REIMBURSEMENT 2026 · RADIOTHERAPY MANAGEMENT · お金と制度

放射線治療の経営戦略2026|一連評価と寡分割の時代に、収支は症例構成で決まる

令和8年度の改定で、前立腺IMRTと全乳房照射が一連の定額になりました。「包括化で減収」と一括りにされがちですが、告示の点数で計算すると、前立腺は通常分割からの移行で減額、全乳房は大きく増額です。前回どの分割で治療していたかと症例の構成で、結果は逆になります。照射料とIGRTだけを取り出して試算し、施設と技師が取りうる3つの戦略を整理します。

PROSTATE −29,050点 前立腺IMRTの1症例あたり、照射料+IGRT。通常分割39回の前回(134,550点)から一連の105,500点へ[1][2]
WHOLE BREAST +19,150点 全乳房照射の1症例あたり。通常分割25回の前回(24,750点)から一連の43,900点へ[1][2]
FREED SLOTS 5,150枠/年 前立腺200人・全乳房150人の施設が通常分割から寡分割へ移った場合に空く治療枠(試算)
CONTENTS

この記事の地図

01 · FEE CHANGES

改定で変わった放射線治療の点数

令和8年度の診療報酬本体の改定率は、令和8・9年度の2年度平均で+3.09%です[4]。放射線治療の収支に効く変更を、告示と施設基準通知で確かめます。

項目令和8年度ポイント
前立腺癌の前立腺照射(IMRT)96,500点一連につき。分割の回数にかかわらない[1]
乳癌の全乳房照射41,500点一連につき[1]
IGRT加算一連で算定前立腺IMRTは腫瘍の位置情報で9,000点、全乳房照射は2,400点[1]
一回線量増加加算廃止前回は全乳房690点・前立腺IMRT1,400点(1回ごと)[1][2]
粒子線の小児放射線治療加算7,000点15歳未満。新設[1]
IMRTの施設基準常勤医1名特例拠点病院等で同じがん医療圏に他のIMRT施設がない場合、遠隔の支援施設と組めば常勤医1名で届出可[3]

寡分割(全乳房は1回2.5Gy以上、前立腺は1回3Gy以上)で行う場合は、別に施設基準の届出が要ります[3]。常勤医1名特例の詳しい要件と、地方と集約化の両面からの読み方はIMRT緩和と寡分割の一連評価で扱っています。

TALK

改定の影響を部門で試算することになったLINAに、ラッコ先輩が対話形式で考え方を伝えます。

LINA
LINA

一連の定額になったということは、どの施設も減収になるんでしょうか?

ラッコ先輩
ラッコ先輩

そうとは限らないよ。前立腺を通常分割で長く照射していた施設は減るけれど、全乳房照射は前回よりずっと高い点数になった。前回どの分割で治療していたか、症例がどんな構成かを当てはめないと、結論は出ないんだ。

02 · PER CASE

1症例あたりの照射料+IGRTを比べる

放射線治療管理料・外来放射線治療加算・固定具などは前後で共通なので除き、照射料とIGRT加算だけを告示の点数で比べます(1点10円)。

症例令和6年度・通常分割令和6年度・寡分割令和8年度(一連)
前立腺IMRT134,550点 (3,000+450)×39回97,000点 (3,000+1,400+450)×20回105,500点 96,500+IGRT 9,000
全乳房照射24,750点 (840+150)×25回26,880点 (840+690+150)×16回43,900点 41,500+IGRT 2,400

回数は例として置いた仮定です。令和6年度の全乳房照射は対向2門(840点/回)とIGRTの体表面の位置情報(150点/回)、前立腺IMRTはIGRTの腫瘍の位置情報(450点/回)で計算しています[2]。施設の照射法と回数に置き換えてください。

前立腺IMRTは、通常分割で治療していた施設から見ると1症例あたり29,050点(約29万円)の減額です。寡分割をしていた施設なら8,500点の増額です。全乳房照射は、通常分割からでも寡分割からでも大きく増えます。「一連評価=減収」とは言い切れず、症例の構成で結果が逆になるのが今回の改定の特徴です。

