットで押さえてください。
免状区分と選任できる施設
| 施設の種類 | 必要な免状 |
|---|---|
| 非密封線源/放射線発生装置/大規模密封線源 | 第1種 必須 |
| その他の許可対象の密封線源 | 第1種 または 第2種 |
| 密封の届出使用・販売・賃貸 | 第1種〜第3種のいずれか |
非密封線源・放射線発生装置(リニアック等)・大規模密封線源。ここを第2種・第3種だけで回そうとすると法令上の選任要件を満たしません。取得の全体像は資格ロードマップも参照。
第1種・第2種は国家試験+講習、第3種は試験なしで講習+講習内の試験です。受験資格に学歴・年齢の制限はありません。許可届出使用者は主任者を1名以上選任する義務があり、実務上は複数選任しておくと安心です。複数いる場合の職務の権限の書き方は、予防規程側の話なのでTOPIC 01(予防規程の書き方)で扱っています。
選任特例 — 医師・歯科医師・薬剤師
診療を目的とする場合は医師・歯科医師を、医薬品等の製造等を目的とする場合は薬剤師を、主任者免状なしで選任できる特例があります。医療機関ではこの特例で施設長・診療科長が名目上の主任者になっているケースもあります。
⚠️ 「選任特例は廃止された」は誤解です。 制度見直しの議論や報道を見て「もう使えない」と思い込む例がありますが、実務では現行法の条文を一次資料で確認してから判断してください。根拠はe-Gov の RI規制法です。特例で選任する場合でも、監督に必要な知識・体制が伴わないと現場リスクが高まります(事故要因として管理知識不足が指摘される文脈があります)。
| よくある取り違え | 正しい整理 |
|---|---|
| 第3種でリニアック施設の主任者になれる | 発生装置は第1種必須 |
| 免状を持っていれば自動的に主任者 | 選任+届出までがセット |
| 特例=管理しなくてよい | 特例は選任資格の緩和。監督義務は残る |
| 代理者は主任者と別人でなくてよい | 職務不能時の代行者。同等の有資格者を立てる |
複数選任と「名目主任」問題
法令上の最低人数は施設類型によりますが、許可届出使用者は1名以上の選任が基本です。実務では、休暇・学会・急病に備えて複数名を選任しておく運用が安心です。複数いる場合は「誰がどの範囲を見るか」を曖昧にしないこと——ただし権限の文章化は予防規程(1号)の領域なので、記載例や作法はTOPIC 01に任せ、予防規程ガイドの「責任者と手順」を一次資料にします。
医療機関では、選任特例で医師名が主任者欄に入り、技師が実務を回す構造も珍しくありません。違法と決めつける前に、監督に必要な指示系統が現場で通るかを確認してください。名目と実務が完全に乖離していると、検査では「体制の説明」が苦しくなります(詳細な検査視点は TOPIC 03 予定、立入検査ガイド)。
選任・解任の届出 — 30日を実務フローにする

根拠はRI規制法第34条です。許可届出使用者等は、放射線障害の防止について監督を行わせるため主任者を選任し、選任・解任したときは選任(解任)した日から30日以内に原子力規制委員会へ届け出ます。条文の起算点は「事由が起きた日」ではなく選任・解任という行為をした日です。主任者本人には職務を誠実に遂行する義務があり(第36条)、使用者側には主任者の意見を尊重し、指示が実行できる体制を整える義務があります。職務怠慢が続くと、解任命令等(第38条)の対象になり得ます——脅しではなく、責任の所在が法令に書いてあるという意味です。

30日って、いつから数えるんですか。辞令の日付? それとも届を書こうと思った日?

条文は「選任した日から三十日以内」。前任が辞めた日でも、届を書こうと思った日でもなく、施設として選任を決めた日が起点だよ。決定を先延ばしにすると、その分だけ提出期限も圧迫される。社内決裁が遅い施設ほど、「先に候補を固めてから日付を切る」運用が安全だよ。演習はドリル No.12。
様式第41 — 6ステップで出す
- 施設長(使用者)が候補を決定し、社内選任する法令上の選任権者は使用者側です。技師個人が勝手に「なります」では足りません。辞令・稟議・組織図の更新を同日に済ませると、あとの記録がきれいです。
- 免状区分と施設要件を突合する上の表で第1種必須かどうかを確認。迷いがあればNo.11と許可証の「使用の目的・条件」を見ます。
- 別記様式第41に記入する原子力規制委員会の公式Wordです。選任と解任で同じ様式を使います。氏名・生年月日・免状の種類と番号・選任(解任)年月日・事業所の名称・所在地などを、許可内容と一字一句ずれないように転記します。様式一覧は手続様式ページにあります。
- 添付・添付不要の確認案内・様式の注意書きに従います。免状の写しが必要な場合は、スキャンの解像度と氏名の一致を確認。電子申請ではアップロード形式の制限に注意してください。
- 提出する(オンライン or 郵送)
- 控えを保管し、体制側へ反映する
電話相談:03-5114-2155(平日 9:30–18:15)
記入でズレやすいポイント
様式第41で差し戻しや問い合わせになりやすいのは、だいたい次です。
- 事業所の名称・所在地が許可証と一字でも違う(表記ゆれ・旧住所)
- 選任年月日が社内辞令と食い違う(起算がぼやける)
- 免状の種類・交付番号の転記ミス
- 選任と解任のチェック欄・区分の取り違え
提出前に、許可証の写しを横に置いて読み合わせるだけでかなり防げます。名称変更が先に起きている場合は、主任者届の前に様式第10(氏名等の変更届)が必要かもしれません。オンライン提出の手順はオンライン手続案内と利用マニュアルが正本です。
第36条は、主任者に誠実遂行を求める一方、使用者に意見を尊重する義務と、指示が実行できる体制整備を求めています。選任届を出したあと、予算も権限もゼロのまま「あとはよろしく」では、法令が想定する監督が成立しません。手当や権限のねじれの現場感は実務ガイドの該当節も参照してください。
解任・交代のとき
解任も解任した日から30日以内に様式第41で届け出ます。後任を同日に選任するなら、解任と選任をセットで処理すると漏れが減ります。前任から渡すべきものの全体は後述の引き継ぎチェックへ。帳簿の「中身と保存年」は TOPIC 04 の範囲なので、ここでは場所と鍵が渡るかまでを確認します。
代理者 — 誰を・いつ立て・いつ届けるか