03 · ANNUAL IMPACT

年間で見る:前立腺200人・全乳房150人の例

寡分割からの移行 +4,253万円 前立腺+1,700万円/全乳房+2,553万円
通常分割からの移行 −2,938万円 前立腺−5,810万円/全乳房+2,873万円

1症例あたりの差に症例数を掛けた試算(照射料とIGRTのみ)。棒の長さは金額の絶対値です。

前回すでに寡分割をしていた施設は、照射料とIGRTだけで見れば増収です。通常分割が中心だった施設は前立腺の減額が効いて減収になりますが、寡分割に移れば、前立腺19回×200人と全乳房9回×150人で、年間5,150枠の治療枠が空きます。この枠を新しい患者の受け入れに回せるかが、減収を取り戻せるかの分かれ目です。

自施設で試算するときの3点。①疾患別の症例数、②前回の照射法と分割回数、③リニアックの実際に使える枠の数。この3つがあれば、上と同じ手順で計算できます。管理料などを含めた組み合わせは放射線治療 算定シミュレーターで試せます。
04 · THREE STRATEGIES

施設と技師がとれる3つの戦略

A 特例を使って攻める 近くの拠点病院や大学病院と遠隔支援の体制を組み、IMRTの届出をめざす。技師は治療計画と線量管理の力を伸ばし、寡分割のプロトコルを整えて回転を上げる
B 棲み分けて守る 緩和照射や骨転移の治療は自院で完結させ、高精度の治療だけを紹介する。院内と地域の連携で症例を確保し、丁寧な説明と確実な位置合わせで地域から選ばれる施設になる
C 声を上げて制度を動かす 「同じがん医療圏に他の施設がないこと」などの条件について、職能団体を通じて現場の実情を伝える。自施設の症例数や遠隔支援の実態をデータで残し、次の改定に生かす
前立腺IMRT 39回 → 20回 寡分割を採った場合の例(約49%減)
全乳房照射 25回 → 16回 寡分割を採った場合の例
空いた枠 新しい患者へ 回せるかどうかで収支が決まる

回数は施設のプロトコルによります。寡分割の適応は治療医の判断です。

LINA
LINA

嘆くより、制度を使いこなすほうが大事なんですね。まずうちの症例数と、前回の分割を表にしてみます。

ラッコ先輩
ラッコ先輩

それがいちばんの近道だね。数字が出れば、空いた枠をどう埋めるか、特例を使うかどうかを具体的に話し合えるよ。

SUMMARY

本記事のまとめ

  • 前立腺IMRTは96,500点、全乳房照射は41,500点の一連評価:IGRTも一連で9,000点・2,400点
  • 前立腺は通常分割からの移行で減額:1症例29,050点。寡分割からなら8,500点の増額
  • 全乳房は大きく増額:通常分割からでも19,150点増える
  • 空いた枠をどう使うか:寡分割で空いた治療枠を新しい患者に回せるかが収支を決める
REFERENCES

参考文献

  1. [1]厚生労働省:診療報酬の算定方法の一部を改正する告示 別表第一 医科診療報酬点数表(令和8年厚生労働省告示第69号)M001・M001-4
  2. [2]厚生労働省:令和6年度 医科診療報酬点数表(前回との比較に使用)
  3. [3]厚生労働省:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(令和8年3月5日 保医発0305第8号)第83の2・第83の3
  4. [4]厚生労働省:診療報酬改定について(令和7年12月24日 予算大臣折衝・改定率と内訳)

確認日:2026年11月6日。試算は照射料とIGRT加算だけを比べたもので、施設の収支全体を示すものではありません。

RadiTech FIRE · 治療計画も、人生計画も 放射線治療の経営戦略2026
ABOUT ME
ラッコ技師
「技師の働き方はもっと選べる」をモットーに、資格・転職・副業などのキャリア戦略と、患者さん向けの安心検査ガイドを発信しています。