主任者が旅行・疾病その他の理由で職務を行えないとき、使用や廃棄を続けるなら代理者を選任します(第37条)。代理者は主任者と同等の有資格者であることが求められます。主任者を複数選任していても、代理の仕組みは別問題として用意しておく、というのが実務的な整理です。
TOPIC 01では「代理者を規程にどう書くか」と、「30日未満でも選任は必要」という落とし穴を扱いました。ここでは誰を・いつ選任し・いつ届けるかに落とします。
30日で分かれる届出
| 主任者の不在期間 | 選任 | NRAへの届出(様式第42) | 復帰時 |
|---|---|---|---|
| 30日未満 | 必要 | 不要 | 社内記録の整理で足りる場合が多い |
| 30日以上 | 必要 | 選任後30日以内に届出 | 解任届も必須(出し忘れ注意) |
⚠️ 「届出が要らない=何もしなくてよい」ではありません。 数日の学会出張や有給でも、その間に使用・廃棄を行うなら代理者の選任は必要です。ガイドも、30日に満たない場合は届出不要としつつ、代理者を選任しておく必要を示しています。規程への書き方はTOPIC 01 の代理者の項、演習はドリル No.16/No.21。
誰を立てるか
- 理想:自施設の要件を満たす免状を持つ同僚(第1種施設なら第1種)
- 小規模施設:候補が一人しかいないなら、事前に代理候補のリストと育成(講習・OJT)を計画する
- NG:口頭で「よろしく」だけ/免状が足りない人/代理中のサイン権限が誰にも分からない
選任・解任を誰が・どの手順で決めるかは予防規程(2号)に書く事項です。文例と作法はTOPIC 01、予防規程ガイドPDFの該当箇所を参照してください。
代理者を「先に名簿化」する
急な入院や事故対応で初めて代理を探すと、免状の有無確認だけで一日潰れます。おすすめは、年度初めに代理候補を2名までリスト化し、免状の写し・連絡先・代理可能な範囲(使用のみ/廃棄含む等)を1枚にまとめておくことです。リスト自体は社内文書でよく、30日未満の不在ではそのまま選任記録に流用できます。30日以上が見えた時点で様式第42の下書きを作り、RIMSのアカウント権限も同時に確認します。
代理中に「測定結果の最終確認」「教育訓練の実施判断」「異常時の判断」を誰が担うかを、開始前に一文で決めてください。ここが空欄だと、記録の署名者が検査で説明できなくなります(検査の深掘りは TOPIC 03、立入検査ガイド)。
よくある事故パターン
1. 届出不要誤解 — 短期だから何もしない → 不在中の使用が監督不在になる
2. 解任届忘れ — 育休・異動で代理のまま放置。30日以上で42を出した場合、復帰時の解任届が抜ける
3. 免状不足 — 「とりあえず年上」で代理を立て、施設要件を満たさない
4. 権限不明 — 代理中の測定記録・教育実施の最終確認者が誰か決まっていない
ミニケース
「30日」をカレンダーに落とすコツ
期限管理は、法令の知識より日付の置き方で失敗します。おすすめは次の3点です。
- 起算日を1つに決める — 辞令日・稟議決裁日・実態の着任日がずれる施設では、社内ルールで「選任日=辞令日」と固定する
- 提出期限の1週間前にリマインド — 30日以内は「29日目でも合法」だが、決裁・押印・郵送で消える日数を見込む
- 代理の復帰日に解任タスクを先置き — 様式第42を出した案件は、開始時に「解任予定日」を同じチケットに書く
電子申請ならRIMSの受付番号を、郵送なら追跡番号と業種朱書きの控え写真を残します。様式の再入手はいつでもNRA 手続様式一覧から可能です。迷ったときの条文確認はe-Gov の RI規制法、施設の1年の回し方の全体像は主任者実務ガイドに戻ってください。
定期講習 — 選任後に続く義務
届を出した日で主任者業務が終わるわけではありません。法第36条の2に基づく定期講習があります。使用者は、選任した主任者に講習を受けさせる義務を負います。
初回は、主任者に選任された日から1年以内(選任される前1年以内に受講済みなら除きます)。2回目以降は「受講日から3年」ではなく、前回受講した日が属する年度の翌年度の開始日から3年以内(届出販売業者・届出賃貸業者の主任者は5年以内)です。時間数の目安は、許可使用者の主任者で4時間以上、その他で3時間以上(講習制度の説明に基づく。申込時は登録機関の案内で確定)。
つまり年度が起点なので、たとえば2026年5月(2026年度)に受けたなら、次の期限は2027年4月1日から3年後の2030年3月31日まで。「受講日の3年後」で覚えると期限を早めに誤認します。
試験対策としては、主任者ドリル一覧から選任・代理系(No.11・12・16・21)を通しで解くと、条文の言い回しと実務の対応が早くなります。資格全体の位置づけは資格ロードマップへ。
実務のおすすめは、様式第41を提出したその週に、カレンダーへ「初回講習期限」を入れることです。講習の中身そのもの(カリキュラム詳細)はこの記事の範囲外で、施設の1年の回し方は実務ガイドのタイムラインを見てください。申込先は登録を受けた定期講習機関(例:公益社団法人日本診療放射線技師会などが実施)の案内に従います。
現場が回る体制 — 役割分担と引き継ぎ

法令を満たす人選ができても、翌日の現場が止まっては意味がありません。最低限、次の役割が誰の顔か言える状態にします。
| 役割 | 法令上の要点 | 現場での見え方 |
|---|---|---|
| 使用者(施設長) | 選任・意見尊重・体制整備 | 辞令・予算・最終判断 |
| 主任者 | 監督・指示・誠実遂行 | 点検計画・検査立会・意見具申 |
| 代理者 | 不在時の職務代行 | 期間と権限の事前合意 |
| 実務担当 | 規程で責任者を定義 | 測定・教育・記帳の手を動かす人 |
小規模施設では主任者が測定や施設維持の実務を兼ねることが現実的です。ガイド上も兼務は望ましくないとしつつ、実態に応じ適切なら認められる、という整理です。兼務している旨を規程上はっきりさせる書き方はTOPIC 01が主担当です。
引き継ぎで「渡さないと困る」デジタル資産
紙の台帳だけでなく、次も必ず渡してください。
- RIMS/GビズIDの担当・バックアップ担当
- 共有ドライブの権限(予防規程・測定報告・過去の届控え)
- 業者窓口(線量計・校正・廃棄物)の担当者名と契約番号
- 院内の他法令窓口(医療法・電離則・消防)との連絡先——病院は二重・三重規制になりやすい
管理状況報告(様式第55の1)や定期確認(様式第17)の直近提出物は、年度の「今どこまで終わっているか」を一発で伝える資料です。中身の記帳ルールや保存年は TOPIC 04 で整理予定です。
引き継ぎ当日チェックリスト
交代・代理の開始日に、次を一緒に確認してください。帳簿の保存年限の中身は今後の TOPIC 04、検査当日の受け答えは TOPIC 03 に送り、ここでは渡す/受け取ったに集中します。
ケース別ロードマップ

うち、来月から主任が育休に入るんです。代理って、いつから準備すればいいですか。

まず日数。30日をまたぐなら、様式第42の準備を先に。免状の突合と社内選任を、休業開始の2週間前には終わらせておくと余裕ができるよ。
検査で「人選と届」はどう見られるか
立入検査の本番対応・指摘の型は、シリーズの TOPIC 03 が主担当です。ここでは、選任・代理の記事として体制の証拠として問われやすいものだけ列挙します。
- 主任者・代理者の選任届の控え(様式第41・第42)がすぐ出せるか
- 組織図・予防規程の責任者と、現場で動いている人が一致しているか
- 代理期間中の記録の署名・確認者が説明できるか
- 定期講習の受講状況を、使用者が把握しているか
指摘の四類型(教育訓練・個人被ばく・施設の測定・自主点検)や、検査当日の動線は TOPIC 03「立入検査・監査で実際に見られるポイント」(準備中)で扱います。一次資料は立入検査ガイド(令和6年2月14日改正)です。届が出ていても、現場が回っていなければ「規程・体制と実態の乖離」として見られます。
今日やること
- 主任者・代理者の氏名と選任日を書き出す口頭ではなく、紙か共有メモに残す。
- 様式第41・第42の控えを探す
- 30日を超える不在予定をカレンダーで洗う育休・学会・研修の長期枠を洗い出す。
- 免状×施設表で突合するドリル No.11でセルフチェック。
- 初回/次回の定期講習期限を入れる選任から1年以内を起点に。
- 予防規程1号・2号を点検する書き方はTOPIC 01。
- 帳簿の保管場所を確認する保存年限の整理は TOPIC 04(準備中)。当面の全体像は実務ガイド。
- 主任者は免状保持ではなく、選任+様式第41(選任した日から30日以内)で機能する。
- 代理者は30日未満でも選任は必要。届出が要るのは30日以上(様式第42)。届けた代理は解任届もセット。
- 人選の前に免状×施設を突合。選任特例は現行法を一次資料で確認し、「廃止済み」誤解に注意。
- 提出はRIMS(GビズID)または郵送。控え保管のあと、組織図・規程・教育計画へ反映。
- 定期講習は選任から1年以内・以後3年(販売・賃貸は5年)。カレンダー登録が実務。
- 複数選任・兼務は現場では現実的。権限の線引きの書き方は TOPIC 01。
- 引き継ぎが本番。帳簿の中身は TOPIC 04、検査の受け答えは TOPIC 03 へ。
- 公式様式の親ページはNRA 手続様式。条文はe-Gov。
このシリーズの続き
主任者の書類業務を、テーマごとに分けて解説しています。ハブは主任者実務ガイドです。
📚 参考・一次資料
[1]放射性同位元素等の規制に関する法律(昭和32年法律第167号/e-Gov 法令検索) — 第34条(選任・届出)/第36条(義務・意見尊重)/第36条の2(定期講習)/第37条(代理者)/第38条(解任命令)
[2]放射性同位元素等の規制に関する法律施行規則(昭和35年総理府令第56号/e-Gov 法令検索) — 第30条(選任すべき人数・時期)/第31条(様式第41)/第32条(定期講習の期間)/第33条(代理者・30日未満は届出不要)
[3]「放射性同位元素等の規制に関する法律施行規則」手続様式(原子力規制委員会) — 様式第41・第42 ほか
[4]放射線障害予防規程に定めるべき事項に関するガイド(原子力規制委員会 令和4年3月16日改正)〔PDF〕















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